二宮: 2月はプロ野球の各球団が沖縄でキャンプを張っています。今年は日本の10球団をはじめ、韓国からも6球団が沖縄に集まり、開幕に向けた準備を進めます。日本一連覇を狙う東北楽天も1軍は13日まで久米島、15日からは金武町で練習を行う予定です。美馬投手は今季でプロ4年目ですが、久米島の環境はいかがですか。
美馬: 野球に集中できるので、とてもいいところですね。気候も温暖ですし、1年のスタートを切るにはいい場所だと思います。

二宮: 毎年、訪れていると、島民との結びつきも強くなるのでは?
美馬: そうですね。食事に行くところの店員さんとも顔見知りになりますし、皆が知り合いのような感覚になります。ホテルの従業員さんとも親しくなりましたよ。

 バーデハウスで疲れを癒す

二宮: ハードな練習を終えた後の食事も楽しみでしょう。
美馬: ホテルで用意していただける食事は本当においしいです。もずくや海ぶどう、ソーメンチャンプルもよく食べます。久米島は車えびが特産で、選手たちは皆、「おいしい」と言って食べていますね。キャンプ期間中にホテルのテラスでバーベキューをすることもあって、その時は少しお酒を飲んだりもします。久米島のキャンプ中はあまり休日もないので、それがいい気分転換になりますね。

二宮: 久米島でのお気に入りスポットは?
美馬: バーデハウスという海洋深層水を使ったスパ施設にはよく行っています。温水プールや、海が見えるお風呂にジャグジーもあって疲れた体を癒すにはちょうどいい場所です。それから何といっても久米島は海がきれい。見ているだけで気持ちがいいですね。

二宮: 新人選手は休日に島内観光をするのが恒例です。美馬さんも1年目に参加したでしょうが、思い出に残っていることは?
美馬: 久米仙をつくる工場に行ったのが楽しかったですね。久米仙はもちろん、つくりたての梅酒がおいしくて何杯もおかわりしてしまいました(笑)。

二宮: 球場の施設面はいかがですか。
美馬: 必要なものは全部揃っていて、ウェイトトレーニングの器材などは球団からもキャンプ地に運びますから足りないものはないですね。受け入れ態勢もしっかりしていますから、島に行けば、すぐに練習にとりかかれます。

二宮: 1軍は空港から近い久米島野球場、2軍は仲里野球場で練習をしています。
美馬: 1軍の球場には報道陣や観客の方がたくさん来るのですが、2軍は滅多に人が来ません。誰が来たら、すぐに分かるくらい。だから、ぜひ時間があれば2軍の球場にも足を運んでいただけるとうれしいですね。

二宮: 昨年は日本シリーズで2勝をあげてMVP。チームも初の日本一になって最高のシーズンになりましたね。
美馬: 最後の最後で怒涛のようにいいことが重なりました(笑)。シーズン中は全く良くなかったのですが……。

二宮: 第3戦では先発して6回途中無失点。日本一を決める第7戦でも6回をわずか1安打に抑える好投でした。強力巨人打線相手に素晴らしい内容でしたね。
美馬: カーブがカウント球でも、決め球でもうまく使えたのが良かったです。ストライク先行で行けたので、巨人のバッターが打たなきゃとの意識が強くなったのもあるのでしょう。うまくこちらのペースにうまく持ってこられた気がします。

 開き直った第7戦先発

二宮: 楽天が3勝2敗と王手をかけた第6戦はレギュラーシーズン、ポストシーズンともに無敗の田中将大が先発でした。まさか、自分が第7戦で投げることになるとは思わなかったのでは?
美馬: はい。佐藤義則投手コーチからは「6戦で終わると思うけど、一応、7戦で用意してくれ」と言われていました。僕も「たぶん投げることはないと思いますけど、準備しときます」と返事をしていたくらいです(苦笑)。第6戦はベンチに入らず、胴上げに備えて待機していました。

二宮: ところが田中投手が中盤に逆転を許し、敗戦投手に。3勝3敗で第7戦が行われることになりました。
美馬: 思ってもみない展開だったので、ひとりソワソワしていましたね。いざ明日があるとなると、「なんか体が張っているな」と思い始めたり……(笑)。ただ、いくら考えても仕方がないので、あまりプレッシャーを背負わないようにしてマウンドに上がりました。

二宮: とはいえ、勝つか負けるかで日本一の行方が決まる大一番。マウンド上では足が震えたりしませんでしたか。
美馬: 正直、マウンドでは開き直っていましたね。巨人は田中を倒して勢いに乗っている。僕が抑えるなんて誰も期待していないだろうと(笑)。だから意外と普段通り気楽に投げられました。

二宮: 結果は6回まで巨人打線を0点に抑えました。シリーズではバッテリーを組んだ嶋基宏捕手のリードも光っていましたね。
美馬: 第3戦でカーブをよく使ったので、第7戦の序盤はストレートやシュートを主体にして組み立てを変えていました。特に嶋さんと配球について打ち合わせをしたわけではないのですが、巨人打線の各バッターの様子を見て、いいリードをしてもらったと感じています。巨人のバッターがフルスイングをしてくる場面が少なかったので、それだけ狙い球が絞れなかったのでしょう。

二宮: 強力な巨人打線を相手にする上で気をつけた点は?
美馬: シリーズの時は調子のいいバッターと悪いバッターが分かれていたので、結果の出ていない選手を目覚めさせないように注意しました。好調なバッターには少々打たれても仕方ないし、長打を浴びるくらいなら四球でもOKという気持ちで投げていましたね。

二宮: 6回を投げ切って降板しましたが、打たれたヒットはたった1本。まだ投げたいという気持ちもあったのでは?
美馬: いや、6回で交代しても妙な安心感がありましたね。少なくとも日本シリーズの第7戦というピリピリした雰囲気は不思議となかったんです。マウンドを降りてもシーズン中と変わらない感じで試合を観ていました。

二宮: 星野仙一監督から何か言葉はかけられましたか。
美馬: 6回のマウンドを降りた時に、一言、「ありがとう」と声をかけていただいたんです。監督からはいつも怒られてばかりだったので、「これで僕の仕事は終わったんだな」とスーッと肩の荷が下りた気がしました。


(後編は2月20日更新予定です) 

<美馬学(みま・まなぶ)プロフィール>
 1986年9月19日、茨城県生まれ。藤代高を経て中央大時代は4年春に2部優勝に貢献してMVPを獲得。東京ガスでは抑えとして活躍し、11年に東北楽天からドラフト2位で入団する。2年目より先発に転向。3年目の昨季はレギュラーシーズンこそ6勝だったが、千葉ロッテとのクライマックスシリーズでは第3戦に先発し、4安打無失点で“プロ初完封”勝利を収める。日本シリーズでは第3戦、第7戦に先発して2勝をあげ、シリーズMVPに輝いた。身長169センチと小柄ながら、ストレート、スライダー、カーブ、シュートなどを投げ、打者を牛耳る。背番号31。


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(構成:石田洋之)
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