22日、明治安田生命J1リーグの2ndステージ最終節が各地で行われた。エディオンスタジアム広島での首位サンフレッチェ広島と8位湘南ベルマーレの一戦は5-0で広島が勝利を収め、2ndステージ優勝と年間1位の座を手にした。広島は前半24分にMFドウグラスが決めて先制すると、FW佐藤寿人らにも得点が生まれ、湘南に大勝した。また佐藤は、このゴールでJ1通算最多タイ157得点とし、中山雅史の記録に並んだ。今年から行われるチャンピオンシップ(CS)は広島(2nd王者、年間1位)、浦和レッズ(1st王者、年間2位)、ガンバ大阪(年間3位)の3チームが出場する。28日の浦和とG大阪の準決勝がCSの初戦となり、勝者が広島とのホーム&アウェー(12月2日、5日)で王座を争う。

 

 佐藤、ヘディングでJ1最多タイの通算157ゴール(エディオンスタジアム広島)

サンフレッチェ広島 5-0 湘南ベルマーレ

【得点】

[広島]ドウグラス(24分、72分、89分)、青山敏弘(25分)、佐藤寿人(42分)

 

 広島は安定感抜群の試合運びで2ndステージを制した。5-0の結果がそれを物語っている。さすが年間通して得点数リーグ1位の73、失点数もリーグ最少(30)チームの試合だった。

 

 開始序盤は湘南に自陣コーナーキックからのカウンターや、ミドルシュートで攻勢をかけられたが、すぐに広島は対応してみせた。広島は、前から無理に追わずにしっかりブロックを作り、湘南得意のカウンターを封じた。ボールを湘南から奪っても攻め急ぐことはせずに、ゆっくり後ろでつなぎ様子を見ていた。

 

 すると24分、MFミキッチとDF塩谷司が湘南DF陣の一瞬のスキをついた。広島はバックラインで回している間に、ミキッチが湘南DFラインの裏を取る。その動きを塩谷は見逃さなかった。ピンポイントのロングパスを送り、右サイドを切り裂く。ボールを受けたミキッチが切り返し、マークを完全に振り切ってドウグラスへラストパス。ドウグラスがゴール左隅に流し込んでネットを揺らす。

 

 13、14年と王者を経験している広島は、ここぞの場面で牙をむく。先制点から1分後、湘南が中盤にエアーポケットを作ってしまう。すると中央の位置で広島主将のMF青山敏弘がフリーでボールを持った。青山は、このチャンスを逃すことなく右足一閃。無回転気味で不規則な変化をしたシュートがゴール左に突き刺さり、広島がリードを広げる。

 

 一方の湘南はいつもの奪った瞬間に発動する十八番のカウンターを封じられたまま、時計の針だけが進んでいく。ペースを掴めないでいると、一瞬、この男から目を離してしまう。

 

 42分、左MFの清水航平が得意のドリブルでサイドを突破し、クロスを上げる。そのクロスを、ここ7試合ゴールがなかった佐藤が頭で合わせた。J1通算最多タイとなる157点目は、清水がセンタリングを上げる瞬間、2、3歩バックステップを踏み、DFアンドレ・バイアのマークを外して決めた。佐藤らしさ溢れるゴールで中山雅史の大記録に並んだ。「大好きなゴンさんの数字に並べることができて嬉しいです。本当は超えたかったけど、それは来シーズン」と記録更新は来季へ持ち越しとなった。

 

 広島は佐藤のメモリアルゴールでリードを3点に広げて試合を折り返す。ハーフタイムで森保一監督は「受け身にならないように」と手綱を締めてイレブンを送り出した。

 

 後半が始まっても依然、ペースを握られたままの湘南。広島DFの裏を突くことが出来ずに、ほとんどが広島DF陣の“前で”しかプレーできない。苦し紛れのミドルシュートしか打たせてもらえない状況に湘南ベンチは動く。12分、FW山田直輝、藤田祥史を投入し、前線の活性化を図った。すると広島サイドも流れを「渡さない」とばかりに運動量豊富なMF柏好文を起用する。両監督のカードの切り合いも見物だった。

 

 27分、流れを渡さなかった広島がトドメを刺す。清水がサイドを切り裂いてクロスを上げると、ドウグラスが今度は頭で合わせる。ドウグラスは試合終了間際に3点目を沈め、優勝がかかる重圧の中で今季2度目のハットトリックを達成。広島は攻めては5ゴールを奪い、守っては完封。結果、内容ともに湘南を圧倒し完勝した。

 

 今節でJ1のリーグ戦は全日程を終了。Jリーグ創設期のオリジナル10・清水エスパルスの降格、今季昇格組からは湘南が唯一の残留を果たした。個人では佐藤のJ1通算最多得点に並び、同3位の大久保嘉人(川崎フロンターレ)は史上初の3年連続得点王に輝いた。11年ぶりに復活したCSには浦和、広島、G大阪の3クラブがコマを進めた。1stステージを無敗で駆け抜けた浦和、2ndステージに入り安定感を増した広島、最後の最後で滑り込んだG大阪。最後にシャーレを掲げるのはどのチームになるのか、まだまだJリーグから目が離せない。

 

(文/大木雄貴)