スタッフたちが54回目の誕生日を祝ってくれた。
小社の応接室でナベを囲んだ。これはいつもの光景だが、匂いが違った。「ウ~ン、いい匂い。これ和牛肉の肩ロースなんですよ」とH。なんとも香ばしい匂いが鼻をつく。
「やっぱりいつも食べているブタや鶏とは匂いが違いますね」とS。サラサラッと湯に浸して口に入れると、ジューシーな甘みがジワッと広がった。
聞けば、スタッフたちがお金を出し合い、高級和牛の鍋パーティーを企画したそうだ。その話を聞いて、私は不覚にも涙をこぼしてしまった。
「へ、へ、編集長。おナベに涙が……」とS。「ゴメン、感動しちゃったんだよ」と私。
「へ、へ、編集長、おナベに鼻水が……」とH。 ズルズルズルッ。涙腺と一緒に鼻の穴まで緩んでしまったようだ。
「来年はおナベではなく、別のものにしましょう」。箸の止まったHの目が怒りでメラメラ燃えているのを私は見逃さなかった。
(編集長N)
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