オフシーズンに入り、NPBもアイランドリーグも各球団が新体制をつくり、来季に向けた陣容を整えています。

 我がガイナーズは来季も僕が指揮を執らせていただくことになりました。今季は寺田哲也(東京ヤクルト4位)、篠原慎平(巨人育成1位)と9年連続でNPBに選手を送り込めたものの、チーム初の最下位(後期)という屈辱も味わいました。

 先日のトライアウトを経てのドラフト会議では7選手を指名しました。どの選手もチームの主力となり、NPBを狙える可能性を秘めた素材です。1位指名の松本直晃(医療法人養和会)はフォームのバランスが良く、コントロール、球威ともレベルの高い右腕。24歳ながら将来性に期待が持てます。

 他にも体格の大きなキャッチャー、俊足の野手など、バリエーションに富んだ選手を指名できました。彼らが来季、どのくらい活躍できるのか、ファンの方も楽しみにしていてください。

 選手たちにとって独立リーグの利点は、他のアマチュアにはない豊富な実戦経験を積めることです。どんなに素晴らしい才能も試合に出なければ、伸びません。それはNPBの2軍でくすぶっている選手を見ても分かるでしょう。

 今回、在籍7年でNPB入りを果たした入野貴大(徳島、東北楽天5位)や篠原のように、このリーグで年数をかけて成長し、夢を叶える選手も出てきています。決して練習環境は恵まれていなくても、1試合1試合を大切に力をつけていけば、NPBは手の届く位置にくるはずです。

 もちろん夢を諦め、チームを離れる選手もたくさんいます。その中には野手では大原淳也、生田目翔悟、投手では酒井大介ら主力も含まれています。

 特に大原は元NPB選手として、チームにはありがたい存在でした。堅実なプレーぶりに加え、グラウンドを離れても良き兄貴分としてチームを牽引してくれました。彼の代わりを見つけるのは簡単ではありませんが、既存のメンバーと新戦力を組み合わせて勝てる集団をつくっていこうと考えています。

 さて、古巣の広島カープは、ご存知のように緒方孝市新監督が就任しました。今季はヘッド格だっただけに、この交代は既定路線でしょう。現役時代は広島一筋23年。引退後も1軍でずっとコーチを務めた生え抜きですから、チームの良いところも悪いところも全部知っているはずです。それを踏まえて、どんな采配を振るうのか、非常に期待が持てます。

 僕が現役だった頃は、まだ線が細かったものの、足の速さが印象に残る選手でした。当時、守備走塁コーチだった三村敏之さんの進言で内野手から外野にコンバートされたことで才能が花開いたのでしょう。

 江藤智、野村謙二郎、金本知憲、前田智徳らと黙々と遅くまで練習した叩き上げの男ですから、今の選手たちにも厳しく指導していくはずです。カープは2年連続クライマックスシリーズに進出し、地力はついてきました。若手を切磋琢磨させてチーム力を底上げできれば、さらに上位を望めるとみています。

 ファンの中にはブライアン・バリントンとキャム・ミコライオの退団を不安視する方もいるかもしれません。しかし、僕はいい見切りをつけたと前向きにとらえています。

 確かにバリントンは先発、ミコライオはクローザーとしてチームの2年連続Aクラス入りに貢献しました。ただ、バリントンは今季、防御率4.58と打ち込まれるケースが目立ちました。ミコライオは抑え失敗が多かったのも事実です。

 外国人はあくまでも助っ人ですから、1、2年しっかり働いてくれれば十分。今季は途中加入したデュアンテ・ヒースが当たり、来季も残留が決まりました。バリントンとミコライオに関しては、これ以上、成績が悪くなる前に新しい助っ人と入れ替える選択は間違いではないと感じます。

 投打とも戦力は整ってきており、残す課題は扇の要のキャッチャーでしょうか。石原慶幸、倉義和は30代後半で、そろそろ若い正捕手が出てきてほしいところです。現状の1番手は今季、バッティングで頭角を現した會澤翼。彼が1年間フルでマスクをかぶれるレベルになるのかが来季の大きなポイントになります。

 個人的には、日本の野球はキャッチャーのリードを重視しすぎる面があると思いますが、勝てるチームには、いいキャッチャーがいることも確かです。會澤をはじめ、勝てるキャッチャーがカープに出てくることをOBとして願っています。

 近い将来のメジャーリーグ移籍が取り沙汰されるマエケン(前田健太)がエースでいるうちに、何としてでも優勝、日本一を実現してほしいものです。緒方監督がマツダスタジアムで宙に舞う日をファンとともに、僕も心待ちにしています。

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