12日、2018FIFAワールドカップロシア大会のアジア2次予選(兼アジアカップ2019予選)のシンガポール・カランで行われ、グループE組の日本代表(FIFAランキング50位)はシンガポール代表(同152位)に3-0で勝利した。日本はハリルジャパン初招集で初スタメンのFW金崎夢生が前半20分に先制ゴールを突き刺す。リズムの良さをキープしたまま、26分に本田が追加点を決める。後半に入っても日本ペースは変わらず、攻め続けた。終了間際にはDF吉田麻也がダメ押しのゴールを決め、危なげなく完封した。E組首位に立った日本は、17日にアウェーでカンボジア戦に臨む。

 

 前回ノーゴールのリベンジ果たす(カラン)

日本代表 30 シンガポール代表

【得点】

[日本] 金崎夢生(20分)、本田圭佑(26分)、吉田麻也(87分)

 

 戦術がハマった――。この一言に尽きる。引いた相手に対して理想的な試合運びだった。

 

 日本は前回の対戦でスコアレスドローに終わった反省を踏まえて試合に入った。大きな変更点は3つある。1つ目はボールサイドと逆のサイドハーフがワイドに構えていた点。2つ目はダブルボランチの1人に司令塔タイプの選手を使い、3つ目はファーサイドにクロスを上げて折り返すことを徹底していたことだ。この3点により、ゴール前の渋滞が解消された。

 

 前半8分に早くもチャンスを作る。中央でボールを持ったMF清武弘嗣が左サイドハーフの武藤嘉紀へ。武藤のクロスにファーサイドから走り込んだMF本田圭佑が合わせるも、GKイズワン・マフブドがかろうじて弾く。こぼれ球に金崎が反応するが、惜しくも触れなかった。

 

 この後、ボールを持ったサイドハーフが、大外からペナルティエリアに入り込んだ逆のサイドハーフに合わせて、中央へ折り返す形が華を咲かせる。

 

 20分、ボールを持った本田が右サイドを駆け上がり、切り返して左足で逆サイドの武藤へクロスを送る。武藤はヘディングで中央に待つ金崎へ落とすと、胸トラップした金崎が左足を一閃。強烈なシュートはゴール右へ突き刺さった。鹿島アントラーズで好調をキープするストライカーが早くも結果を出し、日本に待望の先制ゴールをもたらした。

 

 ニューフェイスの活躍に刺激された日本のエースも結果を出す。26分、金崎のパスで右サイドを抜け出した清武がゴール前の武藤へ。武藤が落としたところに、ここぞの場面で中に入ってきた本田がゴールを決めた。前回のシンガポール戦では本田が中に入り過ぎてしまい攻撃を停滞させた一因を作ってしまったが、この試合では外に開く時、中に入る時の判断が良かった。

 

 以降も、攻め続けて前半を終えた。ゴール前に人数をかける相手にもリズムよくシュートまでいけたのはボランチのMF柏木陽介が効いていた。攻め急ぐことなく、縦横、長短、強弱を使い分けるパスさばきは見事だった。全盛期の名波浩(現・ジュビロ磐田監督)を彷彿させる浦和レッズの左利きの司令塔がハリルジャパンにリズムをもたらしていた。

 

 日本は前半の良いリズムのまま後半に入った。2分、左サイドでボールを持った武藤がファーサイドの本田へ。ヘッドでボールを捉えるもクロスバーの上に外れる。13分には金崎が相手DFラインの背後を取りシュートを放つも、GKに阻まれる。金崎は集中を切らすことなく、相手の嫌がる位置に積極的に顔を出していた。

 

 終始押し気味に進めていた日本だったが、20分に唯一冷や汗をかく。DF森重真人のファールで与えたFKをファーサイドでMFサフワン・バハルディンが頭で合わせるが、幸運にもゴール左へ外れる。試合内容で圧倒しているだけに、こういったところでの失点は避けたい。

 

 徐々に日本の足が止まり、攻撃が停滞してしまう。そこでヴァイッド・ハリルホジッチ監督は動く。25分、30分、37分と交代カードを切っていった。

 

 なかなか停滞ムードを払拭し切れなかった日本だが、42分にダメを押した。コーナーキックのこぼれ球を途中出場の宇佐美貴史がダイレクトシュートを放つ。ゴール左へと向かっていくボールにペナルティエリア内にいた吉田が触ってコースを変える。抜群の反射神経を持つ相手GKも反応できず、追加点が生まれた。このまま3-0で試合を終えた。

 

 前回の課題を修正した日本が勝利し、E組首位に立った。試合後のインタビューで日本の指揮官は、「選手におめでとうと言いたい」と称えたが、「もう少し点が取れた」と最後につけ加えることも忘れなかった。

 

 日本は17日にカンボジアとアウェーで対戦する。年内最後の代表戦は今日のいい流れを継続し、次節も勝利を手にしてほしい。

 

(文/大木雄貴)