シーズン終了から2週間、このところは久しぶりにリラックスした時間を香港で過ごしています。昨年末から所属先が決まらず、香港に来てからも試合が続いて落ち着かない日々でしたから、久々のオフという感覚です。
(写真:最終節で劇的な1部残留を決め、サポーターと喜びを爆発させる)

 家族にも迷惑をかけた分、買い物に行ったり、1歳9カ月の娘のお守をしたり、長女と次女が通っているチェルシーサッカースクールの送り迎えをしたり、と家事にも精を出しています。

 香港に来て4カ月になりますが、現地の人たちは外国人であっても親切で、とても暮らしやすい土地だと感じています。特に子どもや高齢者、妊婦さんには優しく、電車内でも席を譲り合う光景をよく見かけます。

 過去の歴史から日本人に対する風当たりは強いかもしれないとの心配も杞憂でした。おかげで日常生活で強いストレスを感じることもなく、おおらかな気持ちでサッカーに集中できました。

 香港ではMTRという鉄道網が張り巡らされており、移動にも困りません。しかも運賃が安く、100円あればたいていのところには行けます。僕も家の前に路線が走っており、試合当日以外は基本的に電車通勤をしていました。サッカー選手は会社勤めの方とは“出勤”時間が違いますから、通勤ラッシュにも合わないのもうれしいですね。

 買い物は日系のデパート(ジャスコ)もあり、日本と同じものが購入できます。値段は日本と同じくらいでしょうか。こうしてみると、今までいろんな国で生活をしてきた中では一番、不便さを感じなかった場所かもしれません。

 ひとつ予想とは違ったのは、寒暖の差が激しいところ。今は梅雨のように雨が続き、蒸し暑い日が続いていますが、香港に渡ったばかりの時期は暖房が必要でした。太陽が照っている昼間は温かくても、曇りの日や夜は寒くてブルブル震えるほどです。年中温かいイメージがあっただけに、これは意外でしたね。

 こうやって僕が香港でプレーできるのも、元をたどればプロサッカー選手という選択肢を示してくれたJリーグが日本にできたからこそ。20年前の開幕時、高校1年生だった僕は、サッカー中継から伝わってくる熱気に圧倒されたことを思い出します。
 
「プロになったら、こんなにも変わるものなのか!」
 盛り上がるスタジアムを見ながら、「僕もここでプレーしたい」という思いが沸き上がってきました。それが僕にとってプロサッカー選手の原点だと思っています。

 そして、テレビの映像越しに輝いていたのが、カズさんです。プレーはもちろん、メディアで報じられる行動や言動すべてが憧れの的でした。間違いなく、僕にとってのスーパースターであり、その気持ちは今も変わりません。

 そのカズさんが、20年経った今も現役を続けていることは本当に尊敬の一語です。カズさんの姿には、情熱を持ち続けることが、ひとつの才能だと学ばせてくれます。一歩先を走り続けてくれるお手本があるからこそ、僕たちは、その後を追いかけて走ることができます。もし、カズさんがいなければ、Jリーグや日本のサッカーは随分、違うものになっていたでしょう。

 日本と香港の違いはあれど、そんなレジェンドと呼べる選手と、節目の年に同じ横浜FCというクラブに所属できるのも何かの縁だと感じています。道をつくってくれた先輩たちに感謝しつつ、僕も少しでも、その道を広げ、後輩たちに何かを残せるように頑張りたい。その思いを改めて強くしたJリーグ20周年です。

(この連載は毎月第2、4木曜更新です)
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