ウズベキスタンから5点を奪って快勝した日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ新監督は、試合後の会見でも上機嫌だった。

「青山(敏弘)の1点目は素晴らしかった。素晴らしいボレーで、テクニックはパーフェクトだった。柴崎のゴールもスペクタクル。みなさん気づいたとは思うが、オカ(岡崎慎司)がボールについていって点を取りそうになったが、わざと柴崎(岳)のゴールにした。素晴らしいことだし、珍しいこと。どこにも存在しないことだ。チームのために、彼はそうした行動をした。そのことが実は一番、スペクタクルなのかもしれない」

 5ゴールのうち、指揮官が「一番スペクタクル」と岡崎の振る舞いを評した柴崎のゴールは後半35分だった。相手FKからこぼれたボールを味方が全速力で奪い、出てきたボールを柴崎が、前に飛び出したGKの動きを見てハーフウェーライン付近からのロングシュートを放った。

 そのシュートに合わせて飛び出した岡崎はボールに触れようと思えば触れられたはずだが、体を張って相手DFを食い止めて柴崎の得点にした。

 試合後、取材エリアに出てきた岡崎は少し照れ笑いを浮かべて言った。
「凄い声援が聞こえてきたから、触るのもあれかなと思って。ゴールを決めるかどうかは、岳にとってもバロメーターになる。次のモチベーションになればと思った。ドイツだったら確実に打ってましたね」
 後輩の自信につなげるために、敢えてゴールを譲ったのである。

 得点にこだわる男が、どうして譲ったのか。
 チームを引っ張っていくという自覚。

 彼は本田圭佑、長友佑都らと同じ北京五輪世代の28歳。キャップ数は遠藤保仁が招集されなかった今回、最も多い立場となった。若手たちにも積極的に声をかけ、年長者の振る舞いも目立つようになってきた。トレーニングから代表選手の誇りというものを態度で見せている。

 裏への動き出し、ポストプレー、献身的な守備、そしてシュートに持ち込む動き。
 近ごろ強く意識しているのが、勝利に対する執着をプレーで示そうとしていることだ。

 アジアカップではこう語っていた。
「チームがまったくうまくいかないこともあると思う。そういうときでも、自分に出してくれというのを伝え続けて、自分に最高のボールが来たときに、決められる準備をしておきたい」

「サッカーなので、自分がやりたいことをずっと100%やれるわけじゃない。でもチャンスはあるので、それを決めることができればもっと自分にボールが集まってくると思う。自分は3つ(チャンスが)あったら1つは決めないといけない」

 苦しいときに点を取ってこそエース。味方を活かしてこそエース。言葉の節々に、責任感を漂わせている。

 ハリルホジッチ監督の初陣となったチュニジア戦では途中出場でゴールを挙げ、今回のウズベキスタン戦も後半9分、途中出場の太田宏介のクロスをファーで待ち、代名詞のダイビングヘッドで2戦連続のゴールを決めた。太田にアシストを記録させ、彼の自信につなげた一発ともなった。

 今回の2得点で歴代3位の43得点となり、2位・三浦知良の55ゴールにジリジリと迫っている。ブンデスリーガ(1部)日本人初となる2季連続の2ケタ得点もマークしており、岡崎の勢いはしばらく止まりそうにない。

 エースの自覚、責任感が岡崎をさらに成長させていく。

(このコーナーは第1木曜日に更新します)
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