あけましておめでとうございます。2013年のプロ野球で個人的に注目しているのは、オリックスの新監督、森脇浩司です。彼とは同い年でしかも、カープ時代の同僚でもあります。僕たちは彼のことをモリと呼んでいました。

 モリは近鉄時代から男前で、かつ守備の巧さで目立っていましたね。フットワークが素晴らしく打球に対する第一歩が速い。スローイングにも安定感があり、内野ならどこでも守れるユーティリティープレーヤーでした。

 豪快な僕とは正反対のようにも思えますが、打撃に関しては思い切りの良さでは共通していました。小柄ながらハマれば一発もあるバッターでした。

 モリと親しくなったのはカープに移籍してからです。実際に付き合ってみると3枚目の部分もあり、おもしろい男でしたね。印象に残っているのエピソードをひとつ披露しましょう。

 年末に一度、モリの実家が兵庫、僕は和歌山ということで車で一緒に帰省したことがあります。中国自動車道で広島から岡山を抜け、モリの実家の最寄のインターチェンジにさしかかった時のことです。

「ニシ、もうええわ、ここで降りる」
 高速道路上で突然、モリがそんなことを言い出しました。そして、そのまま車を降りて歩いて帰ってしまったのです。

 おそらくモリとしては、インターチェンジをわざわざ降りるのは申し訳ないと気を遣ったのでしょう。でも、普通は高速道路でいきなり降りたりはしませんよね(笑)。

 当時のカープは津田恒実や斉藤浩行、定岡徹久、白武佳久と同級生が多くいました。そんな中でモリと津田との友情については皆さんもご存知の方が多いでしょう。

 モリは津田が病床にあっても試合の合間を縫って見舞いに駆けつけ、最期まで励まし続けました。この献身ぶりは後にドラマにもなり、モリの人間的な素晴らしさがクローズアップされることになりましたね。

 その人間性は指導者になっても変わりません。これはモリが巨人の2軍コーチ時代、みやざきフェニックス・リーグに来ていた時の話です。宮崎の行きつけのホルモン屋でアイランドリーグ選抜の選手たちと一緒になり、モリは黙って彼らの食事代も払ってくれたと聞きました。こういった親分肌なところが選手たちをひきつけるのでしょう。

 もちろんホークスで川崎宗則や本多雄一を育てたように指導者としての腕前も折り紙つきです。長年サードコーチャーをやっていましたし、2006年には入院した王貞治監督の代行を務めています。

 ただ、NPB1軍の監督のイスは12個しかありません。いくら野球をよく知り、キャリアのあるモリでも、まさか監督に就任するとは思いませんでした。それでも彼が監督になったことはオリックスが低迷から抜け出そうという強い意志がうかがえます。

 これまで日本の監督は指揮官としての能力よりもチームの顔としての人気面を優先するところがありました。それが最近は北海道日本ハムの栗山英樹監督のように、現役時代の実績はなくとも野球をよく勉強している人間がトップに立てるようになりました。名より実をとることの大事さに球界のフロントが気づいてきたのであれば、これはいい傾向です。

 昨年は同年代の栗山監督が就任1年目でパ・リーグを制しました。ぜひモリにも頑張って、好成績を残してほしいものです。

 そのためにはスタートダッシュが大事になるでしょう。弱い組織を変える作業は出だしでつまづくとなかなかうまく行きません。当然、モリもこのことは分かっているでしょうから、春のキャンプからどんどん改革を断行していくと思います。

 僕もモリに負けないよう、独立リーグで一番を目指して今季も頑張ります。アイランドリーグ、そして香川オリーブガイナーズから、少しでも良い話題を発信できるといいですね。今年も1年間、よろしくお願いします。

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