今季のアイランドリーグは九州地区の球団がなくなり、新たに三重スリーアローズを加えた5球団体制で開幕した。四国アイランドリーグPlusと名称も新たにした今季は福岡ソフトバンクとの定期交流戦など新たな試みも行われる。昨季は過去最高の本ドラフト指名3選手を含む6名がNPB入りを果たし、育成面でも結果を残した。さらなる「Plus」を目指すリーグ7年目に臨む各チームの戦力と注目選手を紹介する。
(写真:香川の主砲として、今季こそNPB行きの期待がかかる中村)
香川オリーブガイナーズ
★10年成績
前期 23勝9敗6分 1位
後期 25勝11敗2分 1位

 大型補強で30名以上の選手を抱え、独立リーグ日本一を奪回した昨季とは一転、23選手と人数を絞って連覇に臨む。メンバーも大幅に変わったが、「野手に関しては心配していない」と西田真二監督は自信をみせる。主砲の中村真崇、昨季の首位打者・国本和俊は健在で、「足はトップクラス」と指揮官が評価する亀澤恭平(環太平洋大)らの加入で機動力も増した。関西独立リーグから移籍した林一茂(大阪ゴールドビリケーンズ)は強肩で、外野の守備力はむしろ昨年よりも向上した。

 不安をあげるとすれば投手陣だろう。3年連続で開幕投手を務めた高尾健太、NPB復帰を目指す前川勝彦の両輪は磐石だが、その後に続く先発投手がまだ固まっていない。伊藤秀範(元東京ヤクルト)、山中達也(元広島)といった元NPB組も本来の状態まで上がっておらず、現状ではややコマ不足か。期待は高卒ルーキーの河野忠義(松山聖陵高)。「1〜2年後にはドラフト指名も狙える」と天野浩一コーチも素質を認める本格派右腕で、実戦での成長が楽しみだ。

高知ファイティングドッグス
★10年成績
前期 22勝9敗7分 2位
後期 16勝19敗3分 4位

「いい補強ができた」と定岡智秋監督が語る陣容で三重との開幕2連戦に連勝。王座奪回を目指す。投手陣は昨季12勝をあげた野原慎二郎の離脱は痛いが、左の吉川岳、右の山崎慎一郎に、地元出身の山中智貴、濱田兼信と、先発を任せられる投手が多い。新加入の木幡翔(米独立リーグ)、西畑英俊(環太平洋大)は右の本格派で即戦力。140キロ台の速球が武器の木幡は抑えを務める。

 打線は長崎から分配ドラフトで田中宏明を獲得し、軸はできた。昨季46盗塁した安田圭佑(福岡ソフトバンク)が抜けた分、機動力の底上げをはかっている。トップバッターを務める流大輔が盗塁王を目標に掲げるなど、選手たちの意識も高い。「大きく育てたい」と指揮官が期待するのが、20歳の迫留駿(京都フルカウンツ)。長打力が持ち味で将来の大砲候補だ。

徳島インディゴソックス
★10年成績
前期 20勝15敗3分 3位
後期 17勝17敗4分 3位

 最下位続きだった低迷期を脱し、昨季は年間勝率2位争いを演じた。今季は斉藤浩行新監督の下、悲願の初優勝を狙う。長距離砲の育成をテーマに掲げ、キャンプではパワーのある元千葉ロッテの大谷龍次と練習生から選手登録した中川竜也の打撃をを修正。実績の根鈴雄次も加わり、打線に厚みが増しそうだ。

 投手陣では弦本悠希(広島)が抜けたクローザーの枠にルーキーの富永一がおさまりそう。「ストレートで三振がとれる」という速球が魅力で、斉藤監督も「1年でのドラフト指名も不可能ではない」と話す。先発は昨季12勝の大川学史に加え、長崎から移籍した藤岡快範がオープン戦から好調だ。18歳の河野(かわの)章休(未来高)は変化球でストライクが稼げる。直球のスピードが増せば、注目の右腕になるはずだ。

愛媛マンダリンパイレーツ
★10年成績
前期 13勝22敗3分 4位
後期 22勝12敗4分 2位

 星野おさむ新監督を迎え、チームの体制を一新。「和して同せず」をモットーに真のプロ集団づくりに着手している。打線は昨季の2冠王(本塁打、打点)・西村悟と主砲の末次峰明が抜け、中心打者の育成が急務。指揮官は地元出身の長距離砲・高田泰輔と2年目の武田陽介を中軸に据えて開花を促す方針だ。また19歳の岡下大将(大阪ゴールドビリケーンズ)は走攻守3拍子揃った好素材。外野の一角を占めて経験を積めば楽しみな選手になる。

 一方、投手陣は11名と豊富だ。先発は能登原将が柱。長崎から来た土田瑞起、新人の井川博文(金沢学院大)、古舘数豊(福岡大)らが2番手以降の先発を伺う。先発が試合をつくれれば、中継ぎは球種が豊富で制球力のある入野貴大、抑えには元ロッテの小林憲幸が控えている。昨季途中から故障で登板のないドラフト候補、篠原慎平の復帰時期もチームの行方を左右しそうだ。

三重スリーアローズ
★新加入

 ジャパン・フューチャーベースボールリーグに所属していた昨季はアイランドリーグとの交流戦で10勝18敗2分と大きく負け越した。しかし、長崎でも指揮を執った長冨浩志新監督が就任し、戦力を整備。「三重は手ごわい」と他球団から警戒される存在になっている。投手では絶対的エースの洪成溶に加え、「球のスピード、力強さがナンバーワン」と太鼓判を押す清水信寿(エイデン愛工大ブリッツ)がローテーションの中心になる。抑えには米国からやってきたジョーダン・ムイアーが入り、個々の役割がみえてきた。

 攻撃陣ではBCリーグ・群馬から丹羽良太、香川から大松陽平と一発のある打者を獲得し、迫力が増した。184センチ、88キロと立派な体格の金城雅也(名桜大)は柔らかい打撃が持ち味で飛距離も出る。ショートの宮田良祐、センターの北村祐は打線の1、2番を担い、攻守のキーマンだ。開幕2連戦では打線が振るわず、連敗を喫したが、投打がかみ合えば台風の目になる要素は十二分にある。

(石田洋之)