9日、埼玉西武の新入団選手発表が埼玉・所沢市内で行なわれた。今回は球団として初めてファンを招待したことで、会場は例年以上の熱気に包まれた。10月のドラフト会議で指名を受けた6名の選手が会見に臨み、詰め掛けた大勢のファンと報道陣の前でプロへの決意を表明。1位指名の最速155キロ右腕・大石達也(早稲田大)は「大学時代から真っ直ぐには自信をもっている。これまで以上に磨きをかけていきたい」と抱負を述べた。
(写真:早大チームメイトの斎藤佑樹とは「これからも刺激しあっていきたい」と大石)
 真新しいユニホームを着た初々しい姿で6名の選手が登場すると、ファンから温かい拍手が送られた。今年のドラフトでは最多の6球団が競合し、注目を浴びた大石は「セールスポイントは真っ直ぐ。それをいかして、早く一軍で活躍してチームの優勝争いに貢献したい」とプロでも剛腕ぶりを発揮することを誓った。

 大学時代は主に抑えとして実力をいかんなく発揮した大石だが、プロ入り後は先発への転向が濃厚だ。同席した渡辺久信監督も「6球団が競合した彼は最初から抑えでいくようなピッチャーではない」と述べ、先発として大きな期待を寄せていることを示した。会見中、マウンド同様、ステージ上でもポーカーフェイスだった大石だが、「とにかく同世代の人には負けたくない」とライバルたちをしっかりと意識した発言に、負けん気の強さが垣間見えた。

 同2位の牧田和久(日本通運)はアンダースローという希少価値を活かしたピッチングとフィールディングのよさが強みの右腕。「アンダースローのピッチャーは少ない。今は渡辺俊介(千葉ロッテ)さんが球界を代表として活躍している。いつかは“アンダースローといえば、牧田”と言われるように頑張りたい」と、抱負を述べた。

(写真:田中将との対戦を心待ちにしている林崎)
 高校時代からバッティングセンスのよさに高い評価を受けてきた同5位・林崎遼(東洋大)は、「勝負強さがウリ。ファンが打ってほしいという場面で絶対に打つ自信がある」とファンにアピールした。また、東洋大姫路高3年夏の甲子園でホームランを放った田中将大(東北楽天)について聞かれると「高校の時とはレベルが違うピッチャーになっていると思う。早くプロの田中投手と対戦したい。ホームランを打ちます!」と答え、会場のファンを沸かせた。

 プロを目指して今治西高から社会人入りするも、昨年、所属先の日産自動車が野球部の休部を発表。それに伴って王子製紙へと移籍し、ようやくプロへの切符をつかんだのが熊代聖人だ。高校時代はエースとしてチームを牽引してきた熊代だが、社会人では野手に転向。現在では俊足の外野手へと変貌を遂げ、今年、プロへの道を切り拓いた。目標の選手は同じ西武の片岡易之。「片岡選手に“追いつけ、追い越せ”で頑張りたい」と語った。対戦したいピッチャーには同級生の由規(東京ヤクルト)をあげ、今やプロ最速の161キロを誇る剛腕からセンター前ヒットを放つことを誓った。

 今シーズンは残り6ゲームを残し、2位・福岡ソフトバンクに3.5ゲーム差をつけていた西武。2年ぶりのリーグ優勝はほぼ決定かと思われたが、ソフトバンクにまさかの逆転を許し、レギュラーシーズンを2位で終えた。さらにクライマックス・シリーズでも3位・千葉ロッテに2試合連続で延長の末に逆転負けを喫し、日本シリーズ進出を果たすことはできなかった。
(写真:ファンとともに記念撮影)

 会見ではふがいないシーズンを送ったことについて渡辺監督自らがファンに謝罪するとともに、来シーズンへの期待として新人選手について次のようにコメントした。
「今シーズン果たせなかった優勝を勝ち取るために、この6選手を指名した。今、彼らの頼もしい言葉を耳にして、来シーズン、彼らが戦力になれば確実に優勝できると確信している。それぞれ個性をもった素晴らしい選手。彼らの活躍に期待してほしい」

 幼少時代から憧れ続けてきたプロの世界。彼らは今、ようやくそのスタートラインに立った。アマチュア界でスポットライトを浴び続けてきた彼らは、果たしてプロの世界でも輝くことができるのか。若獅子たちの今後に注目したい。