ブライアン・バリントンは「1イニングで7つ、アウトを取る状況では……」と振り返ったそうだ。心中、察するにあまりある。

 快進撃じゃ、優勝じゃ、と開幕から絶好調のカープだが、やはり、この試合のことは書きとめておきたい。4月5日の対横浜DeNA戦である。

 3-0とリードして迎えた4回表、横浜の攻撃。先頭打者トニ・ブランコはショートゴロ。これを梵英心がエラー。打球に頭からおおいかぶさるような、ぶざまなトンネルだった。

 続く筒香嘉智はサードゴロ。ちょっとはねたが堂林翔太はよく捕った。セカンド送球。これが悪送球のエラーとなって無死一、二塁。

 アーロム・バルディリスがライト前タイムリーで3-1。無死一、三塁となって、多村仁志が犠牲フライ。3-2。

 さらに黒羽根利規が三遊間を割って1死一、二塁。投手の井納翔一はバント失敗で2死一、二塁。1番に戻って石川雄洋が右中間三塁打で3-4と逆転された。なおも2死三塁。

 続く山崎憲晴、ショートゴロ。やっとチェンジかと思ったら、これがセンター前ヒット。3-5となって、2死一塁。

 次打者は梶谷隆幸。カウント1-2から捕手・石原慶幸はウエスト。山崎スタート。ところが石原は捕球でお手玉して投げられず、2死二塁に。

 で、梶谷は鈍い当たりのサードゴロ。今度こそチェンジかと思ったら、前進して捕球した堂林の送球がそれて、一塁セーフ。内野安打。3-6。試合は、この6失点が響いて6-9で負けた。

 記録上のエラーは最初の梵と堂林の2つのみである。しかし、バリントンは山崎のセンター前も、梶谷のサード内野安打もアウトにできたと感じた。つまり1イニングにエラーが4つ。それに3アウトを足して「7つのアウト」と言ったわけだ(石原のお手玉も加えて8つといいたくなるが)。

 この日は雨で、グラウンドは水を含んでいた。梵のひとつめは、打球が沈むようにイレギュラーしたように見えた。翌日のテレビ番組「サンデーモーニング」(TBS系)に出演した高橋慶彦さんは、「グラブが上から出ているから、沈むイレギュラーに対応できない」として、「喝!」を入れていた。

 むしろ、ふたつめのほうがひっかかる。たしかに飛んだコースはセンター前である。ただし、打球は速くない。梵も打球のコースに追いついているように見える。

 しかし、いかにも腰高で、打球はグラブの下を抜けていった。膝に故障をかかえている、と言われているが、本来は名手の部類に入る遊撃手だけに、率直に、さびしい。

 堂林の送球の不確実性は、わかっていたことである。捕ってから投げるまでに無駄と思われる動作が入るし、やや横から投げるため、送球は弱く、不安定だ。内野を続けるなら、修正すべきなのではあるまいか。

 翌6日の前田健太が先発した試合では、野村謙二郎監督は、梵、堂林をはずして、木村昇吾、田中広輔の三遊間にした。さすがに腹にすえかねたのかなと、私のような俗人は、つい邪推してしまう。

 しかも2回表、無死一、三塁のピンチでマエケンは2つ連続してサードゴロを打たせ、田中の好守(本塁封殺と、5-5-3のダブルプレー)でしのいでいる。堂林に、あれができただろうか、とつい懐疑的に考えてしまうのは、私が生来、品性下劣だからだろうか。。

 言うまでもなく、梵、堂林は2試合連続でサヨナラホームランを放った開幕ダッシュの立役者である。野球は打って点を取らない限り勝てない。優勝するために、彼らの打力は不可欠である。

 8日の巨人戦、9回表に堂林がスコット・マシソンから放った右中間への大きなダメ押し2ランを見ると、彼は今季、かなりの長打が期待できることがわかる。

 最後にもうひとつ。篠田純平が見違えるほどよくなっていた。上体がぶれなくなり、ボールに力がある。なにしろ右投手だらけの投手陣にあって、左の先発要員のメドが立ったことは優勝をめざすためには、きわめて大きな武器になる。

「優勝しましょう」――マエケンや菊池涼介のヒーローインタビューの尻馬にのって、私もそう叫びたい。

 三遊間は、そのための大きな関門として、立ちはだかっている。問題を、守備を取るか打撃を取るか、という二者択一で片付けるわけにはいかない。打力と守備力をいかに併用・両立させるのか。野村監督の手腕にかかっている。

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)
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