30日、日本サッカー協会(JFA)は10月8日に埼玉スタジアムで行なわれるキリンチャレンジカップ(対アルゼンチン)と、12日に韓国・ソウルで行なわれる国際親善試合(対韓国)に出場する日本代表26名を発表した。アルベルト・ザッケローニ監督が就任後、初采配となる今回の2試合ではブンデスリーガで6戦4発とブレイク中の香川真司(ドルトムント)や、本田圭佑(CSKAモスクワ)ら海外組9名を招集。一方で本田拓也(清水)、関口訓充(仙台)の2選手が初めてA代表入りした。今月上旬に原博実監督代行(強化担当技術委員長)の下で実施した2試合のメンバーから18名が選ばれており、大幅な選手の入れ替えはなかった。
(写真:「攻守のバランスがテーマ」と選考基準を語ったザッケローニ監督)
「これが私が初めて招集した代表の選手たちです」
 そう言って指揮官が発表したメンバーは、自分の色を強烈に出したものではない。代表監督就任以来、ザッケローニ監督は1カ月間で9試合を視察。計14クラブの選手を自らチェックした。しかし、1カ月ですべてを把握するのは困難だ。
「いろいろ考えた結果、前回招集された選手をベースにしようと考えました」
 リストの中には足に故障を抱える遠藤保仁や体調に不安がある中村憲剛が名を連ねた。特に遠藤は状況によっては代表辞退も考えられるが、それでもメンバーに入れたのは主力選手に新監督の考えやコンセプトを早く浸透させたいとの思いがあるのだろう。

 とはいえ、本田拓、関口の初選出組には、イタリア人指揮官のカラーがにじみ出ているといっていい。彼らの選考理由をザッケローニ監督は「コンセプトからぶれず、攻撃も守りもできる」と明かした。一芸に秀でた選手より、どのポジションでもこなせるユーティリティプレーヤー。新監督の求める代表選手像が垣間見えた選考だった。

 6月の南アフリカW杯の代表レギュラーをみると、その多くは次のブラジル大会では30歳を超える。世代交代を進めることもザッケローニ監督に求められるタスクのひとつだ。ただ今回、強いて若手を多く選ぶことはしなかった。「若い選手の成長にはベテランと対峙することが必要。大切なのは一気に変えることではなく、徐々に変化をつけること」。若い才能は単にチャンスを与えるのではなく、競争の中で磨きあげる。その方針は明確になった。

 監督の考えが、よりはっきりしたのは「絶対的なレギュラーは置かない」との発言だ。「これまでの長いキャリアの中で絶対的レギュラーと考えてきた人間はいない。チームにとって大切な選手がたくさん出てくることは望んでいるが、絶対的レギュラーというポジションを与えてしまうと、その選手は良くなくなってしまう」。過去の日本代表は、ともすれば中田英寿や中村俊輔のような絶対的な存在に頼りがちな面が少なくなかった。お互いにポジションを競わせ、中心選手任せにならないチーム編成を指揮官は目指している。

 初陣の相手は、なんといってもアルゼンチンだ。リオネル・メッシ、カルロス・テベス、ゴンサロ・イグアインとスタープレーヤーが日本にやってくる。ディエゴ・マラドーナ監督が退任後、新体制で臨んだ国際試合では、W杯優勝のスペインを破っている。日本にとっては現在の実力をはかる絶好の機会だ。「アルゼンチンは尊重すべきだが、怖がってはいけない」と語るザッケローニ監督は、試合のポイントにチーム力を掲げた。「(アルゼンチンと戦う)秘策はない。選手たちのクオリティを最大限に高めることが武器になる」。短い合宿期間で、どこまで指揮官の考えるチームづくりができるかが見どころになりそうだ。

「まず選手を知ること、選手同士のコミュニケーションを深めること、そして私の代表でのベースとなるものを築いていきたい」
 今回の代表メンバーと過ごす10日間の目標をザッケローニ監督はそう設定した。2試合を終えて、これらがどの程度達成できるのか。そして、以降の代表選考にザッケローニ色がどのように出てくるのか。まずは、お手並み拝見といったところだろう。
 
<日本代表メンバー26名>

GK
川島永嗣(リールセ)
西川周作(サンフレッチェ広島)
権田修一(FC東京)
DF
田中マルクス闘莉王(名古屋グランパス)
駒野友一(ジュビロ磐田)
栗原勇蔵(横浜F・マリノス)
伊野波雅彦(鹿島アントラーズ)
長友佑都(チェゼーナ)
槙野智章(サンフレッチェ広島)
内田篤人(シャルケ04)
MF
遠藤保仁(ガンバ大阪)
中村憲剛(川崎フロンターレ)
阿部勇樹(レスター・シティー)
今野泰幸(FC東京)
長谷部誠(ヴォルフスブルク)
本田拓也(清水エスパルス)
細貝萌(浦和レッズ)
FW
松井大輔(グルノーブル)
前田遼一(ジュビロ磐田)
関口訓充(ベガルタ仙台)
岡崎慎司(清水エスパルス)
本田圭佑(CSKAモスクワ)
森本貴幸(カターニャ)
金崎夢生(名古屋グランパス)
香川真司(ボルシア・ドルトムント)

<キリンチャレンジカップ2010>
◇10月8日(金)
日本代表 × アルゼンチン代表
埼玉スタジアム2002(さいたま)

<国際親善試合>
◇10月12日(火)
韓国代表 × 日本代表
ソウルワールドカップスタジアム(ソウル)