近畿圏を拠点とする独立リーグである関西独立リーグ、ジャパン・フューチャーリーグ(JFBL)がそれぞれ開幕を迎えた。もともとは昨年発足した関西独立リーグが球団数を拡張していく予定だったが、旧運営会社の撤退や経営難などで方針が分かれ、三重スリーアローズと大阪ゴールドビリケーンズがリーグを脱退。新たにJFBLを立ち上げた。関西独立リーグも韓国人選手を中心とするコリア・ヘチを新球団に迎えて昨季と同じ4球団制を維持したが、リーグの目玉となっていた女子選手の吉田えり(元神戸9クルーズ)は退団し、米独立リーグ挑戦のため合意していた三重への入団もなくなった。現状では両リーグとも開幕からの観客動員は決して芳しくない。野球では阪神の人気が根強い土壌で、いかに草の根から認知度を高めていくかが大きな課題となっている。各球団の横顔を紹介したい。
神戸9クルーズ
★09年成績
前期 16勝14敗6分 2位
後期 14勝19敗3分 3位

 開幕6試合を終えて4勝2敗と好調な滑り出し。元阪神の池内豊新監督の下、2月から合同自主トレを行っており、チームの完成度では先行している。なんといっても一昨年の四国・九州アイランドリーグ最多勝男、エース西川徹哉の存在は大きい。ここまで3試合に先発して2勝と安定している。また9日の紀州戦で1安打完封勝利をあげた今村圭佑(福岡経済大)も新加入でおもしろい存在だ。また明石で7勝をあげた福泉敬大も移籍しており、投手陣のコマは揃っている。また武田陽介ら大砲が抜けた打線では、BCリーグ・石川に所属していた大久保諭らが中軸に座る。今季チーム第1号アーチを放った李秀範もパンチ力がある。

明石レッドソルジャーズ
★09年成績
前期 14勝20敗2分 4位
後期 18勝16敗2分 2位

 昨季は6名の独立リーグ経験者が在籍したが、今季は「新たな選手を発掘するほうが楽しみ」(北川公一監督)との方針の下、他リーグからの受け入れを極力抑えた。エースを任されるのは百合翔吾。指揮官が「チーム内でNPBに一番近い」と期待する右腕で、昨季はリーグ最多の13勝をあげた。また島後翔太(大阪学院大)、卜部哲郎(大阪体育大)の新人2投手も右の本格派で球に力がある。抑えは昨季、アイランドリーグ・香川でプレーした佐藤大介。野手では助っ人の新4番・ランデル・ジェフリーが開幕から当たっている。4日の紀州戦では3安打2打点の活躍をみせた。続く5番の小川雄大も6試合で5割近いアベレージを残している。  

紀州レンジャーズ
★09年成績
前期 17勝17敗2分 3位
後期 13勝20敗3分 4位

 球団代表を務めていた石井毅氏(元西武)が新監督に就任し、チームの陣容は一変した。宇高直志(アイランドリーグ・香川)、徳田将至、蛇澤敦とチームの軸だった投手がすべて退団。中心となるのは神戸から移籍した左腕の北岡紘行だ。ここまで3試合に先発し、いずれも2失点以内に抑える内容をみせている。また元BCリーグ・石川の滝口和眞、元アイランドリーグ・高知の川本裕貴と独立リーグ経験のある左腕が多い点も特徴だ。投手力を補う攻撃陣には、河埜敬幸コーチが「期待の成長株」と評していた太田智之が楽しみ。11日の明石戦では逆転2ランを放って、勝利に貢献した。智弁和歌山高時代に甲子園でも活躍した嶋田好高、芳岡弘泰と昨季からの残留組が目立つ。当面は打線でカバーする野球を試みたいところだ。

コリア・ヘチ
★新規参入

 韓国人と在日コリアンによって構成された新球団にとっての懸念材料は、実戦形式の練習が不足していたこと。韓国が例年以上の寒波に見舞われたためで、来日してからチームづくりが急ピッチで進められた。オープン戦こそ好成績だったが、公式戦に入るといきなり3連敗を喫し、ここまでは2勝4敗だ。「他チームと比べて互角以上」と田中実コーチは語っていた投手陣は宋ボラムが先発の柱になりそう。元サムスン・ライオンズの金亨根、元LGツインズの洪大山の投球にも注目したい。攻撃陣では同じく韓国プロ野球で活躍した孫智煥がいきなり爆発した。開幕戦から2試合連続アーチを放ち、格の違いをみせている。韓国野球といえば豪快なイメージが強いものの、監督、コーチが目指しているのはスモールベースボール。日韓混合スタイルで一気に頂点を狙う。

【ジャパン・フューチャーベースボールリーグ】

大阪ゴールドビリケーンズ
★09年成績(関西独立リーグ)
前期 19勝15敗2分 1位
後期 22勝12敗2分 1位 

 昨季は前後期制覇して関西独立リーグの初代王者に輝いた。だが、JFBLに移った今季はまだ2試合ながら白星に恵まれていない。投手陣は最優秀防御率などのタイトルを獲得した左腕の岸敬祐(アイランドリーグ・愛媛)が抜けた。その代役として先発に転向したのが、BCリーグ・富山時代から抑えを任されていた小園司だ。抑えには昨季20セーブをマークした遠上賢一がいるだけに、先発陣の確立がひとつのポイントになりそうだ。野手では明石から来た田中克誠が村上隆行監督の下、下半身を使った打撃を身につけ、長打力に磨きをかけている。開幕戦では早速、一発を放って結果を出した。4番・藤本祐樹、5番・平松陽介の中軸も昨季に続いて健在だ。投打の歯車がかみ合えば、交流戦で対戦するアイランドリーグ勢にとっても厄介な相手となるだろう。

三重スリーアローズ
★新規参入

 リーグ開幕戦で大阪を破り、さらには交流戦でアイランドリーグ・長崎を下すなど、ここまでは2勝1敗。新球団で実力が未知数だったが、チーム力は高そうだ。チームの2勝に貢献したのは、いずれも左腕の洪成溶。10日の長崎戦では8回無失点の好投をみせた。昨季は神戸にいた大島崇仁が試合を締めくくるパターンに持ち込めば勝率は高まる。また高卒ルーキー右腕の村上和也(学法石川高)も将来性がある。攻撃では駒大苫小牧高で全国制覇の経験を持つ桑島優がトップバッター。20歳の美濃一平が若き主砲だ。酒田南高時代に1年生ながら甲子園でホームランを放ったパワーは必見。その脇を川咲勇司(元明石)、奥本優也(元大阪)の関西独立リーグからの移籍組が固め、オーダーも確立されている。   

(石田洋之)