「球春到来」――20日、プロ野球パ・リーグのペナントレースが幕を開ける。今シーズンは6球団の戦力が拮抗しており、優勝の可能性はどの球団にも等しくあるという見方が大半を占めている。近年、安定した強さを誇っているのが北海道日本ハム、福岡ソフトバンク、埼玉西武だ。今シーズンもAクラス入りにあげる評論家も少なくない。そこに割って入りたいのが東北楽天、千葉ロッテ、オリックス。今シーズンはそろって指揮官がかわったこともあり、この3球団がどんな戦いを見せてくれるのかによって、ペナントレースの展開は大きく左右されることになりそうだ。
 昨シーズン、2年ぶりにリーグ優勝した日本ハムは、エース・ダルビッシュ有と守護神の武田久を中心に、武田勝、八木智哉の先発陣、中継ぎには宮西尚生、金森敬之とコマが揃っている。さらに有力な助っ人3人が加わった。先発ローテーション入りが濃厚なケッペルとカーライル、リリーフとして期待されるウルフだ。なかでも196センチと長身のケッペルはストレートは140キロ台後半を誇り、変化球も多彩。さらに低目へのコントロールもよく、主戦としての活躍が期待される。しかし、攻撃面は決して楽観視できる状態ではない。27本塁打、88打点とチームトップの成績をあげ、勝負強さを誇ったスレッジが抜けた穴は大きい。さらに機動力野球の柱だった森本稀哲が腰痛で戦線離脱し、開幕には間に合わない。森本、スレッジの代役として新戦力の台頭が待ち望まれている。

 球団創設5年目にして初のAクラス入り。その余勢を駆って進出したCSでもソフトバンクを破って第1ステージをクリアするなど昨シーズンは大躍進を遂げたのが楽天だ。その先導役を担った野村克也前監督から元広島監督のブラウン氏にバトンタッチした今シーズンは、どんな戦いを見せてくれるのか。その中枢を担うのが2人のエース、岩隈久志と田中将大。これに永井怜が加わった先発3本柱は今シーズンも健在だ。問題はリリーフ陣だ。中継ぎには渡辺恒雄、松本輝、朝井秀樹などコマは揃っているものの、不安は拭いきれない。抑えも最速167キロとも言われる剛速球投手モリーヨが加わったが、その実力は未知数だ。打線は3年目の聖澤諒が安定した力を発揮できれば、渡辺直人との1、2番コンビが打線に勢いをつけそうだ。昨シーズンは腰痛に苦しんだ中村紀洋が復活すれば、さらに厚みが増す。

 6年間、優勝から遠ざかっているソフトバンクは、今シーズンも投手陣はコマが揃っているだけに、機動力と長打力を兼ね備えた打線がカギを握る。特に新戦力として加わったイ・ボムホがオープン戦で結果を残し、期待の声は膨らむ一方だ。右ヒザの状態が思わしくない松中信彦が開幕2軍スタートが決定しており、その穴を埋めることになる。上位には本多雄一、川崎宗則の俊足コンビが揃い、中軸はもちちん、下位にも長打力のある長谷川勇也、田上秀則がいる打線はまさに脅威だ。

 日本一からBクラスに沈んだ西武は、今シーズンこそその屈辱を晴らしたいところ。昨シーズン、沢村賞に輝いた涌井秀章がオープン戦でも安定したピッチングを見せており、今シーズンも期待できそうだ。岸孝之、帆足和幸がが昨シーズンと同じような活躍を見せ、これに西口文也、石井一久といったベテランが続けば、先発陣は安泰だ。懸念材料はリリーフ。特に抑えはグラマンが開幕には間に合いそうにない。16年ぶりに古巣復帰したベテラン工藤公康も2軍調整中と心許ない。シコースキー、小野寺力、藤田太陽といったメンバーでもちこたえたいところだ。打線はオープン戦で右目眼窩底を骨折し、心配された主砲の中村剛也がなんとか間に合い、役者が揃った。スピーディかつパワフルな攻撃が見られそうだ。

 ロッテはアジアの大砲・金泰均の加入が大きい。3年ぶりのAクラス浮上のカギは彼が握っているといっても過言ではない。井口資仁、大松尚逸とのクリーンアップは破壊力満点。決して他球団にひけをとらない。中軸が機能するためにも1番・西岡剛の出塁率がカギを握る。長らく浸透していた大味な野球から、新指揮官が謳う機動力・小技を重要視した野球への移行がスムーズにいくかどうかも気になるところだ。一方、手薄感が否めないのが投手陣。先発は成瀬善久、唐川侑己、大嶺祐太が主戦となるが、安定感はいまひとつ。さらに抑えの小林が右ヒジの張りを訴え、開幕3連戦はベンチに入らないことが発表された。長いシーズン、どうやりくりしていくのか。西村徳文新監督の手腕が問われる。

 最下位脱却を図るオリックスは、阪神監督時代、勝利の方程式「JFK」を築きあげた岡田彰布監督の投手陣の起用法に注目したい。なかでも先発からリリーフに転向した小松がどう機能するか。そして一昨年セーブ王を獲得した加藤大輔の復活がカギを握る。勝ちパターンが固定化すれば、強固な投手リレーが組めそうだ。打線はメジャーリーグから9年ぶりに古巣へ復帰した田口壮の存在が、チームにどう影響するか。岡田監督の信頼に応え、起爆剤となれば、パ・リーグの台風の目となる。