12月2日、「FIVB(国際バレーボール連盟)バレーボールワールドカップ(W杯)2007」(男子)最終戦が、東京体育館などで行なわれた。日本は今世紀、3大大会全てにわたって優勝している世界王者のブラジルと対戦。第1セットを奪ったものの、第2セット以降はスピードとパワーのあるブラジルの攻撃を止めることができず、最終戦を白星で飾ることはできなかった。日本は3勝8敗で9位に終わった。
(写真:植田監督のもと、日本は最後まで全力で戦った)

ブラジル 3−1 日本
(23−25、25−21、25−19、25−18)
 日本にとっては何とも後味が悪く、悔しい最終戦となった――。
 第1セットからブラジルは多彩な攻撃で日本に襲いかかった。だが、日本も負けてはいなかった。石島雄介のスパイクで15−15と同点に追いつくと、山村宏太、セッターの宇佐美大輔のブロックで世界王者からリードを奪う。終盤にはブラジルに3ポイント連続を奪われるも、最後まで集中力を切らさななかった日本は、一度も追いつかれることなく、第1セットを先取した。

 だが、やはりブラジルは強かった。コートを縦横無尽に走り回り、どこからでもスパイクを打ってくる。さらには強烈なジャンプサーブで次々とポイントを奪い、第2、3セットを連取。あっという間に日本は逆転されてしまう。

 後がなくなり、背水の陣で臨んだ第4セット、日本は意地を見せた。まずは富松崇彰、越川優の同級生コンビが魅せた。富松が速攻を2本決めると、越川が得意の高速サーブで2ポイント連取。さらに越川のサーブでブラジルを崩すと、石島、山本隆弘がスパイクを決め、日本はなんとブラジルから6連続ポイントを奪った。会場のボルテージは最高潮となり、日本は完全に主導権を握る。

 ところが、7−2となったところで突然試合が中断される。実は副審が日本の第4セットのスターティングメンバーを富松ではなく、松本慶彦で申告してしまったのだ。競技の結果、規定により日本のポイントは全て失われ、逆にブラジルにサイドアウトが移ったため、0−3からの続行となった。

(写真:試合後、悔しさをにじませた越川<左>と富松)
「7、6、5、4……0」。どんどんポイントが減らされていく電光掲示板を見ながら、茫然とする選手たち。スタンドからはブーイングの嵐が吹き荒れた。植田辰哉監督は必死に「ゼロから出発だ!」と声を張り上げるほかなかった。なんとか気持ちを切り替え、巻き返しをはかろうと日本は懸命にボールを追いかけた。終盤には富松、石島のブロックや越川のサービスエースなどで5連続ポイントを奪うなど、粘りを見せた。だが、息を吹き返したブラジルの勢いを最後まで止めることができず、日本はこのセットも落としてしまった
 試合後、一様にやるせなさを隠しきれない選手たち。越川、富松の目からはとめどなく涙がこぼれていた――。

 FIVBの説明によれば、5−1の時点でFIVB側が日本のメンバーが申告と異なっていることを発見。試合を中断させようと声を張り上げたが、審判団はそれに気付くことができなかったという。

 日本に勝ったブラジルは金メダルを獲得。これで3大大会では5連覇を果たすとともに、2位・ロシア、3位・ブルガリアとともに来年の北京五輪出場権を得た。

 副審の確認ミスで起こったアクシデントにもめげず、最後まで全力で戦った日本。3勝8敗とメダルには遠くおよばなかったが、今大会で選手たちの精神力は確実に強くなっている。植田監督も「このチームは将来、必ず上に上がっていけると確信した」と語り、手応えを感じているようだ。

 男子、女子ともに今大会での北京五輪への切符獲得にはいたらず、勝負は来年5月に行なわれる世界最終予選に持ち込まれた。どちらもアジア予選が兼ねられているため、全体での順位に関係なく、アジアでNo.1になれば五輪への道が拓かれる。植田、柳本、両ジャパンの本当の戦いはこれからだ。