メジャーリーグはいよいよ日本時間7日からポストシーズンゲームに突入する。今季は日本人選手の所属するチームの成績が軒並み悪く、プレーオフに出場するのは斎藤隆、川上憲伸が所属するアトランタ・ブレーブスのみ。しかも斎藤は右肩痛の影響、川上はレギュラーシーズンでわずか1勝(10敗)と不振のため、ディヴィジョンシリーズのロースターから外れることが決まった。1999年以来、ポストシーズンには日本人選手が必ず出場してきたが、これが途切れる形になる。日本のメジャーリーグファンにはやや寂しい10月となったとはいえ、短期決戦はどこが勝つかわからない。2010年のMLBを締めくくるプレーオフの見どころを紹介する。
◇ア・リーグ
タンパベイ・レイズ(東地区1位)×テキサス・レンジャーズ(西地区1位)
ミネソタ・ツインズ(中地区1位)×ニューヨーク・ヤンキース(ワイルドカード)

 東地区でハイレベルな優勝争いを演じたレイズとヤンキースがリーグチャンピオンシップで激突する可能性が高そうだ。
 レイズはワールドシリーズに進出した2年前に続くリーグ制覇。かつては最下位の常連だったチームは、リーグ屈指の強豪に変貌を遂げた。投手陣は19勝をあげた左腕のデービッド・ブライスをはじめ、2ケタ勝利をあげた先発が5人。抑えには今季リーグ最多の45セーブをあげたラファエル・ソリアーノがおり、接戦もモノにできる。攻撃陣もチーム打率こそ.247と低いものの、盗塁数172はMLB30球団中トップ。機動力を駆使して強打のヤンキース、ボストン・レッドソックスに次ぐ802得点をあげている。ケガで戦列を離れていた主砲のエバン・ロンゴリアが復帰できそうなのも好材料だ。

 ヤンキースは絶対的エースのCC.サバシアが頼みだ。アンディ・ペティット、フィル・ヒューズと先発の頭数は揃っているが、勝ち上がるには打線の援護が必要だろう。アレックス・ロドリゲス、デレク・ジーターら30代後半にさしかかった主力打者は今季のレギュラーシーズン、前年より数字を落とした。経験豊富な彼らがチームを牽引する展開になれば、ワールドシリーズ連覇も見えてくる。ディヴィジョンシリーズで対戦するツインズは昨季も3タテで下しており、相性がいい。ツインズは本拠地開幕のアドバンテージがあるものの、脳しんとうで戦線を離れている4番ジャスティン・モーノーの不在が痛い。

 2強の一角を崩すとすればレンジャーズか。プレーオフは11年ぶりだが、チーム打率.276はMLBトップ。脇腹を痛めて9月以降、ほとんどの試合を欠場した首位打者のジョシュ・ハミルトンが戻ってくるのも大きい。シーズン中に目立った守備のミスが出なければ、戦力はレイズ、ヤンキースに匹敵する。

◇ナ・リーグ
フィラデルフィア・フィリーズ(東地区1位)×シンシナティ・レッズ(中地区1位)
サンフランシスコ・ジャイアンツ(西地区1位)×アトランタ・ブレーブス(ワイルドカード)

 リーグ3連覇を目指すフィリーズが本命といえそうだ。
 投手陣では21勝をあげたロイ・ハラデーを筆頭とする“H2O”トリオ(ハラデー、コール・ハメルズ、ロイ・オズワルド)の安定ぶりが光る。昨季のワールドシリーズで5本塁打のタイ記録を打ち立てたチェイス・アットリーやライアン・ハワードを中心にした打線も健在だ。今季は前半戦こそ勝率5割ラインの戦いだったが、夏場以降、驚異的なペースで白星を重ねた。今季97勝は両リーグ最多。現役時代はヤクルト、近鉄でも活躍したチャーリー・マニエル監督は今季で指揮を執って6年目。的確な選手起用に対する評価は高く、短期決戦の戦い方も熟知している。

 対するレッズは15年ぶりに中地区を制した。リーグトップのチーム打率(.272)、得点(790)を誇る攻撃力でビッグ・レッド・マシンの復活を狙う。このチームの秘密兵器ともいえるのがキューバ人左腕のアロルディス・チャップマンだ。09年のWBCではキューバ代表として日本代表と対戦した。160キロを超える速球でフィリーズの左打者を牛耳る展開になればおもしろい。

 フィリーズに対抗するとすればジャイアンツだろう。チーム防御率3.36は30球団でナンバーワン。大きなストライドで投げるフォームが独特なティム・リンスカム、ともに13勝をあげた右のマット・ケーン、左のジョナサン・サンチェスと先発3本柱は盤石だ。リードすれば今季最多セーブのブライアン・ウィルソンが控える。野手では規定打席で3割を超えた打者はひとりもおらず、まさに投高打低のチームといえる。ただ、投手力はプレーオフで大きなウエイトを占めるだけに手ごわい相手となるだろう。

 一方のブレーブスも投手力が強みだ。今季は右ひじの手術を受けたティム・ハドソンが17勝をあげて復活。リリーフも復帰した斎藤に無理をさせなくてよいほど豊富だ。ジャイアンツとのディビジョンシリーズは接戦になることが予想される。気がかりなのはレギュラーシーズン後半の失速。前半戦は地区首位を走りながら、故障者もあってプレーオフ進出が決まったのは最終戦だった。チーム状態は決して良くないが、今季限りで勇退を表明したボビー・コックス監督の花道を飾ろうと選手たちがひとつにまとまっている点は侮れない。