東京ヤクルトスワローズの新入団選手発表が9日、都内のヤクルトホールで行われ、先のドラフト会議で指名を受けた9名の選手たちが会見に臨んだ。招待されたファンら500人が見守る中、小川淳司監督から真新しいユニホームを受け取った選手たちは皆、晴れやかな表情。なかでも3位指名を受けた西田明央(北照高)が「古田(敦也)さんを超せるようになって、(古田の背番号だった)27番を早くつけたい」と力強く宣言し、ファンから大きな拍手を受けた。
(写真:詰め掛けたファンをバックにポーズをとる小川監督と新入団選手)
「投手、野手、即戦力、将来性のある選手とバランス良い補強ができた」と小川監督が語るように、今回のドラフトでは育成選手も含めて投手3名、捕手1名、内野手1名、外野手4名と全ポジションから指名を行った。また高校生が3名、大学生が1名、社会人・独立リーグ所属が4名で年齢も17歳から26歳と幅広い。1位指名では斎藤佑樹(早大−北海道日本ハム)、塩見貴洋(八戸大−東北楽天)と即戦力投手を相次いで抽選で外してしまったものの、代わりに獲得した山田哲人(履正社高)は走攻守の3拍子揃った大型内野手だ。球団もかつて青木宣親がつけていた背番号「23」を用意した。「青木さん、宮本(慎也)さんのように日の丸を背負える有名な選手になりたい」。会見では大きな目標を掲げると、ファンからの「趣味、特技は?」との質問には「逆立ち」と回答。壇上で逆立ち歩きを披露し、身体能力の高さを示した。

 2位指名の七條祐樹(伯和ビクトリーズ)はMAX148キロの速球にスライダー、チェンジアップを駆使する本格派右腕。高校時代からドラフト候補として注目されながら、ようやく26歳で夢を叶えた。「新人王といいたいが、まずは1勝」。会場には伯和ビクトリーズの後援会からボクシングの元世界チャンピオン、竹原慎二、畑山隆則両氏が祝福に駆けつけ、竹原氏からは「ビシッとやれ。うかれとる場合じゃないけぇのう」と熱いエールを送られていた。
(写真:2人の元世界王者から激励を受け、笑顔の七條)

“古田超え”を宣言して注目を集めたのは3位指名の西田だ。捕球してから送球までの速さ、正確さは、確かに通算盗塁阻止率歴代1位(.462)を誇った“ミスタースワローズ”を彷彿とさせる。また右方向に強い打球が放てるなど、強打の捕手として共通項は少なくない。「古田さんはピッチャーの特徴や性格を知り尽くした上でリードをしていた」と語る18歳の趣味はDVD鑑賞。ホラー映画が好きだが、「勝手に登場人物の行動や次の展開を読んでいる」という性格は捕手向きだ。背番号は「30」。古田がつけていた「27」は現在、名誉番号として一時代を築くようなキャッチャーが現れるまで空き番にされている。本人は「3年後には27番にして、1軍を若い力で引っ張っていきたい」と継承に意欲満々だった。

 米国マイナーリーグ、独立リーグと大学中退後4球団を経由して、NPB選手の仲間入りを果たすのは育成2位の上野啓輔(四国・九州アイランドリーグ・香川)。「まずは、このユニホームを着れてうれしいです。と同時に這い上がってやるぞという気持ちが沸いてきました」。ファンの前で1日も早い支配下登録を約束した。チームを率いる小川監督は習志野高の大先輩にあたる。挨拶をすると「オレよりデカイな」と驚かれた。
(写真:「アメリカにいたので特技は英会話と言いたいところですが、英語はできません!」と笑いを誘った上野)

 持ち味は193センチの長身からの角度のあるピッチングだ。「五十嵐亮太投手(現メッツ)のような気迫で押せる投手」を理想にあげる。背番号は「118」になり、「1がとれれば(エースナンバーの18になり)、めちゃめちゃいい」と飛躍を誓った。今季まで徳島のコーチを務めた加藤博人2軍投手コーチからは「走り込みとキャッチボールをしっかりして、キャンプのスタートからアピールできるように」とオフの過ごし方について指示を受けた。「僕にオフはない。明日から練習する」と会見後は早くも気持ちを切り替えていた。

 また育成3位の佐藤貴規(仙台育英高)は、今季12勝と飛躍を遂げた由規の弟。兄とは違い、外野手としてプロで勝負する。50メートル5秒7の俊足で、遠投が98メートルと肩も強い。「兄と同じチームに入れると思っていなかった。ビックリです」。背番号は兄(11番)に「1」を加えた「111」に決まった。
(写真:マスコットのつば九郎にちょっかいを出され、苦笑いの佐藤貴)

 今季のヤクルトは開幕直後の低迷からV字回復し、6年ぶりに貯金をつくってシーズンを終えた。「今シーズンの勢いを来シーズンも出せるように優勝目指して頑張りたい」。小川監督は10年ぶりのリーグ制覇をファンの前で公言した。このオフはFAでの大型補強がなかっただけに、そのカギは彼らルーキーたちが握っている。2011年は9羽の若燕がチームを高く飛翔させる1年になるはずだ。

(石田洋之)