「99%大丈夫。しかし、今回の件で1%の不安が途轍もなく大きくなっている……」

 そう告白したのは、野球・ソフトボールの五輪復活に向けて精力的に活動した、あるアマチュア球界の幹部だ。

 

 

 周知のように先頃、2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会は新たに5競技18種目をIOCに提案することを決定した。

 空手、スケートボード、スポーツクライミング、サーフィンとともに選ばれたのが野球・ソフトボールである。

 

 国内で人気があることに加え、メダル獲得も有力視されることから、早くから野球・ソフトボールには当確ランプがともっていた。

 

 もっとも、組織委が提案したからといって先の5競技18種目が、2020年東京五輪の実施競技種目に正式に決まったわけではない。

 

 なぜなら、あくまでも組織委が持っているのは「提案権」に過ぎず、「承認権」はIOCが保持しているからだ。そのため正式決定は来年8月、リオデジャネイロ五輪前に開催されるIOC総会まで、待たなければならない。

 

 とはいえ、開催都市に追加種目を提案できる権利を与えた以上、最後の最後になってIOCが“ちゃぶ台返し”をすることはあるまい、と多くの組織委関係者はたかをくくっていた。

 

 ところが、である。球界に屋台骨を揺るがしかねない不祥事が発生した。巨人の福田聡志投手らが野球賭博に関与していたことが発覚したのである。

 

「巨人軍は紳士たれ」とは球団創設者・正力松太郎の遺訓だが、選手が野球賭博に手を染めていたとあっては紳士もへったくれもない。

 

 野球賭博に関与していたことが判明した場合、軽くても1年間の失格処分、重い場合は無期。さらに八百長への関与が明らかになった場合は永久失格――つまり永久追放処分となる。

 

 先のアマチュア野球関係者は、こう言って頭を抱える。

「スポーツへの賭け行為に対してIOCは国際刑事警察機構と連携し、厳格な方針を打ち出している。今回の問題はIOCの目にも止まる。当該選手はもとより、巨人の管理責任も問われてしかるべきだ」

 

 組織委からの追加競技種目について、IOCのトーマス・バッハ会長は「すべてが承認されるかどうかはわからない。(来夏のIOC総会で)5競技をまとめて投票にかけるのか、1競技ずつやるのかも検討が必要だ」(朝日新聞10月7日付)と語っている。にわかに雲行きが怪しくなってきた。

 

<この原稿は2015年11月6日号『漫画ゴラク』に掲載された原稿を一部再構成したものです>

 


◎バックナンバーはこちらから