今年のキャンプは、なんといっても大瀬良の評判に尽きるようだ。No.1ルーキーの看板にいつわりなし、と多くの評論家が絶賛しておられる。

 ボールに角度がある、力がある、コントロールがある。いいことづくめ。報道によると、フリー打撃で対戦した庄司隼人は「きれいな真っすぐの回転ではなく、らせん形の球」と証言した。肝心の「らせん形」のところの表現が新聞によって微妙に違っており、もちろん私は、その発言の場にいなかったので、一言一句、正確に何と表現したのかは分からない。

 ただ、ボール自体がらせん形をしている、というのはありえないから、「らせん形の回転をしながら進んでくるボール」に見えた、ということだろう。

 とすれば、俗に言う「ジャイロボール」ではないか。要するに球形のボールであるにもかかわらず、ラグビーやアメリカンフットボールの楕円形のボールを遠投したときのように(上回転や下回転ではなく)、くるくる横に回転しながら進んでくるボールのことだ。
 
 そもそも野球のボールでジャイロがありえるか、ということから議論があるようだが(私は物理学はまったくわからない)、ともあれ、庄司は感覚的にはそう体感したわけだ。ますます話題沸騰、けっこうなことである。

 ただ、大瀬良のド派手な話題より、扱いの小さなニュースをチェックしておきたい。

 まず、堂林翔太。2月8日に野村謙二郎監督から「フルスイングしろ」と直々に説教された。9日の紅白戦では、今村猛から二塁打。しかし、10日に休日返上でフォーム修正のマシン打撃。

 もうひとりは、栗原健太。同じく9日の紅白戦で3打数2安打、二塁打2本。戸田隆矢と小野淳平から打った。三塁の守備も再挑戦。これは一塁がキラ・カアイフエとダブるからでしょうね。といっても、三塁は堂林とダブるけど。

 いずれにしても、この2人が今年の打線のカギを握っているといっても過言ではない。堂林に関しては、いろんな人がいろんなアドバイスをして、頭が混乱するのが一番こわい。

 極論をいえば、引退前に前田智徳から4時間説教された内容だけを信じて取り組めば、いいのではないだろうか。野村監督は、スタメンに抜擢したときから、いつもフルスイングしろと言っているような印象がある。バッティング技術を語るなら、野村よりも前田でしょう。

 堂林に大切なのは、取り組むべき課題を整理すること、そして前田を信じることだ。

 栗原については、とにかくヒジの故障から混乱に陥ってしまった自らの打撃を、どう取り戻すか。こちらはよけいな恐怖心とか不安を、いかに振り払うかが課題だろう。堂林とは裏腹に、それこそフルスイングすることが、活路を開くのではないか。

 大瀬良が何勝するかは、現時点では予想できない。それでもカープ投手陣は他球団と比べても充実している(大竹寛の人的補償で来た一岡竜司もローテーションに入ったりして……)。
 
 あとは、打線がいかに爆発するかでペナントレースが決まる。本当に優勝するためには、年間を通じて、常に2,3人は、好調な打者がいるという打線の状態を維持したい。そのためには、キラと丸佳浩だけでは足りない。鈴木誠也の急成長と、堂林、栗原の「がけっぷちコンビ」の復活が不可欠である。

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)

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