?とHとタクシーに乗っていた時のこと。Iが不意に言った。
「編集長の八幡浜の実家までは、松山空港からいくらくらいかかりますか?」

「どうかなぁ、2万円くらいかかるんじゃないかな」
「でも、運転手さんと交渉すればもう少し安くなるでしょう」
「ウ~ン、1万5千円くらいにはなるかもね。まぁ運転手さん次第だろうけど……」

 と、そんな話をしていたら、いきなりHが素っ頓狂な声を張り上げた。
「エーッ、愛媛ってタクシーにメーターついていないんですか?」
 その瞬間、運転手さんがプッと吹き出したのを私は見逃さなかった。

「メーターついていないわけないだろ? メーターなかったら、どうやって料金を計算するんだよ」
「でも編集長とIさん、今、運転手さんと交渉するって、言ってたじゃないですか?」
「だからメーターから、どれくらい割り引いてくれるかを交渉するんだよ。長距離の時だけだけどね」

 クククッと笑いをかみ殺していたIが、唐突にHに助け舟を出した。
「Hさんは地方でタクシーに乗ったことがないから、そう言われても分からないんですよね」

 助け舟を出してもらったにもかかわらず、バカにされたと思ったH、目を吊り上げて金切り声を発した。
「ありますよ、タクシーくらい! でも、やっぱりメーターはついてなかったんじゃないかしら……」
 いったい、いつの時代の話なのやら。

(編集長N)
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