四国・九州アイランドリーグは昨オフから大きく揺れている。まず昨年11月、福岡レッドワーブラーズが経営立て直しのため、リーグ戦不参加を表明した。さらに今年に入り、徳島インディゴソックスが累積で1億5000万円の赤字を計上し、親会社が撤退。今季に限ってリーグが経営を肩代わりする形でチームの存続が決まった。また長崎セインツも現時点では1年間の運営を維持する資金が賄えず、募金を呼び掛けている。経営面では苦境が続くとはいえ、育成面では過去5年間で20名のNPB選手を輩出し、アイランドリーグは確かな実績を残してきた。そして今季も各球団に磨けば光る原石が散らばっている。5球団の戦力を分析する。
(写真:愛媛のドラフト候補・篠原)
高知ファイティングドッグス
★09年成績
前期 17勝21敗2分 5位
後期 22勝12敗6分 1位

 昨季、本塁打と打点の2冠王に輝いた主砲のカラバイヨ、盗塁王のYAMASHINらが抜けた野手陣は攻撃力の低下が予想される。だが、定岡智秋監督は「機動力を生かした野球はこれまでも追求してきた。大きな不安はない」と前向きだ。2年目のトップバッター・西本泰承、2番の流大輔と俊足の選手を上位に揃え、相手をかきまわす。また下位を打つ新人の安田圭佑(別府大)も左で足が使える。リーグ初年度から在籍する梶田宙、龍央の中軸の調子が上がってくれば、得点力も高まるだろう。

 一方、投手陣では昨季の最多勝(14勝)左腕の吉川岳が安定している。NPB入りも噂されながら指名漏れに終わった昨季から、さらに進化した姿を見せてくれそうだ。昨季はケガに泣いた野原慎二郎も15勝をあげた一昨年並みの活躍を期待したい。ただし、抑えには不安を抱える。昨季の独立リーグ日本一に貢献した元阪神の伊代野貴照が抜け、新クローザーの座は固まっていない。当面は制球力のある新加入の丸野裕司(日本体育大)と先発要員の山隈茂喜を併用するスタイルで最後を締めくくる方針だ。

長崎セインツ
★09年成績
前期 22勝12敗6分 1位
後期 17勝17敗6分 4位

 昨季16本塁打を放って前期優勝に貢献した末次峰明が愛媛に移り、一発長打での得点は難しくなった。実戦不足もあって、ここまでの4試合で7得点と打線のつながりには課題が残る。新4番にはパワーのある田中宏明(NAGOYA23)が座り、ベテランの根鈴雄次も健在。カギを握るのは脇を固める陽耀華(元福岡)、大西正剛(元高知)ら移籍組だろう。また東北楽天入りした松井宏次の後釜として獲得した渡辺裕起(九州産業大)も守備は安定している。高卒の野澤潤一郎(創造学園大付属高)はリストが強く、「西武・中島をほうふつとさせる」(古屋剛コーチ)打撃がウリ。当面は体力強化を優先させるが、今後が楽しみな選手だ。

 投手陣は20歳の土田瑞起を先発に固定。NPBスカウト陣にアピールする。高卒3年目で緩急をつかった投球術も身につけ、上を目指す下地はできあがった。酒井大介との2枚看板で先発陣の柱となるだろう。抑えには昨季まで千葉ロッテにいた小林憲幸が3シーズンぶりにアイランドリーグに戻ってきた。短いイニングで改めて自慢の速球を披露し、復帰への足掛かりを築きたい。

香川オリーブガイナーズ
★09年成績
前期 21勝16敗3分 2位
後期 20勝15敗5分 2位

 リーグ4連覇を逃した昨オフ、かつてない大型補強を敢行した。福岡から救済ドラフトで4番の中村真崇を獲得。また元オリックスの前川勝彦、元東京ヤクルトの伊藤秀範、元巨人の加登脇卓真と元NPB選手が続々と入団した。野手で開幕から光っているのは、大原淳也(アークバリアトリームクラブ)。まだ3試合ながら5盗塁と走りまわっている。昨季の盗塁王(41個)・笠井要一も課題の打撃が改善され、今季はより出塁が増えそう。となれば、6年目に突入する智勝、洋輔ら中軸は実績充分で他球団は攻撃を封じるのに苦労しそうだ。

