2010年のプロ野球のラストを締めくくる日本シリーズが30日、ナゴヤドームで開幕する。相見えるのは、セ・リーグで4年ぶりの優勝を収め、クライマックスシリーズ(CS)を含めた完全制覇を目指す中日と、史上初となるレギュラーシーズン3位からのシリーズ出場を決め、下剋上を狙う千葉ロッテ。両者の対決は1974年以来で、その際はロッテが4勝2敗で勝っている。今回、最後に笑うのはどちらか。シリーズの行方を展望する。
(写真:中日・落合監督の采配と和田の打撃もカギを握る)
中日  チーム打率.259(リーグ5位)、チーム防御率3.29(同1位)
ロッテ  チーム打率.275(リーグ1位)、チーム防御率4.10(同5位)
 数字をみれば両チームのカラーは対照的だ。中日が強力な投手陣を背景として少ない得点を守りきる戦いを見せるのに対し、ロッテは1番から9番までよくつながるマリンガン打線を武器に打ち合いも辞さない。まさに投高打低vs.投低打高の図式が浮かび上がる。

 だが、正反対な両者にも共通項がある。ホームに強いのだ。中日は53勝18敗1分と35もの貯金をつくった。またロッテもホームの成績は44勝26敗の貯金18で、これは今季のパ・リーグでナンバーワンだ。一方、ビジターになると、いずれも成績は大きく負け越している。要するに“内弁慶”の両チームなのだ。

 それは裏をかえせば、それぞれがホームスタジアムの特性に合った野球をしている証拠でもある。たとえばナゴヤドームはグラウンドが広い。現時点でホームランは日本で一番打ちにくい球場である。したがって一発長打ではなく、投手を中心とした守りの野球が求められる。一方の千葉マリンスタジアムの名物は強風だ。海から吹いてくる風の影響を受け、打球があらぬ方向に流されることがある。日頃、守り慣れていないビジターの選手はミスが起きやすい。したがって積極的に打っていく攻撃型チームのほうがこの球場には合っている。

 今季の交流戦でも中日がホームで2勝、ロッテがホームで2勝と、完全な内弁慶ぶりを発揮した。もし、この傾向が続くようであれば今回、ナゴヤドームで4試合を実施する中日が有利になる。特に最初の1、2戦を勝率7割を超えるナゴヤドームで戦える点は大きい。ロッテとしては1、2戦で流れを渡すことなく、千葉に帰りたいところだ。CSではファーストステージをいずれも逆転勝ちで制し、ファイナルステージでは1勝3敗の劣勢をはねかえした。その勢いを持続させるためにも、特に初戦の戦い方は重要だ。

 第1戦の先発投手はエースの成瀬善久とみられる。CSファイナルステージでは、福岡ソフトバンクを初戦、第6戦ともにねじ伏せた。その再現をはかりたい。中日は巨人を倒したCSファイナルステージ同様、チェンと吉見一起のいずれが先に投げるか分からない。しかも第3戦以降も山井大介、中田賢一、山本昌と先発陣は豊富だ。ロッテには同じくCSで好投したサブマリンの渡辺俊介がいるが、後の外国人投手は先発としてやや心もとない。

 それだけにロッテが日本一になるには、成瀬が投げる試合は確実に勝つ必要がある。初戦で“内弁慶”の相手を撃破し、逆に3戦目以降で自分たちは“内弁慶”を発揮する。これが理想だ。逆に中日が1、2戦とホームで変わらぬ強さを見せ、第3戦からの千葉の風すら味方につければ、一気にシリーズの大勢は決する。

 キーマンには中日からはバッターを、ロッテはピッチャーを指名したい。
 中日は4番の和田一浩だ。中日移籍後は初の日本シリーズを迎える。西武時代は2度シリーズに出場し、2002年は15打数無安打。チームは4連敗を喫し、逆シリーズ男の汚名を着せられた。逆に04年のシリーズでは4本塁打を放って日本一に貢献している。巨人とのCSでも得点圏で6打数無安打だったが、最後はサヨナラ打で日本シリーズ進出を決めた。やはり、このベテランが打つと打たないとでは、恐竜打線の迫力が違う。今季の交流戦でもロッテ戦に16打数7安打と打ちまくった相性の良さをそのまま生かしたい。

 ロッテは第2戦の先発が予想される渡辺だろう。こちらも対中日は5勝1敗と得意にしている。今季はレギュラーシーズン8勝8敗で、防御率4.49は規定投球回に達したシーズンでは自己ワーストだった。終盤は2軍落ちも経験したものの、ポストシーズンになって復調。緩いボールで凡打の山を築くスタイルが戻ってきた。シリーズでは05年、やはり第2戦に先発し、完封勝利をあげている。同様のピッチングができれば、チームにとって大きな追い風が吹くはずだ。

 今年の日本シリーズは残念ながら1、2、5戦は地上波でテレビ中継がない。巨人、阪神などの人気球団が出ないとはいえ、今年のプロ野球の総決算がここにある。「放送しておけばよかった」とテレビ局関係者が悔しがるような熱戦をぜひ期待したい。

(石田洋之)