やっと、やっと、この報告ができます。4月13日のホームでのテュンムン戦。後半6分にPKで香港初ゴールを決めることができました。

 続く18日のシチズン戦でも33分に得点。昨季は愛媛で0ゴールに終わってしまいましたから、公式戦では実に1年4カ月ぶり(2011年12月、天皇杯4回戦、浦和レッズ戦以来)に味わう喜びです。

 初ゴールの場面は、0-3とビハインドの展開。味方の選手がPA内で倒されてPKを得ました。PKのキッカーは僕と決まっていたので、絶対に1点を返して流れを変えるつもりで、相手のゴールキーパーと向き合いました。

 PKといえば、僕には苦い記憶があります。スペインでのラス・パルマス時代、1点ビハインドの状況で大事なPKを外してしまったのです。試合にも敗れ、かなり悔しい思いをしました。

「もう2度とPKは外したくない」
 その一心で、次の日からゴールキーパーをつかまえてPKを徹底して練習しました。当然ながらPKは蹴る方向が先に分かってしまうと止められる率が高くなります。逆にゴールキーパーがどちらに動くかが分かれば、成功率は限りなく100%に近づくでしょう。

 そこで僕は助走のところでは勢いをつけ、足を振り抜く寸前に動きをスローダウンさせるテクニックを磨きました。一気に蹴るとみせかければ、キーパーは反応せざるを得ません。タイミングをずらして、それを見極められばゴールを決めやすくなります。

 以来、愛媛での初ゴールとなったザスパ草津戦(2010年3月13日)も今回も、作戦通りにPKで得点をあげています。先日の試合に関してはGKが右に体重をかけたのが見えたので左にうまく流しこめました。

 ストライカーとは不思議なものです。長い間、得点がなくても、1点を獲ると立て続けにゴールが生まれます。シチズン戦では20歳のMFウォン・ワイのCKにニアへ走り込んで頭で合わせました。強烈なヘディングシュートが突き刺さったので、気持ち良かったです。

 このCKからゴールまでの流れは前日の練習で、まさにやっていたスタイルです。香港に来てコミュニケーションをとりながらお互いを理解してきた成果がようやく実ったと感じています。

 とはいえ、いくら練習でうまくいっても、実際の結果に結び付かないと本当の信頼は築けません。周囲からも「いいプレーをするけど、点が獲れない」という評判は耳にしてきました。今回の2ゴールでようやくチームの一員になれた気がしますし、これから、もっといい関係がつくれるはずです。

 ただ、残念だったのはテュンムン戦は2-4で敗れ、シチズン戦は1-1の引き分けと、ゴールが勝利につながらなかったこと。特にシチズン戦は先制し、あと10分頑張れば勝っていただけに喜びも半減してしまいました。

 この試合に勝っていれば、1部リーグ残留が決まっていただけにクラブにとっては痛い引き分けです。残りは泣いても笑っても1試合。現在の順位は6位ですが、降格になる最下位(10位)とは勝ち点2差しかありません。

 香港のシステムでは勝ち点で並んだ場合、得失点差ではなく、直接対決の勝敗で順位を決めます。対戦成績では上回っている下位クラブが多く、有利な状況ですが、勝負事は何が起きるか分かりません。

 特に最終節はチームの主力であるDFミア、MFミーコの2人のセルビア人が累積警告のため、出場停止になります。相手のタイポーも8位で残留を争っており、死に物狂いで勝ちにくるでしょう。

 僕たちとしては、まずディフェンスをしっかりして相手に先制点を与えないことが大事です。最低でも0-0で折り返せば、流れは来るとみています。

 その上で少ないチャンスを確実に決めて、3試合連続ゴールと勝利でシーズンを締めくくりたいと思います。3試合連続ゴールは名古屋やメキシコ時代にも経験しており、今回もできそうな気がしています。

 日本はもうすぐゴールデンウィークですね。Jリーグは連戦となり、選手にはちょっと大変な期間です。香港はカレンダー通りで、残り1試合に向けて調整を続けることになります。次回は、もっと晴れやかな気持ちで報告ができるよう頑張ります!

(この連載は毎月第2、4木曜更新です) 
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