ストライク、ボールの判定で監督が主審にクレームをつけるのは余程のことだ。カープ・野村謙二郎監督は腹に据えかねたのだろう。

 1日の東京ヤクルト戦。4対2とカープがリード。6回裏2死一、二塁の場面だ。バッター堂林翔太に1-1のカウントからヤクルトのサウスポー久古健太郎が投じたボールは明らかに低かった。

 その場面を私はテレビで観ていたが、「これはありえない」と思った。誤審の範囲を超えていた。

 監督や選手に聞くと、どんなにいい審判でも「1試合に4、5球はストライク、ボールに関する間違いがある」という。

 いわば、そうした“誤審”も野球の一部であり、重要な場面を除き、監督やコーチがいちいち目くじらを立てることはない。

 しかし、先の判定は度を過ぎていた。ボールひとつどころか、ふたつは外れていた。一番驚いたのは堂林だろう。

 指揮官が主審に詰め寄ったのは、この直後だった。選手の士気を高めるためにも、黙っているわけにはいかない。止むに止まれぬ思いが、指揮官をして主審に向かわせたのだろう。

 そのシーンを見て、指揮官の今季にかける思いが伝わってきた。選手との一体感を感じることもできた。その後、打線がつながり、3点をあげてホーム開幕戦の勝利を決定づけた。今季のカープはダークホース以上の存在であることを確信した。

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)
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