四国・九州アイランドリーグの2011シーズンの新入団選手採用を目的とした合同トライアウトは28日、埼玉県のヤクルト戸田球場で1次テストが行われた。11月23日の神戸開催に続く首都圏での実施となったこの日は計68名の応募があり、そのうち投手26名、野手33名が夢への第一歩となる場へチャレンジした。この中から同会場での特別合格者(リーグ入り内定)と2次テスト(12月12日、高知球場)に進出する合格者が決定し、12月1日に発表される。
(写真:元福岡の徳永投手も参加した)
 小春日和となり、関東地方の気温も20度近くまで上がったこの日、選手たちが自分の持ち味を出すには、絶好のコンディションだった。午前中は50メートル走や遠投で基礎的な身体能力をチェックした後、投手はブルペン投球、打者はフリーバッティングを行い、各球団の監督、コーチ陣が個々の実力を見極めた。午後はこの中から投手12名、野手14名をピックアップ。実戦形式のピッチング、バッティングを実施し、合格者の絞り込み作業を行った。

 午後のシートバッティングで140キロ台の速球を連発して注目を集めたのは森田浩平投手(松江北高−九州共立大−かずさマジック)。理想は岩隈久志(東北楽天)と語る右腕は「調子はまぁまぁ。フォークが決まったのが良かった」と汗をぬぐった。また高校3年生で唯一、午後の選考に進んだ田崎雄太投手(都立東村山高)は、「最後の夏の都大会は初戦で自滅して負けた。それが悔しくて野球を諦めきれなかった」とトライアウトへやってきた。「ブルペンでは良かったのに、バッターを相手にすると四球を連発してしまった」。満足いくアピールができず、登板後は反省していた。
(写真:「プロに行きたいから」と受験理由を語った森田投手)

 また独立リーグ経験者も4名が参加。アイランドリーグでは福岡に在籍し、今季はBCリーグの信濃でプレーしていた徳永雄哉投手は変則的なサイドハンド投法を披露した。またBCリーグ・石川、関西独立リーグ・紀州で投げていた左腕の滝口和眞投手、BCリーグ・福井で初年度(2008年)の選手だった井上俊秀内野手も午後のシート打撃まで残り、限られたチャンスを生かそうと必死だった。また外国人では米国からアンソニー・ベネット内野手が受験。「タイミングの取り方がいい。選球眼もある」と評価を受けていた。
(写真:米・マイナーのみならず欧州やオーストラリアなどのリーグを渡り歩いているアンソニー選手)

 今回の首都圏開催はBCリーグのトライアウトと日程が重なったこともあり、参加者は昨年よりほぼ半減。それだけに試験官を務める各球団の監督、コーチ陣の目は鋭かった。「投手、野手含めて6〜7人はほしい」(徳島)、「投手の頭数が足りないので、3〜4人くらいは獲得したい」(高知)などとそれぞれのチームのニーズに照らし合わせながら、気になった選手をチェックしていた。ただ、「(解散した)長崎からも選手を補強した。ほぼ枠は埋まっている」「1年間で(公式戦出場できない)練習生も育っている。いきなり選手契約は難しいかもしれない」「(前回の)神戸開催と比べるとあまり光る子はいない」といった厳しい声も聞かれた。

 トライアウトをサポートするスタッフには現役選手の姿もあった。昨年の首都圏開催で特別合格者となり、香川に入団した舟生源太もそのひとり。今季は64試合に出場し、打率.236の成績を残した。来季の飛躍が期待される21歳は現在、関東で自主トレ中。スピードガンで投手の球速を計測しながら、「80試合を戦うのは体力的にきつかったが、いい経験になった。来季はドラフト指名されるように頑張る」と決意を新たにしていた。また会場がヤクルト2軍の本拠地とあって、元香川・三輪正義も練習の合間に姿をみせた。

 トライアウトはこの後も12月4日に九州(福岡・雁の巣球場)、12月11日に四国(高知球場)で行われ、それぞれ特別合格者と1次テスト合格者が決まる。1次テストを通過した選手は12月12日に高知球場で開催される2次テストに進み、その合格者が特別合格者とともに、同日夜のドラフト会議で各球団に割り振られる。

(石田洋之)