今回のドラフト会議、ガイナーズからは寺田哲也が東京ヤクルトの4位指名、篠原慎平が巨人の育成1位指名を受けました。2人とも複数球団から調査書が来ていましたから、指名されたこと自体は順当と言えるでしょう。

 ただ、夏場と比較すれば、寺田は評価を上げ、篠原は逆に下げて秋を迎えるかたちになりました。それが指名順位に表れました。

 寺田はBCリーグで新潟のエースとして2年連続最多勝を獲得するなど申し分ない成績を残してきました。香川でも前期は先発をしてもらいましたが、スカウトにもうひと押し印象づけるには短いイニングで投げてもらったほうがよいのでは、と考えました。

 そこでリリーフ、抑えに配置転換したところ、持ち味であるストレートのキレが一層、増したのです。27歳と年齢は決して若くないものの、即戦力で使えると見込まれたのでしょう。

 ヤクルトはガイナーズから伊藤秀範コーチ、三輪正義、星野雄大ら多くの選手を指名してもらっています。鳥原公二チーフスカウトや、担当の岡林洋一スカウトも、よく球場に足を運んでいただき、いい評価をしていただきました。

 寺田自身にとってもヤクルトは縁のある球団です。高津臣吾コーチは新潟時代に監督として指導を受けています。また真中満監督は同じ栃木出身。新潟で寺田がヤクルト2軍戦に登板した際、好投したことが印象に残っていたそうです。

 ヤクルトは投手力に課題があるチームだけに、寺田にもチャンスはあるでしょう。あとは、それを生かせるかどうか。ぜひ期待に応え、1軍で活躍してほしいものです。

 一方の篠原はケガを乗り越えてのNPB入りです。2年間、リハビリに明け暮れたことを考えれば、よく結果を出せるレベルまで復活したと感じます。

 とはいえ、指名されて満足していては支配下登録は勝ち取れません。篠原が本ドラフトで指名されなかった最大の要因はコントロールです。登板によって波があり、投げてみないとわからない部分があります。

 今のままでは首脳陣の信頼を得られず、2軍でも出番が限られてしまうでしょう。まず狙ったところに9割方は投げられる精度を身につけ、先頭打者をきっちり抑えるピッチングを継続してほしいものです。そうすれば土田瑞起(元愛媛)のように支配下登録、1軍昇格の可能性が広がってくるのではないでしょうか。

 他球団では徳島の入野貴大が東北楽天から5位指名、山本雅士が中日から8位指名されました。入野は中継ぎで結果を出していましたから、先発で16勝(3敗2S)をあげ、チャンピオンシップ、グランドチャンピオンシップでも4戦4勝したことが大きなアピールになったのでしょう。

 半年間で27試合に登板し、100イニング以上を投げる経験を積めるところは独立リーグの強みです。これだけ投げても安定したピッチングができると示せた点も、指名の決め手になったはずです。

 山本に関しては伸びしろを買われたことに加え、又吉効果もあったとみています。中日初の独立リーグ出身選手となった又吉があれだけの働きをみせれば、アイランドリーグの注目度が高まるのは必然です。実際、スカウトの方は何度も試合を視察していました。ぜひキャンプ、オープン戦といいところをみせて、又吉、福谷浩司といった若いブルペン陣の一角に食い込んでほしいものです。

 今回、指名を受けた4選手のうち、入野、篠原は7年目、寺田はBCリーグ時代も含めて5年目でした。これまでは1、2年で選手を青田買いされるケースが多かったのが、3、4年かけて育成し、NPBに送り込む流れもできつつあるのではないかと感じます。育成リーグとしては理想に近づき、今、在籍している選手たちにとってモチベーションが上がるドラフトとなったと言えるでしょう。

 もちろん、課題もあります。それは野手の指名がひとりもなかったこと。徳島の吉村旬平、鷲谷綾平、愛媛の高田泰輔、高知の河田直人ら候補は大勢いたものの、夢を叶える選手は現れませんでした。

 今、名前を挙げた選手たちは正直、NPBの2軍クラスと遜色ありません。ただ、肝心なのは1軍で通用するかどうか。そのためには他の選手にはないスペシャルな能力を示すことが求められます。もう一歩のところまで来ていることは確かですから、彼らには諦めず、もう1年、頑張ってほしいと思っています。

 ドラフトが終わり、チームを退団する選手も発表され、来季に向けた選手集めの時期に突入しました。今季、ガイナーズは守りから崩れただけに、このオフは投手力も含めたディフェンスの部分に重点を置き、チームづくりをするつもりです。

 そして、僕の専門でもあるバッティングで魅力を感じる素材にも出会いたいですね。角中勝也(千葉ロッテ)や又吉のように将来、NPBで1軍の主力となる原石が見つかればと期待しています。

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