今年のドラフトを沸かせた斎藤佑樹、大石達也(ともに早稲田大)、沢村拓一(中央大)をはじめ、菅野智之(東海大)、東浜巨(亜細亜大)、野村祐輔(明治大)と、大学球界では好投手が続々と誕生している。そんな彼らの球を日本代表の正捕手として受けてきたのが、小池翔大だ。大学No.1捕手の呼び声高い彼だが、大学4年間の集大成となるはずだった今季は最も苦しいシーズンとなった。特に秋は途中、ケガで離脱し、満足のいく結果を出すことができなかった。そうした中で臨んだ10月28日のドラフト会議、日本一の球団からの指名に嬉しさが込み上げたという。目標としていた世界への扉が開かれた小池に、プロとしての決意を訊いた。
―― 10月6日の亜細亜大戦で右手中指を骨折。大事な時期での離脱に不安な思いは?
小池: その時点でリーグ戦は残り1カ月を切っていましたので、リーグ戦復帰は諦めていました。仮にケガなくシーズンを終えていたとしても、ドラフトで指名されるかどうかは正直、自信はなかったんです。それなのにケガをしてしまって……。「指名されなかったら、どうしようか」と次の進路のことを考えたりもしていましたね。ですから、ロッテから指名を受けたとわかったときは、本当に嬉しかった。感謝の気持ちでいっぱいになりました。

―― 4位という順位については?
小池: 指名していただけるなら、順位は何でもいいと思っていました。とにかくプロの世界に入らないことには始まりませんから。それに、ドラフトの順位がそのままプロでの成績に表れるかというと、全く関係ない。今では育成出身の選手が活躍しているくらいですから。

―― 球団へのイメージは?
小池: まとまりがあるチームだなという印象があります。試合に出ている選手だけではなく、監督やコーチ、裏方さんなども含めて。それと、やっぱりファンが熱いですよね。新潟で行なわれた今年のファーム日本選手権を寮のテレビで観ていたのですが、そこにもロッテファンがたくさんいたんです。すごいな、と思ったのを覚えていますね。

 1年春にデビューし、4年間、青学の正捕手の座を守ってきた小池。修徳中では軟式の全国大会準優勝を経験。常総学院でも1年秋から正捕手となり、甲子園に2度出場している。そんな華やかな経歴をもつ小池だが、捕手を本格的に始めたきっかけは「自信のなさ」からだったという。今では大学球界を代表する捕手となった彼にとって、“女房役”の醍醐味、こだわりとは――。

―― 捕手になったきっかけは?
小池: 小学校時代はいろいろなポジションをやっていて、最終的には投手と捕手を兼任していました。本格的に捕手になったのは中学に入ってからです。その理由は自分に自信がなかったからなんです。というのも、修徳中学にはすごい投手がたくさんいたので、ビビったんですよ。その一人が今、ENEOSにいる磯部泰。今は内野手ですけど、中学時代は主戦の一人だったんです。それで「ここで投手をやるのは無理だな」と思って、捕手を選んだんです。といっても、捕手だったらいける、という自信も全くなかったですけどね。

―― 捕手というポジションの魅力は?
小池: やっぱり自分が出したサイン通りに投手が投げて、抑えて勝った時の喜びですよね。完封した時なんかは、もう本当に嬉しいですよ。

―― 捕手として普段、心がけていることは?
小池: とにかく投手には気持ちよく投げてもらいたいんです。そのために普段の練習の時からよく話すようにして、コミュニケーションをとるようにしています。たとえ意見が合わない投手がいても、話をしなければわかりあうことはできませんので、自分から積極的に話すように心がけています。
こんなふうに心がけられるようになったのは大学に入ってからなんです。もともと、性格的には人見知りで消極的なタイプの人間なんですよ。だから、高校でも大学でもそうでしたけど、団体の中に入っていくのが苦手で、最初は全く話すことができないんです。でも高校時代、監督から「もっと自分を出して、アピールしていけ」と言われていたので、「大学では自分から話しかけるように努力しよう」と。とはいっても、やっぱり最初は苦手です。だからロッテには先輩の山室(公志郎)さんがいるので、ちょっとホッとしているんです(笑)。

 一球の怖さを知った米国戦

 3年時から日本代表としても活躍した小池。日米大学野球選手権や世界大学野球選手権、そしてセ・パ両リーグ誕生60周年を記念として開催されたプロアマ交流戦に出場した。全国から集結した優秀な選手たちとともに、外国人選手やプロとのハイレベルな試合を戦う中、小池はどんなことを感じ、何を学んだのだろうか。

