8月といえば、夏の甲子園ですね。我が母校のPL学園は大阪府大会の決勝で大阪桐蔭に敗れ、甲子園出場はなりませんでした。

 かつてPL学園といえば、「甲子園に出て当たり前」と言われた時期もありました。しかし、近年は大阪桐蔭が甲子園の常連となり、プロにも優秀な人材を次々と輩出しています。一方で母校は不祥事も相次ぎ、OBとしては寂しい限りです。それだけに今回はPL学園のユニホームを甲子園で久々に見たかったですね。

 甲子園で優勝した夏から、もう36年が経ちます。あの時はピッチャー兼4番として、府大会で8試合、甲子園で5試合、計13試合すべてで先発しました。府大会では金石昭人にマウンドを譲った試合もありましたが、甲子園では延長戦も含め、48イニングをひとりで投げ抜きました。

 今、振り返るとよく投げたなと思いますが、当時はそこまで疲れは感じませんでした。勝ち進むことで気持ちが乗っていき、よく言う“ゾーン”に入っていたのでしょう。また緩急を駆使するピッチングスタイルだったことで、速球で押すタイプと比較すれば、肩への負担も軽かったのかもしれません。

 それでも大学に進み、1年時の新人戦で投げた際には肩が痛かったです。もう大学ではバッターで勝負するつもりでしたから、まだ良かったとはいえ、ピッチャーを続けていたら故障との戦いは避けられなかったでしょう。

 よく「甲子園の優勝投手は大成しない」と言われます。もちろん桑田真澄や松坂大輔のような例外もありますが、連投による蓄積疲労の影響は否めないと思います。また甲子園優勝という大きな目標を達成し、精神的に一種の燃え尽き症候群になる部分も大きいでしょう。

 炎天下の下、根性で投げ抜くドラマは日本人好みとはいえ、もう時代は変わりました。やはり、選手のその後を考えて、休養日を設けたり、延長戦でのタイブレーク制導入も検討すべき時期にきているでしょう。個人的には延長12回を終えて同点の場合はタイブレークで決着をつける方法で構わないと思います。

 NPBに目を転じると、ガイナーズOBの又吉克樹が29日の広島戦で6勝目をあげました。それ以上にビックリしたのがバッティングです。この日もセンター前ヒットを放ち、少ない打席ながら3打数3安打、打率10割です。

 アイランドリーグはDH制のため、打席に立つ機会がなく、練習もたまにしていた程度。特段、センスがあるようにも見えませんでした。野手でNPBで1本もヒットが打てずにユニホームを脱ぐ選手が少なくない中、3本も記録したのは“持ってる”証拠でしょう。

 本業のピッチングでも、このところは無失点が続いています。セ・リーグの新人王レースは本命と見られていた広島・大瀬良大地は勝ち星が伸び悩んでいます。移動が多いとはいえ、夏場の炎天下で試合をしたアイランドリーグ時代と比べれば、ドーム球場で投げられるのは快適なはずです。このままセットアッパーで中日の上位進出に貢献できれば、新人王獲得の芽も出てくるでしょう。

 又吉は担当の正岡真二スカウト、谷繁元信選手兼任監督から高い評価を受けて指名されました。それだけに、ここまできたら目標は高く、本気で新人王を狙うつもりで好投を続けてほしいですね。それがアイランドリーグはもちろん、中日への最高の恩返しになるでしょう。

 彼のピッチングに刺激を受けて、頑張らなくてはいけないガイナーズの後輩たちですが、後期は現状、2勝6敗と最下位です。やはり、前期にマジック1から優勝を逃したのを選手たちが引きずっているように映ります。攻撃ではあと一本が出ず、守りでは逆に大事な一本を許してしまっています。

 負けに不思議な負けなしとの言葉があるように、結果が出ないのは原因があります。突き詰めていけば、球際に弱く、あとちょっとのところでアウトの打球をヒットにしてしまう。結果に残らないミスやエラーが重なっています。

 暑い時期になり、選手も体力が消耗して、どうしても集中力が欠けてきます。それでも、いかに確実にプレーするか。選手たちにはステップアップするための課題が与えられていると言えます。

 投手陣は酒井大介が復帰し、渡邊靖彬、竹田隼人も先日の練習試合に登板し、8月中には戦列に加わるでしょう。8月は6連戦1回に4連戦2回を含む21試合が組まれています。ここで、どう巻き返せるかが、後期の成績を左右するでしょう。

 前期、残念な思いをさせてしまったファンのためにも、ひとつでも多く勝つ。これを選手たちと一緒になって追い求めていきたいと思います。人をつくり、チームをつくり、試合をつくる。これが僕の仕事です。

 皆さんと秋に喜べるよう、8月からもう一度、仕切り直しをして頑張ります。暑い中ですから、熱中症には十分、気をつけながら、球場へ応援に来ていただけるとうれしいです。 

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