このところ欧州のビッグクラブが日本はもちろん、アジアをまわってプレシーズンマッチをしていますね。香港にもマンチェスター・ユナイテッドに、マンチェスター・シティ、トッテナム、サンダーランドがやってきて現地のチームなどと試合が組まれています。

 現在、来日しているアーセナルと名古屋グランパスの試合(22日)では前座にOBマッチが開催されました。アーセナルを率いるアーセン・ベンゲル監督は、ご存知のように95年から名古屋でも指揮を執っています。そこで当時のメンバーが集まって紅白戦をすることになったのです。実は今回、ありがたいことに名古屋からOBマッチへの参加の打診をいただきました。

 96年に名古屋でプロサッカー選手になった僕にとって、ベンゲルさんは最初の監督。プロ1年目で世界的名将の下で教わったことは大きな財産になっています。

 久々にベンゲルさんや先輩方にもお会いしたかったのですが、既にチームが始動しており、練習を休むわけにはいきません。サッカーに携わっている限り、またどこかで再会できる。その日を楽しみにして、今回はお断りさせていただきました。

 香港で新チームで始動して約2週間、今は陸上部のような練習をしています。ただ、ランニングするのではなく、1周のラップタイムを設定して時間内に走ったり、内容はなかなかハードです。

 ただ、このキツい時期を乗り切らないとシーズンを戦う体はできません。選手同士で声をかけ、励まし合いながら、高い意識を持って練習に臨めればと思っています。

 とはいえ、高温多湿の環境ですから、トレーニングでの消耗は小さくありません。ケガや体調を崩してしまうと、せっかくの練習がムダになってしまいます。食事にはいつも以上に気を使っていますね。水分補給も水ではなく、アミノ酸入りのスポーツドリンクを飲むようにしています。

 チームは半分くらいのメンバーが入れ替わりました。これからゲーム形式の練習もスタートしますから、積極的にコミュニケ―ションをとって早く選手の特徴をつかみたいものです。

 日本からは横浜FCより新たにDFパク・テホンが移籍してきました。韓国人ですが日本語ができるため、こちらが時には通訳がわりになってサポートをしています。

 外国でプレーするのは、どんな選手であっても不安なもの。僕も香港に来たばかりの頃は、いろいろな方に支えられて本当にありがたく感じました。だからこそ、今度はこちらが新しく来た選手を温かく迎え、チームに早く溶け込めるように助けてあげたいと考えています。

 そんな中、香港にもうれしいニュースが届きました。ついにマナブ(齋藤学)が日本代表に選ばれましたね。本人に「良かったな。頑張れよ」とメッセージを送ると、忙しい中、返事が来ました。代表になっても浮かれることなく、上を目指そうとしている姿勢がうかがえ、それもうれしく感じました。

 愛媛で最初に会った時から、技術はもちろん、マナブの向上心は他の選手とは全く違っていました。練習後、僕に海外での経験を聞いてきた時には、「ここで終わる選手じゃないな」と直感したものです。

 東アジア杯は香港でもケーブルテレビで放送されており、日本戦はもちろんチェックしています。代表デビューとなった中国戦では、画面からも「やってやろう」という意気込みがひしひしと伝わってきました。3-1とリードした展開だっただけに、リスクを犯して攻めるのは難しかったでしょう。持ち味を出しにくい状況だったと思います。

 ただ、彼なら必ずやってくれる。そう信じていた矢先、スタメン出場したオーストラリア戦では素晴らしいゴールを決めました。この得点は彼にとって大きなアピールとなったことは間違いありません。ぜひ、今回の代表経験をきっかけに、もっともっとビッグな存在へ成長してほしいと願っています。

 マナブの姿を見ていると、目標を高く設定して努力し続けることの大切さを改めて教えてくれますね。僕もまだまだプロ選手として高みを目指そうと、いい刺激を受けました。

 お互いに成長した姿で、また、どこかでマナブには会いたいものです。それが試合のピッチ上であれば最高でしょう。夢が実現することを楽しみにしつつ、僕も負けないように香港で結果を出そうと決意を新たにしています。

(この連載は毎月第2、4木曜更新です)
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