「K-1 WORLD MAX2010」が5日、東京・代々木第一体育館で行われ、63キロ以下のライト級の選手を対象にした「−63kg Japan Tournament FINAL」と、ミドル級の「−70? World Championship Tournament FINAL16」のうち3試合が実施された。今回から新設された63キロ級の決勝トーナメントでは、“豪腕ペンキ職人”大和哲也(大和ジム)が準々決勝からの3試合をすべてKO勝利で飾り、日本人最激戦区と呼ばれるライト級で初代王者に輝いた。またミドル級トーナメントでは3月に日本王者となった長島☆自演乙☆雄一郎(魁塾)が判定でアンドレ・ジダ(ブラジル)を下し、初のベスト8入り。10月に予定されている決勝トーナメントにコマを進めた。
(写真:ダウンの応酬で熱戦となった大和(左)と久保の決勝)
 決勝トーナメント7試合中5試合がKO。初のライト級トーナメントは見ごたえ充分だった。
 特に決勝は、激戦続きの大会のラストにふさわしかった。大和哲也と久保優太(アンリミテッドジム)。22歳の同級生対決だ。ともに準決勝は強敵をKOで沈め、初代日本王者を決める闘いへと勝ち進んだ。先手をとったのは久保だ。準決勝では松本芳道(八景ジム)を鮮やかな左ハイキックで倒した。その再現を狙おうと、足を蹴りあげ、拳を繰り出す。1R中盤、連打の末に左ストレートが大和のアゴに炸裂。ダウンを奪った。

「ペンキをこぼしちゃいましたね(苦笑)」
 普段は愛知でペンキ職人として働く大和は攻めるしかない。「殴り合います」。インタバールでそうセコンドに告げて、2Rの闘いに打って出た。一方、ポイントでリードを奪った久保も距離をとって勝ちにいく作戦はとらなかった。
「判定で逃げても観客の心はつかめない。倒しに行こうと思った」
 一歩も引かない攻防は、徐々に大和の左フックが久保の顔面をとらえ始める。このラウンド、ジャッジは3者とも大和を支持。勝負の行方は全くわからなくなった。
(写真:「疲労感があるから、とった実感も強い」と笑顔の大和)

 果たして最終ラウンドは激しい打ち合いになった。「大和選手はパンチが強かった」。久保がそう振り返ったように、大和は準々決勝、準決勝ともに左フックで相手をマットに横たわらせてきた。その強打がとうとう久保にクリーンヒット。甘いマスクがゆがみ、仰向けに倒される。だが、久保はそれでも立ち上がり、前に出た。大和の顔面からは血が流れる。「最後は倒したい。ヒーローになりたいと思った」。気力と気力のぶつかりあいは壮絶なラストシーンを迎える。久保の右と大和の左が相打ち気味に入り、久保がマットにゆっくりと倒れた。

「みんな強かった。他の選手が勝ちあがってきてもハードだったと思う。その中で全部KOで勝てたことは、自分にとっても63キロ級にとっても収穫だった」
 初代王者は充実感たっぷりにトーナメントを振り返った。一方、あと一歩で優勝を逃した敗者は時折、笑顔をみせつつも「チャンピオンになることしか考えていなかった絶望的な気分です」と肩を落とした。無残なコントラストがついた両者だが、その闘いぶりはK-1の新時代を開いたのではないか。
(写真:「あんなに派手に倒されると思わなかった」。トレードマークのスマイルも痛々しい久保)

 スピードはあるものの迫力に欠けると言われたライト級戦線。5月の「1st Round」では判定決着が続出し、関係者の反応は決して良くなかった。だか、今大会で評価は一変。谷川貞治イベントプロデューサーは「海外のプロモーターも絶賛している。来年は世界大会をしたい」と明言した。

「(会場は)盛り上がっていましたよね? 1人でも僕の名前を覚えてくれて、記憶に残ってくれれば、それが僕の色になる」
 大和はペンキ職人らしいセリフを残した。この階級はトーナメント不参加だったHIROYA(フリー)など日本人だけでも強烈な“色”を持つファイターが多い。ルックスのよい選手も多いため、人気が高まれば会場も華やぐだろう。魔裟斗の引退後、目玉不足だったK-1界に新たな彩りが加わりそうだ。

 各試合の結果は以下の通り。

<オープニングファイト> ※63キロ級日本トーナメント第3リザーブファイト
〇谷山俊樹(谷山ジム)
3R判定 3−0
×麻原将平(シルバーアックス)

<オープニングファイト>
〇小宮由紀博(スクランブル渋谷)
3R判定 3−0
×タヒール・メンチチ(コソボ共和国/チーム・スーパープロ)

<オープニングファイト> ※63キロ級日本トーナメント第2リザーブファイト
〇卜部功也(チームドラゴン)
3R判定 3−0
ד狂拳”竹内 裕二(菅原道場)

<第1試合> ※63キロ級日本トーナメント準々決勝
〇松本芳道(八景ジム)
3R2分45秒 TKO(レフェリーストップ)
×上松大輔(チームドラゴン)

<第2試合> ※63キロ級日本トーナメント準々決勝
〇久保優太(アンリミテッドジム)
3R判定 3−0
×尾崎圭司(チームドラゴン)

<第3試合> ※63キロ級日本トーナメント準々決勝
〇才賀紀左衛門(大誠塾)
3R判定 3−0
×石川直生(青春塾)

<第4試合> ※63キロ級日本トーナメント準々決勝
〇大和哲也(大和ジム)
1R 3分3秒 KO
×裕樹(リアルディール)

<第5試合> ※63キロ級日本トーナメント第1リザーブファイト
〇宮田和幸(BRAVE)
3R判定 3−0
×渡辺一久(フリー)

<第6試合> ※70キロ級世界トーナメントFINAL16
〇長島☆自演乙☆雄一郎(魁塾)
3R判定 2−0
×アンドレ・ジダ(ブラジル/ユニバーシダデ・ダ・ルタ)
(写真:試合中に相手のパンチで鼓膜が破れるアクシデントも、コスプレダンサーの登場に興奮する自演乙)

<第7試合> ※70キロ級世界トーナメントFINAL16
〇佐藤嘉洋(名古屋JKファクトリー)
3R判定 2−0
×山本優弥(青春塾)

<第8試合> ※63キロ級日本トーナメント準決勝
〇久保優太
1R1分21秒 KO
×松本芳道

<第9試合> ※63キロ級日本トーナメント準決勝
〇大和哲也
2R2分13秒 KO
×才賀紀左衛門

<第10試合> ※70キロ級世界トーナメントFINAL16
〇アルバート・クラウス(オランダ/チーム・スーパープロ)
3R判定 3−0
×中島弘貴(バンゲリングベイ・スピリット)
(写真:中島(左)は1R、クラウスのハイキックにダウンを喫す)

<第11試合> ※63キロ級日本トーナメント決勝
〇大和哲也
3R1分26秒 KO
×久保優太