第93回高校野球選手権大会が6日、阪神甲子園球場で開幕する。今大会は3月11日に起きた東日本大震災の被災地を支援する大会と位置づけられての開催だけに、試合時間を早めるなどの節電対策のほか、センバツ同様、選手たちには被災地へのエールとなるようなハツラツとしたプレーが求められている。国民がさまざまな思いを抱きながら迎える今大会。果たして、4014校の頂点に立つのはどこか。
 優勝候補の筆頭に挙げられているのは今春のセンバツ準Vの九州国際大付(福岡)と、同ベスト4の日大三(西東京)だ。九州国際大付はエース三好匠(3年)と、三好を支える女房役、キャプテンでもある高城俊人(3年)が攻守の要。3番に座る三好は福岡大会ではピッチング以上にバッティングが好調だった。全6試合で3本塁打を放ち、打率5割をマーク。全50打点の3割以上となる17打点を叩き出した。

 やや不安なのは主砲の高城だ。センバツでは大会タイ記録となる8打数連続安打を記録するなど、準優勝の立役者となったが、今夏の福岡大会では打率2割6分1厘と先発メンバーでは2番目に低い数字に終わった。それでも準決勝で2安打1打点、決勝では2安打2打点と、復調の兆しを見せ始めている。センバツで見せた勝負強さを夏も見せられるか。

センバツ以降、チームは基本バッティングを徹底的に行なったことで、コンパクトなスイングから強い打球が打てるようになった。16安打11打点を叩き出した福岡大会決勝戦は、その成果の表れといっていい。生まれ変わった打線が甲子園でどんなバッティングを見せてくれるのかにも注目だ。

 センバツでは三好が一人で全5試合を投げ、決勝では疲労から東海大相模(神奈川)に14安打6失点と打ち込まれた。そのため、課題として浮彫となったのが投手陣の層だ。しかし、今夏は左の大江遥(2年)が成長。福岡大会では4試合に登板し、無失点と三好以上の好成績を残した。左のエースとして三好との2枚看板で初の全国制覇に挑む。

 一方、日大三は強力な打線が自慢のチーム。西東京大会ではキャプテンの3番・畔上翔(3年)、高校通算55本塁打を誇る4番・横尾俊建(3年)が打率5割台をマークするなど絶好調だ。この2人を軸にどこからでも切れ目なく得点ができる。一度、勢いがつくと手がつけられなくなる爆発力があり、相手投手にとっては脅威だ。

 投げてはエースの吉永健太朗(3年)が140キロ台後半の直球を武器に、チェンジアップを織り交ぜながらの巧みなピッチングで西東京大会決勝で14奪三振の好投を披露。5年前の再現となった早稲田実との決戦を延長戦の末に、わずか1点差で制した。その5年前、斎藤佑樹(北海道日本ハム)擁する早稲田実は初の全国制覇を果たした。それに負けじと、日大三は10年ぶりの夏Vを目指す。

 プロも注目する今大会屈指の好投手、歳内宏明(3年)擁する聖光学院(福島)にも注目したい。昨夏、広陵(広島)、履正社(大阪)と強豪を破り、ベスト8に進出した聖光学院。その原動力となったのが、2年生エースとしてチームを牽引した歳内だ。最速145キロの直球と落差のあるスプリットを軸に、今夏の福島大会では全6試合に登板。34回2/3を投げて60奪三振をマークするなど、期待通りのピッチングを披露。甲子園では成長した姿が見られそうだ。

 そのほか、注目選手としては191センチの長身で最速151キロの直球を武器とする大谷翔平(花巻東・2年)、1年夏に148キロをマークし、一躍全国区に名乗りをあげた帝京のエース伊藤拓郎(3年)、1年生ながらその伊藤の女房役として抜擢された石川亮、186センチ、86キロの巨漢の持ち主で開星(島根)の攻守の柱である白根尚貴(3年)などがいる。例年以上に混戦必至の今大会、最後に真紅の優勝旗を手にするのは……。6日、熱戦の火ぶたが切って落とされる。