欧州遠征(セルビア、ベラルーシ)に臨む日本代表メンバーが発表された。今回の選考は欧州でプレーする選手が優先され、その中にフィテッセでプレーするハーフナー・マイクの名前もあった。

 マイクは6月のコンフェデレーションズカップまで継続的に招集されていたものの、8月のウルグアイ戦、9月のグアテマラ、ガーナとの2連戦では呼ばれなかった。これは、1トップに入ってグイグイと評価を上げている柿谷曜一朗(C大阪)の台頭と決して無関係ではないだろう。セルビア、ベラルーシとの2試合は、マイクにとって重要なゲームとなる。

 マイクは今季、1トップとしてフィテッセのレギュラーに定着している。不動の1トップだったコートジボワール代表のウィルフリード・ボニーがスウォンジーに移籍したことでチャンスが巡ってきた。10月2日現在で1ゴールにとどまっているものの、彼のプレーはスケールアップしている印象がある。「高さ」ばかりでなく、目を引くのは「強さ」だ。

 9月29日のNEC戦ではカウンターから味方のパスを受け取ると、相手ディフェンダー2人の間を猛突進。当たり負けずに突破し、後方からタックルを受けて倒れ込みながらも右足シュートを放ったのだ。

 ゴール左隅に決まって、いやはや見事なゴールと思いきや、審判がタックルをファウルと判定して笛を吹いていた。残念ながら「幻のゴール」に終わったのだが、マイクの進化を証明するワンシーンであった。彼は間違いなく、母国オランダの地で成長している。もちろんゴール数はもっと増やしていかなければならないが。

 昨季はトップ下、サイドと複数のポジションをこなしながらも11ゴールを挙げた。欧州でプレーする日本人選手のなかでは最多だった。オランダリーグは世界4大リーグ(イングランド、スペイン、イタリア、ドイツ)に比べるとレベルは一つ下がるものの、屈強なオランダのディフェンダー相手に競り勝ち、高い打点のヘッドでゴールに叩き込むシーンを重ねてきた。

 コンフェデ杯の前、シーズンを終えて帰国したマイクにゴールを2ケタに乗せることができた要因を聞いた。すると彼はフィテッセのストライカーコーチで元オランダ代表のレネ・アイケルカンプの存在を挙げた。

 195センチとほぼ同サイズのコーチからは、懇々とフォワードの心得を説かれてきたという。試合翌日は映像を見ながら、一つひとつのプレーをチェックされるのだ。

「コーチには『何故ここでゴール前に入っていないんだ』、『何故ここで予備動作を入れていないんだ』とか、ホント細かく指摘されるんですよ。体を張らなきゃいけない場面でそうしていなかったら、『お前がここにいる意味あるのか』って。見返したいって思ったし、そうやって口酸っぱく言われてきたからこそ、成長できた感じがあるんです」

 相手との駆け引き、ボールを持ってからの体の当て方、シュートまでの持っていき方。リーグ得点王の相棒ボニーと一緒に映像を見ることで、別の観点からもゴールの取り方を学んでいけたという。口うるさいコーチと抜群の得点能力を誇る相棒の存在によって、ゴールへの意識、集中力が一層強まったのは言うまでもない。昨季、集中して取り組んできたことが、しっかりと実になってきている。

 しかしながら、代表では存在感を発揮できていない。

 先のコンフェデでもイタリア戦の終盤に出場したのみ。同点の場面での起用に、日本はマイクをターゲットにしてのロングボールを増やしてくるかと思われた。だが、チームはマイクを活かしきれず、マイクも相手の脅威となることはできなかった。そして日本は勝ち越しを許し、3-4で敗れてしまう。

「悔しい。メチャクチャ悔しいですよ」

 あのとき、レシフェのスタジアムでぐっと唇をかみ締めるマイクがいた。ボールを集められなかった自分を責めているようでもあった。

 あれから4カ月。成長をこの欧州遠征の舞台で発揮しなければ、今後、代表に生き残るのは難しくなってくるだろう。きっとそれは本人も分かっている。覚悟を秘めたマイクが、ザックジャパンに戻ってくる。

(このコーナーは第1木曜日に更新します)
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