31日、日本サッカー協会(JFA)は都内ホテルでアルベルト・ザッケローニ新監督の就任記者会見を行なった。壇上に現れたザッケローニ新監督は昨日、正式に就任の契約を結んだことを明かし、「熱意を持ってチャレンジしたい。イタリアでは下位からトップクラブまで指揮を執ってきた。さらに挑戦の場を求めていた時にチャンスが来て嬉しい」と代表監督就任の喜びを表現した。新監督は9月4日、7日のキリンチャレンジカップを視察し、一旦帰国後、就労ビザを申請し、10月8日アルゼンチン戦、12日韓国戦の指揮を執るべく再来日する。
(写真:経験豊富な指揮官はどのようなサッカーを目指すのか)
 昨日来日したザッケローニは30日中に代表監督就任の契約を済ませ、今日の記者会見に臨んだ。多くの報道陣が集まる会場に姿を見せた新指揮官は、時折り笑顔を浮かべながらリラックスした雰囲気で記者の質問に答えていった。

 これまで25年近くクラブ監督としてのキャリア積んできたザッケローニ。イタリア・セリエAの3大クラブ(ACミラン、インテル・ミラノ、ユベントス)などの監督を歴任し、ACミランでは98−99シーズンにスクデットを獲得している。輝かしいキャリアを築いてきたものの、イタリア国内クラブ以外を率いるのは初めての経験となる。この点について、ザッケローニは「セリエAは今でも優勝するのが最も困難なリーグの一つだ。そこで優勝することもでき、大きなチャレンジをするとしたら、代表チームしかなかった。日本はこれからも伸びていくチームで、自分も(監督として)成長していきたい。日本は15年間ほどの短い時間で随分と伸びた。短い時間だが、一緒に成長していきたい」と代表チームを率いるに至った決心を語った。

 監督選出の作業にあたっていた原博実強化担当技術委員長はザッケローニを「とても真面目で誠実。話し合いもやりやすい。日本のことをリスペクトしてくれるし、(W杯)アジア予選の難しさも理解していただいた」と評価し、当初のビジョンに適合した監督を招聘できたことで、これまでの会見では見せなかった安堵の表情を浮かべていた。

 ザッケローニは明日、ヤマザキナビスコカップFC東京−清水エスパルス戦を視察し、2日から行われる日本代表合宿にも合流する予定だ。ミーティングに出席し、23名の代表選手と顔を合わせることになっている。4日のパラグアイ戦、7日のグアテマラ戦は就労ビザの関係でベンチに入ることはできない。以前から予定されていた通り、原委員長が代行監督として2試合の指揮を執る。

 4日、7日の2試合について、ザッケローニは「まだ日本に着いたばかりだから、今週、来週の試合については原さんが責任を持ってやってほしい」と答え、報道陣の笑いを誘った。終始、和やかな表情で行われた会見は予定時間を超え、1時間近いものとなった。

 複数の候補がいるといわれていた監督人事で、ザッケローニが就任する決め手となったのは“人間性”だった。原委員長は「あれほどの名前のある監督なのにとてもフランク。イタリアのビッグ3全てで監督を出来る人物はなかなかいない。それだけ確かな人間性を持っている人だということ」「彼のような人と出会えて、仕事をできるのは嬉しい」とイタリア人指揮官の着任を喜んだ。

 日本代表にとっては6人目の外国人監督であり、初のイタリア人監督となったザッケローニ。これまでの5人とは比べ物にならないほど、監督としての実績がある人物だ。世界の第一線で勝負してきた監督を招聘した新生日本代表はどのように変化していくのか。新監督が大きな目標として掲げたのは来年1月に行われるアジアカップだ。「W杯で力を見せたのだから、トップ3には入らなくてはならない」とザッケローニは語ったが、サポーターはアジア3位では納得しない。まずは5カ月でザッケローニがどのような指針を示していくのか。その手腕に日本サポーター、サッカー関係者の視線が集まっている。