MLBの2011シーズンが日本時間1日、開幕する。昨季はサンフランシスコ・ジャイアンツが56年ぶりにワールドシリーズを制したように、近年のメジャーリーグは群雄割拠の状態が続いている。21世紀に入ってワールドシリーズ連覇を果たしたチームはなく、2回以上優勝したチームもボストン・レッドソックス(04年、07年)だけだ。ポストシーズンまで目が離せない今季の戦いを各球団に所属する日本人選手の行方とともに占ってみたい。
ナショナルリーグ

 昨季、リーグ3連覇を逃した東地区のフィラデル・フィリーズが本命になりそうだ。21勝右腕のロイ・ハラデー、13勝のロイ・オズワルトらが名を連ねる強力先発陣に左腕のクリフ・リーがテキサス・レンジャーズから戻ってきた。投手陣の充実度はMLBトップといってもいいだろう。クローザーのブラッド・リッジの故障離脱は痛いが、それでも順調に勝ち星を重ねていくはずだ。

 同地区でフィリーズに対抗できそうなのが、アトランタ・ブレーブスだろう。昨季は斎藤隆(現ブルワーズ)らが投げていたブルペンではジョニー・ベンターズ、クレッグ・キンブレルといった若手が成長。打線も4年連続30本塁打以上をマークしているダン・アグラを獲得して厚みが増した。契約最終年となる川上憲伸はマイナーへ降格しており、オファーがあればシーズン中のトレードが濃厚だ。

 中地区では昨季15年ぶりの地区優勝を果たしたシンシナティ・レッズをセントルイス・カージナルス、ミルウォーキー・ブルワーズなどが追う展開。カージナルスは20勝右腕のアダム・ウェインライトがヒジの手術で今季絶望なのが痛い。ブルワーズも09年のサイ・ヤング賞投手、ザック・グリンキーが肋骨を折って開幕に間に合わない。これら3チームがもたつくようだと、福留孝介の所属するシカゴ・カブスにもチャンスが出てくる。そのためには切り込み隊長を務める福留の爆発が欠かせない。

 西地区は混戦だ。昨季のワールドチャンピオン、ジャイアンツは守護神ブライアン・ウイルソンが故障者リスト入りし、開幕前に不安材料が出た。昨季地区2位のパドレスは主砲のエイドリアン・ゴンザレス(現レッドソックス)の抜けた穴をいかに埋めるかがカギを握る。一方、昨季3位のコロラド・ロッキーズは、首位打者のカルロス・ゴンザレス、4番のトロイ・トゥロウィツキーと長期契約を結び、初の地区優勝を狙う。ドジャースは黒田博樹が1年契約で残留したものの、打線の弱さは相変わらず。今季も好投しながら勝ち星のつかない登板が多いかもしれない。

アメリカンリーグ

 大激戦区と言われる東地区では、今季はレッドソックスが優勝候補の筆頭。ライバルチームのタンパベイ・レイズから俊足のカール・クロフォードを引き抜き、大砲のエイドリアン・ゴンザレスを獲得した。左腕のジョン・レスター、ジョシュ・ベケットと先発陣のコマも揃っている。ここ2年、思うような結果が出ていない松坂大輔は先発5番手からのスタート。契約はまだ2年残っているが、勝負の1年となりそうだ。岡島秀樹はチーム内の競争に敗れ、5年目で初めて開幕をマイナーで迎える。昨季はヒジの手術で1年間を棒に振った田澤純一はリハビリ中のため、60日間の故障者リスト入り。復帰にはしばらく時間がかかりそうだ。

 対抗と目されるニューヨーク・ヤンキースはチームの主力が高齢化しており、転換期に差しかかっている。世界一を奪還するには若手の台頭が最低条件だ。昨季の地区覇者レイズはクロフォードをレッドソックスに奪われたように、主力が抜けたことによる戦力ダウンが否めない。これら3強に割って入るとすれば上原浩治の所属するボルチモア・オリオールズだろう。上原はキャンプでヒジを痛めており、不安は残るが、彼がクローザーとしてフル回転すれば、白星をかなり上積みできる。

 中地区では何といっても西岡剛が入ったミネソタ・ツインズだろう。地区3連覇を目指す上で、その機動力は大いに期待されている。オープン戦は打率.345と絶好調。打順は2番を任される予定で、シーズン中も打って走れるつなぎ役を担いたい。7年連続30本塁打以上のアダム・ダンを加えたシカゴ・ホワイトソックス、06年のナ・リーグ最多勝右腕ブラッド・ペニーらを補強したデトロイト・タイガースは、ストップ・ザ・ツインズに燃えている。

 ナ・リーグ同様、西地区は混戦になりそうだ。球団創設50年目で初のリーグ制覇を果たしたテキサス・レンジャーズだが、優勝に貢献したリーがフィリーズに戻り、投手力が落ちた。中継ぎ要員としてメジャー契約を結んだ建山義紀もマイナーからのスタート。一方で昨季のチーム防御率がリーグトップだったオークランド・アスレチックスは、松井秀喜、ジョシュ・ウィリンハムと中軸を打てる打者を相次いで獲得。投打がかみあえば5年ぶりの地区優勝が見えてくる。ロサンゼルス・エンゼルスを1年で去った松井は今季も1年契約。オープン戦では振るわなかったが、その分はシーズンで打てばいい。

 松井の抜けたエンゼルスにはニューヨーク・メッツから高橋尚成がやってきた。マイク・ソーシア監督は先発以外のすべての役割を任せる方針で、貴重な左腕として重宝されそうだ。シアトル・マリナーズのイチローは今季も200安打を達成すれば、その回数が11回となり、ピート・ローズの最多記録を抜く。ただ、チームはあまり上がり目がなく、引き続きイチローのヒットばかりに注目が集まる1年になってしまうかもしれない。