 投手陣では元NPB組を差し置いて、高尾健太が開幕投手を務め、軸になる。「オープン戦から投球が安定している」と西田真二監督も成長を認めており、横浜に入団した福田岳洋に続くドラフト指名を目指す。ここに前川と、関西独立リーグの紀州レンジャーズからやってきた宇高直志が先発として加わる形だ。韓国プロ野球で活躍したキム・ギョンテはナックルボールの使い手。中継ぎで打者を翻弄する。香川からNPB入りした伊藤、深沢和帆(元巨人)の2人は調整が遅れ、状態はいまひとつ。早く本来の投球をみせてほしい。

愛媛マンダリンパイレーツ
★09年成績
前期 16勝14敗10分 3位
後期 15勝21敗4分 5位

「史上最強と断言できるメンバーがそろった」
 県民球団として再出発する今季、沖泰司監督は手ごたえを感じている。打線は長崎の4番・末次峰明を獲得。守備走塁に難があるとしてドラフト指名を見送られたが、開幕4試合で3盗塁と早くも“変身”をみせた。さらには関西独立リーグ・神戸からも主砲の武田陽介が入り、一昨年のリーグ首位打者・西村悟とともに長打の見込めるクリーンアップが形成できた。地元出身のパワーヒッター高田泰輔も3年目の飛躍を誓う。足のある金城直仁も神戸から補強。バランスのよい打線が組めている。

 投手陣は3年目の篠原慎平に注目だ。今季からドラフト指名の対象になることもあって、自ら背番号18への変更を申し出るなど、自覚は充分。球威あるストレートを主体としたピッチングは1年目からスカウトがマークしてきた。加えて昨季リーグ最多勝の森辰夫(元福岡)、関西独立リーグで最優秀防御率などのタイトルを獲得した左腕の岸敬祐(元大阪)と揃う先発陣は強力だ。制球力に定評のある岸は今季初登板となった4日の徳島戦で完投勝利をおさめた。抑えは2年目の能登原将が務める。現状では香川と並ぶ優勝候補だろう。

徳島インディゴソックス
★09年成績
前期 13勝23敗4分 6位
後期 12勝23敗5分 6位

 昨季は前後期とも最下位。新しいオーナーを見つけ、チームを存続させるためにも今季は結果が求められる。開幕前には単独チームで阪神2軍を下し、オリックス2軍相手でも健闘した。チーム力は決して低くない。新打順は3番に白川大輔、4番に大谷龍次と元千葉ロッテ勢が座る。早速、開幕戦では大谷がソロ、白川がサヨナラ打を放った。福岡から移籍した國信貴裕が5番に入る中軸は、ある程度計算が立つ。課題は昨季から堀江賢治監督が指摘する1、2番の出塁だろう。機動力のある1番・神谷厚毅はここまで打率4割と好調な一方、2番・関口大志は波に乗れていない。また高卒ルーキーの東弘明は各球団の監督、コーチ陣が守備の巧さを認める逸材。フィリーズ入りが白紙になった山村裕也も入団し、独立リーグから再チャレンジする。

 投手陣は初年度から3年間在籍した角野雅俊(元福岡)の復帰が大きい。福岡では抑えを任されていたが、今季は再び先発で勝負する。ここへ昨季は抑えだった竹原俊介が先発に回り、ルーキー左腕の岩崎雄也(広島鯉城クラブ)とともにローテーションを回す形だ。新守護神は弦本悠希。20歳の右腕はストレートに威力があり、抑えに適している。チームの躍進には昨季5勝7敗だった光安祐輝、同2勝10敗の大川学史ら悔しい思いを味わった選手たちの奮起も求められる。

(石田洋之)