17日、2018FIFAワールドカップロシア大会のアジア2次予選(兼アジアカップ2019予選)がカンボジア・プノンペンで行われ、グループE組の日本代表(FIFAランキング50位)はカンボジア代表(同183位)に2-0で辛勝した。日本は前半、苦戦を強いられスコアレスで終わる。後半6分、途中投入したMF柏木陽介のFKから相手のオウンゴールを誘発し、先制に成功する。その後も柏木を起点にチャンスを作り、相手に流れを渡さない。終了間際にはDF藤春廣輝のクロスにMF本田圭佑がヘッドで合わせた。本田のW杯予選5試合連続ゴールで試合を決めた。

 

 柏木、途中出場で流れ変える(プノンペン)

日本代表 -0 カンボジア代表

【得点】

[日本]オウンゴール(51分)、本田圭佑(90分)

 

 日本を苦しめたのは、対戦相手のカンボジアだけではなかった。ゴムチップが大量に撒かれた人工芝――。ピッチの影響でグラウンダーのパスが跳ね、ボールのバウンドの処理に選手たちは四苦八苦していた。ビルドアップがうまくいかず、ボールを奪われてピンチを招く場面が何度もあった。

 

 前半22分、パスカットされると一本のパスでMFラボラビーにDF吉田麻也がスピードで振り切られるも、シュートはゴール右に外れた。30分にはカウンターから、再びラボラビーに抜け出されたが、DF槙野智章がペナルティエリアぎりぎりのところでファールで阻止した。36分には、ロングボールからヘッドでつながれ、DFラインの裏に通される。ここはGK西川周作が飛び出し、パスカットした。

 

 日本は前半をいいところなくスコアレスで終えた。ビルドアップの段階でつまずいている日本は、後半開始からMF遠藤航に代えて、柏木を投入する。すると、この男の存在が日本に流れを引き寄せた。

 

 1分、柏木がボールを中央で受けるとペナルティエリア内にいるFW岡崎慎司へミドルパス。岡崎は頭で、近くにポジションを取るMF香川真司へつないだ。香川の動きについてこられなかったカンボジアDFがたまらずファールを犯し、日本はPKを獲得する。だが、この絶好のチャンスを岡崎は生かせない。ゴール右を狙ったシュートは惜しくも相手GKにセーブされた。ただ柏木の投入から日本にゴールの雰囲気が漂う。

 

 6分、ついに均衡が破れる。MF原口元気が仕掛け、ゴールから遠い位置でFKを獲得する。柏木が蹴った弧を描いた絶妙なボールは相手のオウンゴールを誘発して、日本に先制点が生まれた。ハリルジャパンで初のFKからの得点。前節のシンガポール戦でも輝きを放った柏木が、またしても大仕事をやってのけた。

 

 待望の先制点をもたらした柏木は、その後もリズムを作る。司令塔がミドルパスを効果的に相手の裏に通すことで攻撃の手詰まり感がなくなり、前線が活発になった。10分は、DFラインの裏に走った香川へパスを送る。わずかに香川が足元に収められなかったが、通ればシュートまで持っていけた。続く17分にも、似た形から、今度は途中出場の本田にパスを送った。シュートは惜しくもGKに阻止される。いずれもゴールにはならなかったものの、柏木のパスで相手陣地の深い位置までボールを運び、チャンスを作った。最低でもゴールキックで終わっているため、前半のような危ないカウンターを食らう回数が激減し、日本の攻撃に安定感をもたらした。

 

 45分、日本中を安心させるゴールが決まる。左サイドをオーバーラップした藤春がクロスを上げる。本田が頭で合わせてトドメを刺した。本田はこのゴールでW杯予選5試合連続ゴールとなった。短いプレータイムでもきっちり仕事をこなす。決定力の高さを見せつけた。

 

 先制点を誘った柏木、2点目をアシストした藤春、藤春のクロスを決めた本田、前半のカウンターを防いだ西川。日本は4人のレフティに助けられた。守っても6試合連続無失点と聞こえは良いが、カンボジア相手に後半の2点だけは、少しさみしい。前半の出来の悪さも目立った。今年最後の代表戦と思うと、物足りない締めとなった。だが一方で11月のアジア予選でハリルホジッチ監督の起用に応えたFW金崎夢生、柏木は現代表にプラスの材料をもたらした。来年は彼らにレギュラーの座を脅かすような活躍を期待したい。

 

(文/大木雄貴)