この9月で37歳となる中日のベテラン荒木雅博の水泳トレーニングをテレビで見た。俊足で身体能力に秀でた荒木は運動神経抜群だと思っていたが、どうも泳ぎは苦手らしい。女性指導員から厳しい注文をつけられていた。

 実はプロ野球選手の中には泳ぎが苦手な者がたくさんいる。西武などで活躍した名内野手の石毛宏典は、なんとカナヅチだった。「“泳ぐと筋肉が冷える”という理由で、子供の頃から野球をやっていた子は水泳をやらせてもらえなかったんです」。頭をかきながら石毛は、そう話していた。

 私の記憶では球団が選手たちに水泳を薦めたのはカープが初めてだった気がする。1979年にスタートした湯布院の合同自主トレ、温水プールの中でのトレーニングする選手たちの姿があった。当時としては画期的な試みだった。

「水泳は全身運動。血行も良くなる。当時のピッチャーは故障が少なく、長くまで野球をやった者が多い。水泳トレーニングの効果もあったのではないか」。いつだったか、川口和久からそう聞いた。

 選手会の要望でチーム単位でのオフの合同自主トレは89年に打ち切られ、今は気の合った仲間たちと個別にトレーニングするようになった。まだ体ができていないうちはオフの運動に水泳を取り入れてもいいのではないか。湯布院でのカープの成功が、それを裏付けている。

(来週は書籍編集者・上田哲之さんが担当します)
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