2015年のJリーグ優勝予想は、例年以上に難しい。

 というのもJ1は2004年以来、11年ぶりとなる2ステージ制を採用し、そのうえでポストシーズン制が導入されるためだ。チャンピオンシップでは年間勝ち点1位のチームが決勝にシードされ、勝ち点2位、3位、ファーストステージ優勝、セカンドステージ優勝の4チームによる1回戦、準決勝が行われ、勝ち上がったところが決勝に進める。

 筆者は「1ステージ制」派だが、決まった制度に今さらいちゃもんをつけても仕方がない。ポストシーズン制はプロ野球で定着してきており、おそらくソコソコは盛り上がってくると思われる。

 極論を言えば、勝ち点1位チームが“損をする”制度だと言える。従来なら優勝だったものが、勝ち点でトップに立てなかったチームの挑戦を受けることになる。挑戦を受けるほうと挑戦するほう、どちらが有利なのか。実力で見れば1位チームだろうが、トーナメントで勝ち上がってくるほうが勢いも生まれる。J2の昇格プレーオフ(3位~6位によるトーナメント)を見ても3位チームがなかなか昇格を決められないという現実もある。予想外のチームが優勝する可能性も出てくるわけだ。

 また、これまではACL出場組が過密日程の影響を受けてリーグ戦で思ったように勝ち点を伸ばせないという傾向があった。実際、昨季のセレッソ大阪はリーグ戦で苦しみ、J2降格の憂き目にあっている。それが2ステージ制になったことで、巻き返しが可能となる。たとえばファーストステージで大きく出遅れたとしても、チームを建て直してセカンドステージで優勝すればチャンピオンシップに出場できる。ACL組の“不利“が幾分、軽減される制度と言えるのかもしれない。

 さて本題の優勝予想である。チャンピオンシップはそのときの状態が多分に関係してくるだけに、ここでは年間順位予想でお許しいただきたい。
 筆者が1位に推したいのが風間八宏監督率いる川崎フロンターレである。組織的な攻撃サッカーを貫き、風間体制も勝負の4年目。大久保嘉人を筆頭に、レナト、小林悠、そしてゲームメーカーの中村憲剛、大島僚太とJ随一の攻撃力に磨きが掛かっている印象だ。課題は守備のほう。昨季、56得点はリーグ3位だったにもかかわらず、失点数は43でリーグ11位。終盤戦は勝負弱さも目立った。

 チームには攻撃する時間をさらに増やしていくことで守備を短くしていくという狙いがある。それとともに、守備の整備にも抜かりがない。ベガルタ仙台から角田誠を獲得し、右サイドバックのエウシーニョの評価も高い。筑波大から新加入のルーキー、車屋紳太郎は前評判が高く、センターバック、サイドバックで併用できる。

「前のメンバーだけが豪華」というイメージはもはやなくなった。1年間戦えるだけの層がぐっと厚くなり、攻撃にしても長身の杉本健勇、昨季J2でリーグ3位の19得点をあげた船山貴之など、タイプの違うアタッカーも手に入れている。キックオフカンファレンスで風間監督に話を聞いた際、「すごく手応えを感じている」と自信をのぞかせていた。システムを流動的に変えられる点も、チームの上積みを感じさせる。

 チームとしての完成度が高い3冠王者のガンバ大阪、積極的な補強で今季こそ優勝を、との思いが強い浦和レッズ、そして若手の成長著しい鹿島アントラーズ。昨季のトップ3が今季も上位に絡んでくるとは思う。ただACLの過密日程の影響が多少なりとも考えられるだけに、フロンターレ有利と見ている。

 対抗馬に推したいのが昨季3連覇を逃がしたサンフレッチェ広島だ。
 潤沢な予算のあるビッグクラブではなく、今年は石原直樹を引き抜かれてしまった。さらに「10番」を背負ってきた高萩洋次郎やファン・ソッコも退団するなど、戦力低下は否めない。しかし地力は誰もが知るところであり、勝つポイントを押さえている試合巧者。浅野拓磨、野津田岳人ら活きのいい若手が結果を残していければ、首位に顔を出していく存在になるような予感がしている。プロ野球も、ニューヨーク・ヤンキースから“男気”で戻ってきた黒田博樹の加入で広島カープがグッと勢いづいているだけに“俺たちも負けられない”という意地にも期待したい。

 筆者の勝ち点順位予想は1位川崎、2位広島、3位G大阪。この3チームに共通しているのは、絶対的なエースストライカーがいることである。

 川崎には2年連続得点王の大久保、広島にはJ2時代も含めて11年連続で2ケタゴールを挙げている佐藤寿人がいる。そしてG大阪は強靭なフィジカルを誇るパトリックと、覚醒した宇佐美貴史を抱える。それに彼らを操るパスの供給源として、川崎には中村、広島には青山敏弘、ガンバには遠藤保仁と役者がそろっている。パスの出し手と受け手がきっちりと仕事をしていけば、自ずと結果も出るだろう。

 世界の潮流を見ても、強烈なフォワードを持つチームが結果を得ている。昨年、G大阪が優勝に届いたのも、パトリックの加入と宇佐美の復帰が前半戦で低迷していたチームをガラリと変えてしまった。昨年、横浜F・マリノスの中村俊輔が1トップを採用するチームが多くなったJリーグの現状について私見でこう述べていた。

「(Jリーグでも)高さや速さ、決定力など攻撃の武器を併せ持つ強烈なフォワードの需要が高まっているのは確か。相手にとって一番危険な存在が前にいることで、後ろの選手たちが何をやればいいのかも、はっきりする。連係、連動の“枝分かれ”がトップから始まっていけるチームが、結果を残しているんじゃないか」

 強烈な前がいることで、戦い方も決まってくるというわけだ。2トップを採用するチームも増えてきそうだが、基本的にこの傾向は2015年も踏襲されるだろうと筆者は見ている。

 チャンピオンシップを勝つにも、ストライカーの活躍抜きには語れない。
 エースがどれほどのインパクトを残せるか。
 大久保か佐藤か、それともパトリック&宇佐美か。いやいやひょっとしたら、予想外のストライカーが現れるかもしれない。

(このコーナーは第1木曜日に更新します)
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