24日、キリンチャレンジカップが埼玉スタジアム2002で行なわれ、日本代表は韓国代表と対戦した。日本は4−2−3−1の布陣で試合に臨んだが、前半6分パク・チソン(マンチェスター・ユナイテッド)にミドルシュートを決められ、いきなり追いかける展開となる。後半は一進一退の攻防が続くも、両者得点をあげることはできない。このままタイムアップかと思われた後半44分、PA内で楢崎正剛(名古屋)がパク・チュヨン(ASモナコ)を倒しPKを献上。これをパク自ら落ち着いて決め0対2で終了。日本は2月の東アジア選手権に続きライバルに完敗し、W杯本大会に向け不安は増幅するばかりだ。

 攻め手なく、宿敵に連敗(埼玉)
日本代表 0−2 韓国代表
【得点】
[韓] パク・チソン(6分)、パク・チュヨン(90+1分)
 南アフリカW杯開幕まで3週間と迫った、岡田武史監督率いる日本代表は国内壮行試合として韓国代表と対戦した。今年2月に国立競技場で1対3と完敗した相手に、どのようなゲームを展開するのか。5万人以上を収容する埼玉スタジアムのチケットは数日前に完売。多くのサポーターが現在の日本の実力を知ろうとスタジアムに集まった。

 日本はDFラインの田中マルクス闘莉王(名古屋)と内田篤人(鹿島)を欠き、センターバックには中澤佑二(横浜FM)と阿部勇樹(浦和)、左サイドに今野泰幸(F東京)、右サイドに長友佑都(F東京)を配置した。また、中盤のトップ下には本田圭佑(CSKAモスクワ)が入り、中村俊輔(横浜FM)が右サイドハーフに入った。

 立ち上がり早々の前半6分、いきなり試合が動いた。中盤で日本のクリアしたボールを拾ったパク・チソンがゴールに向かって猛然とドリブルを開始する。長谷部誠(ヴォルフスブルク)らがチェックするものの、欧州を代表する強豪、マンチェスター・ユナイテッドでもまれる韓国の主将はビクともしない。そのまま一人でPA付近まで持ち込み右足を振りぬく。低い弾道で放たれたシュートは楢崎の手元をすりぬけゴール左隅に吸い込まれた。まさにワールドクラスの強烈な一撃をお見舞いされ、日本は序盤から追いかける展開となる。試合後、岡田監督は「前半は0対0で折り返すプランだった。前半は守って、後半に攻めるつもりでいた」と口にしたが、いきなりの先制パンチをもらいチームに小さくない動揺が走った。

 日本がいい攻めを見せたのは21分。今野がセンターライン付近でボールを奪うと、すぐさま左サイドを駆け上がる大久保嘉人(神戸)へとパスを出す。大久保はドリブルで韓国陣内に侵入し右足でシュート。ボールは惜しくもゴール右に逸れたが、パク・チソンの先制弾と同じような形でゴールの可能性を感じさせた。しかし、日本が見せ場を作ったのは、前半45分でこの場面のみ。“前半は守る”というプランだったこともあるのか、日本選手はボールを持っても前に向かう動きが極端に少なかった。前方へドリブルする場面は大久保のワンプレー以外にはほとんどなく、ゴール前にくさびのパスが入ることもなかった。ボールを受けても後方へパスを繋ぐばかり。しかもそれらの消極的なパスが高い位置でプレスをかける韓国の包囲網にかかり、逆にピンチを招く場面が目立った。

 一方、韓国は“ボールを奪ったらとにかく前に行く”という意識が徹底されていた。パク・チソンの先制シーンは、まさにそうした意識の賜物だった。W杯本大会ではB組という厳しいグループに入った韓国。手数の少ないカウンターサッカーを目指しているのだろう。同組のアルゼンチン、ナイジェリア、ギリシャはいずれも強国で、日本がE組で置かれている状況と似ている。出来る限り高い位置でプレスをかけ、時間を費やさずシンプルにゴールへ向かう−−。実力が上の相手と対戦する時に考えられる最善の策でW杯に挑もうとしている。

 後半に入ると、試合は膠着した。日本ベンチが動いたのは後半17分。中村俊に替え森本貴幸(カターニャ)を投入する。森本をワントップに据え、岡崎を左サイドに置く布陣となった。森本と岡崎がPA内でゴールへ向かうと攻撃にリズムが生まれ、少しずつチャンスを作っていく。31分には右サイドのスローインから森本がボールを受けると強力なシュートを放つ。シュートはGKの正面をつきゴールはならなかったが、森本のゴールへの姿勢は冴えない動きの攻撃陣の中で目を引いた。

 中村憲剛(川崎F)、駒野友一(磐田)、矢野貴章(新潟)と、残り20分の時点から立て続けに交代のカードを切ったものの、決定機を作るにはいたらず時間の経過とともに1点の重みが強くのしかかってくる。残り5分を切ると両サイドバックも攻撃に参加し完全に前がかりとなった。“ホームで2試合連続で韓国に敗れるわけにはいかない”。選手の強い焦りがひしひしと感じられた。しかし、ゴールを生むための効果的な策がベンチから講じられることはなく、後半ロスタイムには悪夢が待っていた。

 センターライン付近でボールを奪われると、パク・チュヨンがラストパスを受けPA内に侵入する。ドリブルを阻止しようと前へ飛び出した楢崎をかわすため、パクは左サイドへ開く。そこでたまらず楢崎がパクを倒すと判定はPK。これをパクが自分で落ち着いてゴール左に決め、試合を決定づける2点目が韓国に入った。

 W杯壮行試合として行われた試合で、ライバルを相手に2対0の完敗。試合後、岡田監督は「1年間で(韓国に)2回負けることは申し訳ない。責任を感じる」とサポーターへ謝罪。さらに「(犬飼基昭JFA)会長に“(監督を)続けていいのですか?”と訊ねたら、“やれ”と言われた」と話し、進退伺を出したことも明らかにした。「それでも我々は目標のために前に進むしかない」。岡田監督は力なくこう話すのが精いっぱいだった。

 日本代表の実力は世界ランク49位の隣国に連敗した。これは偽りのない事実だ。南アW杯グループリーグE組の中でも最低評価の国である。これらの事実を素直に受け入れ、今からでも出来るなんらかの施策を考えなければならない。まずは謙虚に自分たちの立場、分をわきまえることから始めることだ。日本はどの国と戦っても挑戦者である。W杯ベスト4など口にするのもおこがましい。もはやグループリーグ突破を目標にすることすら現実的とは思えない。岡田ジャパンはまず、地元開催以外での初勝利を目指すべきだ。“世界を驚かす”などと気負う必要はない。まずカメルーン、オランダ、デンマークに対してまともなサッカーをできる方法を考えるしかない。そうでなければ、3戦連続で大敗を喫する可能性すらある。時間は待ってくれない。あと3週間、日本がどこまで立ち直ることができるのか。今後の日本サッカー界を占う意味でも、非常に大切な3週間となるだろう。

(大山暁生)

<日本代表出場メンバー>

GK
楢崎正剛
DF
中澤佑二
阿部勇樹
長友佑都
今野泰幸
MF
遠藤保仁
→駒野友一(78分)
長谷部誠
中村俊輔
→森本貴幸(62分)
大久保嘉人
→矢野貴章(86分)
本田圭佑
→中村憲剛(71分)
FW
岡崎慎司