バイオラバーの新たな可能性だ。
 山本化学工業は11月25日、会見を開き、同社開発の「バイオラバー」が長寿遺伝子(サーチュイン[Sirt1]、以下同)の活性度を短期間に大幅改善する作用を持つことが分かったと発表した。前回までに紹介したように、山本化学工業では、近年、注目度が高まっている遺伝子検査において、バイオラバーを体に当てることで、遺伝情報をコピーして伝えるメッセンジャー(m)RNAの出現量が増えるかどうかをリサーチしてきた。その結果、まず長寿遺伝子の活性度がアップすることが実証されたというわけだ。

 いったい、長寿遺伝子とは何か。同社が発表した資料に基づいて説明しよう。人間の体は、およそ60兆個の細胞からなり、日々、分裂を繰り返している。細胞の核内には23対の染色体があり、その中の遺伝子によって細胞分裂が指示される。染色体は2重螺旋状で、その末端部分は「テロメア」と呼ばれる構造になっている。テロメアは細胞分裂のたびに少しずつ消耗する。完全にテロメアが消滅すると、細胞分裂が止まり、細胞が死滅してしまうのだ。死滅した細胞がどんどん増加することが、老化につながると現代の遺伝子研究では広く考えられている。

「要するに老化を進行させないためには、細胞を死滅させないことが重要になってくる。そのためにテロメアを保護しなくてはいけないわけです」
 そう山本富造社長は解説する。では、どうすればテロメアの摩耗を抑えることができるのか。そのカギを握るのが長寿遺伝子というわけだ。この遺伝子にはテロメアを覆っているヒストンタンパク質の分解を防いで保護し、細胞を強くする働きがあるとされている。また、「活性酸素を除去し、ガン発生を抑える」「動脈硬化、高血圧、メタボリック症候群、脂肪肝、糖尿病を改善、心筋梗塞のリスクを下げる」といった作用もあると言われている。

 これまでの研究により、長寿遺伝子を活性化させるには、「食事制限」「運動」「睡眠」「レスベラトロールの摂取」などが有効とされてきた。加えて「体温の上昇」もひとつの方法として浮上してきている。

 同社のバイオラバーは体を内部から温める赤外線を高いレベル(赤外線分光放射率約86%) で発する特徴がある。これを21日〜28日間、装着することで体温が0.36〜1.0度上昇するとの検証結果が得られ、2005年以降、既に複数回、国内外の医療学会で発表してきた。

 今回の検証は、東京大・渥美和彦名誉教授が設立した一般財団法人渥美和彦記念未来健康財団、ならびに臨床ゲノム医療学会の研究機関が実施した血液採取によるゲノム検査で行われた。被験者は20〜30歳代、40〜50歳代、60〜70歳代に3分類された19名。最初に採血ゲノム検査を実施した後、バイオラバーを体に装着して21日間生活する。その後、再び採血をして結果を比較した。長寿遺伝子の活性度合いを判断する基準となるのは、mRNAである。ゲノム検査で、この発現量を測定し、遺伝子が活性化しているかどうかを確認する。

 検証結果は山本社長も驚きの内容だった。被験者19人中16名でmRNAの発現量が増加。すなわち、長寿遺伝子の働きが活発になったとのデータが得られたのだ。全体の平均では21日間の装着前と比べて約17%活性度がアップしており、なかには49%も改善した被験者もいた。長寿遺伝子の働き具合も安定値(80〜120%)に到達した者が2名いた。

「そのうち安定値に到達した1名はバイオラバーを以前から活用している方でした。短期的に作用するだけでなく、中長期的にも効果があると我々はみています。今後も検証は継続して実施します」と山本社長は語る。今回の発見は、12月に横浜で開催される「第18回日本統合医療学会総会」にて学術発表することが決まった。同学会にてバイオラバーは昨年、健康機器第1号に認定されている。今後の研究でも同様の結果を得られれば、バイオラバーは「体温の上昇」のみならず、それに伴う「長寿遺伝子の活性化」にも寄与する製品と認められることになる。

「バイオラバーは電気もいらず、加熱の必要もない。ただ、装着しているだけでいい。1度購入すれば、少なくとも5〜10年は使えます。その意味では、誰もが簡単に始められ、続けることが可能な方法だと考えています」
 山本社長は、そうバイオラバーの強みをアピールする。

「他の長寿遺伝子を活性化させる方法では、食事制限にしろ、運動にしろ、ずっと続けることは難しい。現代社会では睡眠も不足しがちです。サプリメントも飲み続けるには多額の費用がかかるし、副作用の心配もあります。しかも、効果が表れるには少なくとも3〜6カ月の期間が必要です。その点では、わずか21日間で、しかも体に着けるだけで改善がみられた今回の結果は画期的と言えます」
 
 体の衰え、老いから逃れたい――これは古今東西、誰もが抱いてきた人類共通の願いである。それは高いパフォーマンスが要求されるアスリートにとってはなおさらだ。「体の衰えが成績に響いてくるスポーツでは、長寿遺伝子の活性化は、この先、重要なテーマになる」と山本社長は考えている。スポーツ界で、バイオラバーは赤外線による筋肉を温め、血流を促すことで、効率的なウォーミングアップや疲労回復につながるといった活用法があった。この先は「衰え防止」との用途が出てくるかもしれない。

「現在、ガン発生につながる遺伝子異常や、ゲノム検査で分かるさまざまな事象について、バイオラバーによる体温上昇がどのように作用するか調査中です。12月にも、また新たな発表ができるはず」と山本社長は意気込む。健康長寿のアイテムへ――。確かなデータが認められ、より多くの人がバイオラバーを試す日が来ることを山本化学工業は望んでいる。

 山本化学工業株式会社