缶コーヒーブランド「ジョージア」は、今シーズンよりプロ野球12球団と提携、さらにNPBパートナー契約を締結し、“チームの勝利のために貢献した素晴らしいプレー”に贈られる「ジョージア魂」賞を創設しています。「ジョージア ベースボールパーク」のサイトでは、二宮清純の書き下ろしコラム「野球探偵007」のコーナーをオフシーズンも月2回更新中。過去の受賞プレーはもちろん、惜しくも受賞を逃したノミネートプレーの中から二宮があらためて取り上げたいものを題材にコラムを執筆しています。

(写真:1月には中日・山本昌投手、チームの先輩・石川雅規投手と鳥取で自主トレを実施予定)
 当サイトでは今回、第3回「ジョージア魂」賞に輝いた東京ヤクルト・中澤雅人投手のコラムを特別に紹介します。

 東京ヤクルト・中澤雅人「課題は新球の習得」

 プロ初登板初先発(3月30日、対中日)での勝利投手はヤクルトでは石川雅規以来である。以降、交流戦前までに3勝(1敗)をマークし、その時点ではチームの勝ち頭だった。

 特に4月23日の横浜戦では雨が降って足場がぬかるむ悪条件の中、相手打線を翻弄した。終わってみれば108球を投げて被安打はわずかに4。プロ4試合目での初完封を達成した。打っても3安打猛打賞のおまけがついた。

「コントロールがいい。同じ腕の振りでいろんなボールを投げられるのが良い」
 かつて新人王に輝いた伊藤智仁投手コーチも絶賛していた。

 しかし、プロの世界は甘くない。後半戦に入ると失速した。10連勝などで最大19もあった借金を返済したチームの勢いとは裏腹に、中澤はわずか1勝(4敗)をあげたのみ。途中、2軍落ちも経験した。

 もともとストレートは140キロ程度で、球威よりもコントロールと多彩な変化球で勝負するタイプ。何度も同じ相手と対戦するプロでは変化球に慣れられると苦しくなる。「遅いスライダーとか球種を増やしていきたい」と契約更改の席では課題を口にしたが、それだけでは足りない。

 チームには良きお手本がいる。先輩サウスポーの石川だ。彼も多彩な変化球を武器に、入団から5年連続で2ケタ勝利を記録した。しかし、2007年は4勝(7敗)止まり。一体、何があったのか。

 左打者が石川の変化球を苦にしなくなったのだ。左投手が左に打たれていては仕事にならない。そこで石川は左打者の懐を襲うシュートをマスターする。

「シュートを覚えたいんです」
 ワラをもすがる思いで教えを乞うたのは、かつて“王キラー”の異名をとった安田猛。彼は人差し指と中指で縫い目をまたぐようにして握り、中指と薬指の間からボールを抜く独特のシュートを後輩に伝授した。

「シュートを意識して外のスライダーを引っかけてくれるようになった。シュートがあるとスライダーもいきてくるんだということがよくわかりました」とは石川。シュートを覚えてからは12勝(10敗)、13勝(7敗)、13勝(8敗)。今では押しも押されもしないエースだ。

 安田から石川へ。そして石川から中澤へ。左殺しの武器が受け継がれれば、彼のパフォーマンスは飛躍的に向上するに違いない。来季が楽しみだ。

「ジョージア ベースボールパーク」のサイトでは、今季、「ジョージア魂」賞に2度ノミネートされた東北楽天・内村賢介内野手についても二宮清純の書き下ろしコラムを掲載中!

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