サッカー同様、野球も主役は“圭佑”だ!
 今季の四国・九州アイランドリーグでルーキーながら目立った成績を残している選手がいる。高知ファイティングドッグスの安田圭佑。別府大から入団すると、俊足を生かした外野守備と走塁で瞬く間にチームの主力選手となった。盗塁37はリーグトップの成績だ。課題の打撃も「彼の良いところは学習能力の高さ。飲み込みが早く、教えたことは着実に身につける」と定岡智秋監督も驚く成長スピードで、一時は3割5分を大きく超えるアベレージを残していた。憧れは川宗則(福岡ソフトバンク)という22歳の韋駄天に話を訊いた。
――アイランドリーグではNPBとの交流試合も多く組まれていますが、距離は縮まったと感じることはありますか?
安田: 何度か対戦する中で、ピッチャーはうちのリーグと、そう変わりはないと実感しています。バッターも、バッティングに関してはパワーの違いがありますが、自分のウリは外野の守備と肩、そして足。そこはNPBの選手と同じだし、上のレベルでもやっていける自信はつきましたね。

――でも、バッティングでも打率は3割近い。1年目としては素晴らしい成績です。
安田: 前期はよかったんですけど、ちょっと打率が下がってきましたね。開幕当初は打順も下位で無我夢中でやっていたんですけど、途中から1番バッターになりました。この立場で打たせてもらっている以上、出塁しないとチームが波に乗らない。最近は1番バッターとして自分がチームを引っ張るんだとプレッシャーをかけて打席に立っています。その重圧に負けてしまっている部分はありますね。

――ただ、定岡監督は「最初は反対方向に当て逃げしていたのが、ちゃんとバットを振り抜けるようになった」と評価していましたよ。
安田: 今までは甘い球を見送って、追い込まれてからチョコンと当てるバッティングをしていました。監督に言われて改善してからは、初球から積極的に打つようにしていたんですけど、また最近は結果が欲しくて当てるバッティングが多くなっています。

――独立リーグでは大学時代と違って、年間を通じてコンスタントに成績を残すことが求められます。今年の夏は特に猛暑で、高知にはナイタ―設備もない。その点は、初めての経験で大変なところもあるでしょう?
安田: 体調管理はしっかりしているつもりなんですけど、まだまだ体のケアがうまくできていないと感じます。毎試合毎試合、万全な体調で試合に臨むことがいかに大切か痛感しているところです。

――でも試合を重ねる中で、学ぶ点も多いのでは?
安田: このリーグに来て、いろいろ勉強させられています。今までは自分の持っている力をその場その場で発揮するだけと考えていました。でも、それだけではうまくいかない。考え方が甘かったんですよね。

――その場で対応するのではなく、前もって配球や、次のプレーを予測して判断するということでしょうか。
安田: 結果オーライじゃいけないんです。たとえば仮に盗塁成功しても、カウントによっては行ってはいけない時もある。常に状況を考えて野球をすることに気づかされました。

――憧れはソフトバンクの川選手だと伺いました。背番号も同じ「52」ですね。どんなところを見習いたいですか?
安田: 川崎さんは性格は明るいし、足も速い。グラウンドでもベンチでもチームを引っ張っていますよね。何より、野球が大好きというのが伝わってくる。すべてにおいて尊敬できる選手です。実は今年、川選手と宮崎で自主トレを一緒にやらせてもらったんです。

――それは貴重な体験ですね。どうやってきっかけをつかんだんですか?
安田: 高知に入団することが決まっていたので、(川のプロ入り時にコーチをしていた)定岡監督から「一緒に行くか?」と誘われました。テレビで見ると小さいイメージがあったんですけど、実際の川さんは、体つきもしっかりしていて大きく感じました。練習でも、ひとつひとつのプレーを大事にしているし、ファンサービスもしっかりやっている。後ろ姿を見ているだけで勉強になりました。

――川選手からは、どんなアドバイスを?
安田: 足と肩は持ち味だと見ていただいたのですが、やはり線が細いし、バッティングも当てるだけになっていると。しっかり振り切るパワーをつけること、シーズンを通じてケガをしないことが大事と言われました。

――安田選手が課題と感じている部分をズバリ言い当てられましたね(笑)。川選手はライトにも引っ張れるし、逆方向にも強い打球を打てる。当て逃げではなく、しっかりバットを振り切っています。
安田: そうですね。ライト、センターに強い打球を打てるようにしていかないといけないと思っています。

――そして長所である足は、もっとアピールしたいですよね。盗塁数もリーグ記録(2008年、高知・YAMASHINの53個)の更新が狙えるのでは?
安田: はい。最初は60個を目標にしてたんですけど、今は55個を目指したいですね。後期に入って、キャッチャーの動きも違うし、ピッチャーも真っすぐ主体の配球に変えたり、クイックでどんどん投げてくる。マークは厳しくなっていますが、意識されても「ここぞ」という時に走れる選手にならないと、上でも通用しませんから。

――もちろん近い将来、NPBに行きたいと考えているでしょうが、どんな選手を目指しますか?
安田: やはり川さんや、同じライトの稲葉(篤紀)さん、同じ宮崎出身の青木(宣親)さんのような選手ですね。ポジションやプレースタイルはそれぞれ違いますが、自分をしっかり持っていて、率先してチームを引っ張っていますよね。僕は、ただ単に野球をやるのではなくて、チームの柱になりたいと思っています。その中でみんなに認められて、応援していただける選手になりたいです。


安田圭佑 (やすだ・けいすけ)プロフィール>
 1987年10月6日、宮崎県出身。左投左打の外野手。延岡工高から別府大に進み、2年秋には九州地区大学野球で首位打者、ベストナインを獲得。優勝に貢献してMVPにも輝く。以後、3年春秋と3季連続でベストナインに選ばれ、昨年のドラフト会議でも指名候補に挙がっていた。リーグの合同トライアウトを受け、今季より高知へ。8月末現在の成績は59試合、打率.292(リーグ7位)、20打点、37盗塁(リーグ1位)。

(聞き手:石田洋之)