少し古い話になるが、今年の正月休み、広島の実家でぼんやりと、いわゆる“おせち番組”をながめていた。だから、記憶は必ずしも正確ではない(番組名も失念した。すみません)。

 出演していたのは、菊池涼介、野村祐輔、松山竜平、岩本貴裕だったと思う。それぞれの古い友人との友情物語など、心温まるエピソードで構成されていた。正月気分というのは、いいものだ。
 
 で、最後に当然ながら、今年の抱負ということになる。期せずして、それぞれから同じ言葉が出てきた。「優勝」である。今年こそは優勝したい、と口を揃えたのだ。

 プロ野球選手である以上、当たり前といえばそれまで。しかし、去年まで、本気で、真顔で「優勝」を口にする選手がカープにいただろうか。せいぜい、クライマックスシリーズ(CS)出場が関の山ではなかったか。

 これまた記憶に頼って書くのだが、梵英心も、抱負を聞かれて、今年は優勝したいと答えたという記事を読んだ。

 そして、前田健太。この人の場合は、もはや当然の発言といっていいだろう。
「もう一度、沢村賞を獲りたい。(中略)圧倒的な数字で終われればいい」
「今年に関してはカープで優勝することが目標。海外のことはシーズンが終わってから」(「スポーツニッポン」1月7日付)

 あいかわらず、高らかな目標である。この有言実行の男の言は、いつ聞いても心地いい。

 本当は去年、本気で優勝を狙うべきだった。だって、大竹寛がFA権を取得することも、前田がポスティングシステムでのメジャー移籍をめざすことも、予想はできたのだから。10勝投手が4人確実にそろうチャンスは、今年ではなくて去年の方が大きかったのだ。

 これは、CSという我が国の制度のマイナス面である。選手は本来の優勝よりも、より現実的(で安易)なCSに目標を置いてしまう。もちろん、ファンも同様である。

 だから、去年のCS出場を経て、今年、多くの選手が真顔で優勝を狙っているという今の状況はすばらしい。まぁ、これが本来の姿であるべきなのだが(くどいですか)。

 今年は10勝が計算できる投手は3人(前田、野村、ブライアン・バリントン)。大瀬良大地と九里亜蓮は投げてみないとわからない(黒田博樹は田中将大のメジャーでの成功予想を聞かれて、「こっちに来て投げてみないと分からない」と答えたという。ここは、ぜひその顰みにならいたい。田中も大瀬良も九里も、新しいリーグでは、投げてみないとわからない、というのが現時点での的確な答えだ)。

 獲らぬタヌキの皮算用をすれば、前田は18勝、大瀬良、九里、福井優也、今井啓介、中村恭平で計20勝すれば、優勝は見えてくる。

 とにかく、重要なのは、選手もファンも、本気で優勝を狙うことだ。巨人? 意外と穴だらけなんじゃないですか? と、私は思いますけど。その根拠については、またいずれ。

(このコーナーは今月に限り、二宮清純が第2、4週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第3週木曜を担当します)
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