先日、親友でもある廣山望が現役引退を発表しました。彼から引退の決意を聞いたのは、今年1月。「やりたいことがある」と新たな目標があることを明かしてくれました。


 僕が彼に初めて会ったのは愛媛から千葉に渡った小学校5年の時です。そこから中学、高校と同じチームでプレーしてきました。


 忘れもしないのは初対面の出来事。愛媛から出てきて右も左もわからない僕に、「僕、廣山望。よろしくね」と声をかけてくれたのです。


 話すのも聞くのも愛媛なまりが当然だった僕にとって、彼の話す標準語はテレビの中でしか知らない言葉でした。まるで「キャプテン翼」に出てくる翼クンが、そのまま現実の世界に飛び出てきたような感覚になったものです。 


 あれから25年。この年齢になれば、現役を続けている選手はどんどん少なくなっていきます。サッカー選手に限らず、35歳という年齢は人生において、ひとつの分岐点となる時期。残りの人生で自分が何をすべきかを考え、決断するタイミングだと感じています。廣山の第2の人生が輝かしいものになるよう心から祈っています。


 サッカーを続けたくても続けられなかった同級生が大勢いる中、僕はまだ選手としてプレーができています。このことに感謝し、1年1年というよりも1日1日、いや一瞬一瞬をサッカーのために捧げたいと改めて感じました。


 廣山とはプロになってからも、チームは違えど、オフに会った時には草サッカーを楽しんできました。そして彼と話をすることで、いつも刺激を受けてきました。つい先日も、彼と電話でいろんな話をして、元気をもらったところです。引退しても、またオフにはぜひ彼と一緒にボールを蹴りたいと思っています。


 さて、愛媛は今、天皇杯も含めて12試合勝利がないという長く苦しい日々が続いています。僕の長いサッカー人生でも、ここまで勝てなかったのは記憶にありません。


 でも、勝てない時には勝てない理由が必ずあります。90分間、同じレベルでサッカーが続けられないのも、そのひとつですし、何よりゴールに向かう気持ちがもっともっと必要です。


 個人的には、こういう時こそシンプルにプレーすることが大切だと考えます。ボールを持ったら前を向くこと、マイボールになったら、相手のディフェンスの裏へ走ること……。たとえ失敗しても、それらを繰り返していればチャンスはいつか訪れるはずです。


 止まったままでボールが転がってきたり、ゴールが決まることはそうありません。自分たちから動き出さない限り、何も起きない。基本中の基本かもしれませんが、その原点に立ち返ることが求められているのではないでしょうか。


 ちょっと気分を変えようと天皇杯の湘南戦前には髪を思い切って短くしました。もともと昔は坊主頭でしたから、僕の中では違和感はありません。


 もう僕たちには失うものは何もない! 今までのことはいい意味で忘れ、新たな気持ちで次節(14日)、横浜FCを迎え撃ちたいと思います。


 月並みな言葉かもしれませんが、チャンスがある限り、ゴールを狙って精一杯頑張ります。横浜FC戦は金曜日のナイターになりますが、スタジアムでの応援、よろしくお願いします。 


(この連載は毎月第2、4木曜更新です)


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