通常、競泳の五輪出場選手が決定するのは、開催年の4月頃である。しかし、星奈津美は今年7月下旬にロシアで開催された世界選手権の女子200メートルバタフライで金メダルを獲得し、同種目のリオデジャネイロ五輪代表に内定した。星は昨年、北島康介、寺川綾らを育てた名伯楽・平井伯昌(競泳日本代表監督)に師事した。星が思い描くリオ五輪への道筋を二宮清純が訊いた。

 

二宮: 平井コーチに教わりたいと思ったきっかけは?

: オリンピックで金メダルを獲ることが一番の目標です。それを達成したいという思いでロンドンから、やってきました。でもロンドン五輪が終わってからの2年間、結果が全然出なくて、国際大会でもメダルを逃していた。何か新しいきっかけが欲しくて、自分で決断しました。

 

二宮: “チーム平井”の練習は厳しいと評判です。

: 私が先生のところにお願いにいったタイミングが11月くらいだったんです。ちょうど、そのころから冬場にかけての練習が特にきつい。泳ぐ量が多いわけではないんですが、集中して練習をする。その質の高さがすごいんです。

 

二宮: プールを上がった後のトレーニングもハードだと聞きます。

: 泳ぐ前に陸上でトレーニングをやるのですが、もう、大汗をかきます。クタクタになって、それからまた2時間泳ぐんです。そこでもう、疲れてしまうことが多かったですね。

 

二宮: 今回の世界選手権の金メダルで、平井コーチはどんな言葉をかけてくれましたか?

: 普段、褒められることは、そんなにないんです。今回はレースが終わって「よく頑張ったね」と言ってくれましたね。

 

二宮: 今後、リオに向けては、どのあたりを強化したいと考えていますか?

: 上半身の筋力が弱いなと思っています。腕の力などがついてくれば、もっと効率よく一回のストロークで前に進めます。その分だけ、省エネになる。ストロークの回数を減らしても、同じタイムで泳げるのが一番良いですから。そこは、去年の冬から平井先生に見てもらうようになってから、課題として取り組んでいます。ですが、半年だとそこまでの成果は出ていない。あとは後半のスタミナです。今回も「後半強かったね」と言ってもらえたのですが、来年の五輪で金メダルを目指すとなると、後半にもっと強い選手が出てくるはずです。

 

二宮: 持ち味である後半の強さに、さらに磨きをかけていきたいと?

: 今回のレースでも、前半のタイムが少し遅かったので、そこをもう少し上げても、後半は持つと考えています。スピードを上げていけるようにするためには、さらにスタミナをつけないといけないですね。

 

二宮: なるほど。五輪本番では、どのようなレースを想定していますか?

: たぶん、周りを見ながらのレースになると思います。前半から飛ばす選手もいるのでしょうが、200メートルのバタフライとなると、やはり後半が肝になるのではないでしょうか。

 

<現在発売中の小学館『ビッグコミックオリジナル』(10月20日号)に星選手のインタビュー記事が掲載されています。こちらもぜひご覧ください>