14年ぶりのリーグ優勝を果たした東京ヤクルトの“縁の下の力持ち”は3人のリリーフピッチャーだった。

 クローザーのトニー・バーネット、セットアッパーのローガン・オンドルセク、オーランド・ロマン――。


 

 バーネットは球団史上最多の41セーブをマーク。オンドルセクは33ホールド、ロマンは23ホールドで試合の終盤を支えた。

 ブルペンが充実したことで、逆転負けはリーグ最少の19。勝てるゲームを確実にモノにし、混セを抜け出した。

 

 就任して1年目、しかも「細かい野球が苦手」といわれる外野手出身ということもあって、開幕前、真中満監督の投手起用に期待する向きは少なかったように思う。

 それが、どうだ。昨季、4・62でリーグ最低だったチーム防御率を、リーグ4位の1点以上も引き上げたのだ。

 

 真中は語っている。

「うちは昨年、防御率が最下位で、終盤に試合を壊す展開が多かった。後ろでひっくり返されると、ダメージは大きいでしょ。だから、勝ってる試合は確実に獲りたいという発想から、そうなった」(スポーツニッポン10月13日付)

 

 蛇足だが、「外野手出身に名監督なし」とは、真中が「理想の監督」と呼ぶ“師匠”野村克也の持論である。

 

 野村によれば、キャッチャーは「グラウンドにおける監督」である。それに比べ、外野手は「試合の当事者になりにくい」。それゆえ「名監督が生まれにくい」と主張するのだが、真中の采配は、師匠の鼻を明かすに充分だったのではないか。

 

 ヤクルト監督時代の野村の内容の濃いミーティングは今も語り草である。その中身は野球のみならず人間教育にまで及んだ。

 

 真中も現役時代の“ノムラの教え”を大切にしている。2軍監督時代は数十冊にも及ぶノートから指導のヒントを得ていた。

 

 ベンチでどっしり構える姿は野村から学んだものだという。これこそ野村がしばしば口にする“無言の教え”に違いない。

 

<この原稿は『週刊大衆』2015年10月26日号に掲載されたものです>

 


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