―― これまで経験した中で最も印象に残っている試合は?
小池: 昨年11月のプロアマ交流戦ですね。あれだけ大勢の人が詰め掛けた球場で野球をやったのは大学に入ってからは初めてだったので、衝撃的でした。練習中に開門されたのですが、もうすごい勢いで人が入ってきたんですよ。リーグ戦でそんなことは絶対にないので、正直、ビビりました(笑)。

―― 代表ではプロからも注目されるほどの投手の球を受けていた。彼らから学んだものとは?
小池: どの投手も気持ちが強かったですね。どんなに劣勢な場面でも、自分のスタイルを貫き通すんです。おどおどしている投手なんて一人もいませんでした。相手が外国人でもどんどん向かっていく。そういう気持ちの強い投手が結果を残すことができるんだなと改めて感じました。

―― 海外の選手の印象は?
小池: 米国の打者はバンバン打ってくるのかなと思っていたのですが、意外にも犠打が多かったんです。練習でもやっていましたし、基本を大事にしていることがわかりました。でも、投手は150キロ台のボールを投げるし、捕手は半端なく肩が強いしで、打つ、投げる、走るということに関しては正直、かなわないなぁと思いました。

―― 一球の怖さを知った試合は?
小池: 今年の世界野球での米国戦ですね。斎藤(佑樹)が初回に満塁ホームランを打たれたんです。落ちる系のボールのサインだったんですけど、それが落ちずに甘くなってしまって……。2回以降は無失点に抑えましたが、結局初回のホームランが決勝点になったんです。「本当に一球で試合が決まるんだな」と痛感しました。

 秋のリーグ戦で負ったケガも順調に回復している。来年1月の新人合同自主トレーニングには十分に間に合いそうだ。今後は厳しい競争社会の中に身を置くことになる小池にプロへの意気込みを訊いた。

―― どんなプロ野球選手を目指すのか?
小池: 10年、20年と、長くチームに必要とされる選手でありたいですね。

―― 最も自信のある部分は?
小池: 自信があるというよりは、守備で勝負したいと思っています。バッティングではまだまだかなわないところもあると思いますが、まずは守備だけでも上のレベルに追いつきたいですね。自分よりも肩が強い選手はたくさんいると思いますが、総合力で選ばれるような捕手になりたいと思います。

―― 座右の銘は?
小池: 中学時代から自分の中にあるのは「我慢」です。普段の練習はきついですけど、そういうところを我慢して耐え抜けば、勝利につながる。これまでの経験から得たことでもあります。放り投げてしまったらそこで終わりですし、それまでの選手だったということ。だから、プロでもとにかく何事にも耐えて、成功を収めたいと思っています。

 昨秋、青山学院大は52季ぶりに2部に降格。試合会場の明治神宮第二球場は、大学球界の聖地・明治神宮球場に隣接している。名称も「神宮球場」であることには変わりはないが、やはりそこは「第二」。グラウンドやスタンドの広さも違えば、華やかさは天と地の差ほどある。見上げれば、すぐそこに聖地があるにもかかわらず閑散とした会場での試合に、小池たち部員は悔しさでいっぱいだったに違いない。しかし、その悔しさをバネに、同大はわずか一季で一部復帰を果たした。「昨秋できなかった自分たちの野球、守り勝つ野球が二部ではできました。特に投手陣が頑張ってくれたことが大きかった」と小池は言う。その投手陣の活躍も“女房役”あってのものであることは想像に難くない。アマチュア界では常に第一線でマスクを被ってきた彼が、プロではどんなリードを見せてくれるのか。経験を積めば積むほど味が出てくるポジションだけに、今後の成長が楽しみだ。

小池翔大(こいけ・しょうた)プロフィール>
1988年6月24日、東京都生まれ。小学1年から高砂コンドルで野球を始め、修徳中学入学後、本格的に捕手となる。同中3年時には軟式の全国大会で準優勝を果たした。常総学院高では1年秋からベンチ入りし、2年春、3年夏と2度の甲子園を経験した。青山学院大に進学し、1年春のデビュー戦で満塁本塁打を放つ。昨年は初めて日本代表に選出され、日米大学野球選手権、プロアマ交流戦に出場。今年も世界選手権に出場し、銅メダル獲得に貢献した。183センチ、82キロ。右投右打。

(聞き手・斎藤寿子)

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