カープファンの友人と「カープ歴代ベストナイン」について盛り上がった。一番、意見が割れたのがキャッチャーである。攻守両面に秀でたキャッチャーがいないのだ。

 リード面なら水沼四郎か。75年の初優勝も含め、3度のリーグ優勝と2度の日本一に貢献している。例の“江夏の21球”では、打席の石渡茂の雰囲気から「こりゃ、絶対にやりよる」とスクイズを確信し、江夏豊がボールをリリースする直前に立ち上がり、スクイズを失敗に終わらせた。彼こそは球史に残る名シーンの影の立役者である。しかし肩はさして強くなく、バッティングでも多くは期待できなかった。

 個性派という点では達川光男か。ノムさんばりの“ささやき戦術”も武器のひとつだった。83年にレギュラーになり、大野豊、北別府学、津田恒実、川口和久らをなだめたり、すかしたりしながら、投手王国を築き上げた。ベストナインにも3度、輝いている。

 バッティングなら西山秀二だろう。96年にマークした3割1分4厘という打率は、規定打席に到達したキャッチャーとしてはカープ史上最高だ。古田敦也をさしおいてベストナインにも2度選ばれている。ただ、主戦捕手として1度も優勝を経験できなかった点が、ややマイナスに響く。

 キャッチング技術なら現在のレギュラー捕手・石原慶幸がナンバーワンだろう。ただリードが単純で、他球団のスコアラーの評判も芳しくない。「一度もAクラスを経験していないキャッチャーを最強と呼ぶのはどうか!?」という声もあった。

 こう見ていくと、帯に短し、タスキに長し――。さて読者諸兄の評価は?

(このコーナーは書籍編集者・上田哲之さんと交代で毎週木曜に更新します)
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