横浜ベイスターズの新入団選手発表が6日、横浜市内のホテルで行われ、先のドラフト会議で指名を受けた9名の選手たちが会見に臨んだ。真新しいユニホームを身にまとった新入団選手たちは、腕に★マークをペインティングして“ベイスターズ愛”を強調。1位指名を受けた須田幸太(JFE東日本)は「緩急を使って低めにボールを集め、15勝を目指す」と力強く抱負を語った。
(写真:早大時代に同期だった松本、細山田と再びチームメイトになる須田)
「ウィークポイントであるバッテリーを最重要視した」と尾花高夫監督が語るように、このドラフトで横浜は5人の投手、2人の捕手を獲得した。昨年の都市対抗野球で若獅子賞を獲得した右腕の須田をはじめ、全員が大学、社会人、独立リーグ出身の即戦力だ。「アマチュアは一生懸命満足ならそれでいい。プロはファンの人に感動してもらうプレーをすることが一番。1日も早く1軍のマウンドで、打席で、フィールドで活躍してもらうことを期待している」と指揮官は指名した選手たちにプロの心構えを説いた。

 入団する5人のピッチャーは本格派、技巧派、先発タイプ、中継ぎタイプとそれぞれ持ち味が異なる。2位指名の加賀美希昇(法政大)はMAX151キロの速球を誇る。北海道日本ハムを1位指名を受けた斎藤佑樹、6球団が競合した西武1位の大石達也(いずれも早稲田大)と同期には好投手が多いが、「5年、10年経った時に加賀美を獲ってよかったなと思われるように頑張りたい」とライバル心をあらわにした。

 今年の関西六大学春季リーグで13試合中12完投するタフネスぶりをみせた4位の小林寛(大阪学院大)は「ハマの鉄腕」と自らにニックネームをつけた。大院大の西山正志監督は元PL学園高のコーチで、尾花監督も高校時代に指導を受けた間柄。「尾花は野球を知っている監督。監督の使いやすい選手になってほしい。6位から5位、4位、3位とクライマックスシリーズの原動力に小林がなってくれたら最高」と自らの教え子が、教え子の救世主になる日を心待ちにしている様子だった。背番号12を背負うことになった小林は「若い番号は“開幕1軍でやれ”という意味だと思う」と意気込み、鉄腕らしく「50歳まで投げたい」と壮大な夢を口にした。
(写真:「マウンドで弱気になったことはない」と胸を張る小林)

 下位指名ながら独立リーグから指名された2選手も壇上で輝いていた。7位指名を受けた大原淳也(四国・九州アイランドリーグ・香川)は、背番号51を球団から与えられた。ハマの背番号51といえば、かつては2年連続首位打者の鈴木尚典がつけていた。「期待されている証だと思う。全力プレーでガムシャラにやりたい」と決意を述べた。香川の先輩である福田岳洋からは、「分からないことがあったら何でも聞いてくれ。一緒に頑張ろう」と電話が入ったという。
(写真:尾花監督から「足のある1、2番として任せられる」と評価されて入団する大原)

 このドラフトでは大原姓の選手が2人(もう1人は5位・大原慎司(TDK))入団するが、「下の名前で呼ばれるようになりたい。ショートは淳也、セカンドは淳也とポジションで覚えていただけるように頑張る」とアピールを誓っていた。妻と現在9カ月の赤ちゃんを抱えながら独立リーグで夢を叶えた「ハマの苦労人」に香川・西田真二監督も「ユニホームが似合っていた。彼なら体力もあるから最初から飛ばしても大丈夫。1軍でしっかりやってほしい」と喜んでいた。
 
 8位指名の岡賢二郎(アイランドリーグ・愛媛)は会見で「愛媛は第2の故郷」と語り、何度も独立リーグへの感謝を口にした。野球を始めたことからキャッチャー一筋で、ホームからセカンドへの送球が2秒を切る「ハマのバズーカ」は、「来たるベイスターズ黄金時代の正捕手になる」と大きな目標を掲げた。「画面でみていた人がチームメイトになる。信頼していただけるキャッチャーになりたい」。9日から他の選手たちより一足早く横須賀にある球団施設を使い、大原とともに自主トレを実施する予定だ。
(写真:選手紹介で掛け声とともに元気よくポーズを決める岡)

 会見後は、テレビ番組の収録で今季10勝を挙げた清水直行が新入団選手と家族の前に登場。「今は自分の成功しか考えていないと思う。そのまま突き進んでほしい。それでうまく行かないことがあれば、自分に何が足りないのか整理することが大事」とエールを送った。史上初となる3年連続90敗以上での最下位に球団の身売り騒動……。明るい話題のなかった横浜だけに加地隆夫球団社長は「真冬から春を迎えようとしている。来シーズンのベイスターズに期待してください」と巻き返しを宣言した。この日、誕生した9つの新星がハマの夜空に光り輝く時、それは現実になる。
(写真;最下位の反省から丸刈りになった尾花監督(中央)と新入団選手たち)

(石田洋之)