現地時間21日、ボクシングのWBC世界スーパーフェザー級タイトルマッチが米国ラスベガスで行われ、王者の三浦隆司(帝拳)が同級1位のフランシスコ・バルガス(メキシコ)に9ラウンド1分31秒TKOで敗れた。三浦は1ラウンド、バルガスのパンチを食らいあわやダウンのピンチを迎える。攻勢を仕掛けるバルガスからなんとか逃れると、2ラウンド以降は三浦が徐々にペースを掴んでいった。4ラウンドで得意の左が炸裂し、ダウンを奪う。一気に形勢を逆転した三浦だったが、9ラウンドにダウンを喫する。そのまま相手の猛ラッシュに遭い、レフェリーが試合を止めた。挑戦者のバルガスは初戴冠。一方の三浦は5度目の防衛に失敗し、通算成績を41戦34勝(22KO)3敗2分けとした。

 

 ボクシングの聖地で、王者は“盗賊”にベルトを奪われた。三浦の念願叶ったラスベガスでの試合。ここで名を上げれば、更なる地位と名誉が手に入る。しかし、アメリカンドリームは夢と散った。

 

 序盤、三浦は緊張からか動きが硬かった。そこを23戦無敗の挑戦者は見逃さなかった。ロンドン五輪に出場した経験もあるバルガスは、ワンツーの後に右フックを当てる。三浦はヒザから崩れ落ちそうになるも、なんとか堪えた。その後のバルガスの猛攻を何とか凌ぎ、1ラウンドを終える。

 

 先制パンチに成功したバルガス。劣勢の三浦は“ボンバー”の異名を持つレフトを中心に反撃に転じる。ガードの上からでも威力抜群のブロー。2ラウンド目からは足も動かせるようになり、徐々にリズムを掴んでいった。

 

 すると4ラウンドにボンバーレフトが着火する。残り30秒を切ったあたりで、左ストレートがバルガスの顔面を襲う。パンチの勢いに押されるまま、挑戦者は尻餅をついた。三浦はラッシュを仕掛けようとするも、このラウンドはバルガスがゴングに救われた。

 

 流れを変えたレフト。一気に形勢は逆転した。三浦が積極的に詰め、バルガスは距離を置こうとする。互いの距離間のせめぎ合いが続いた。バルガスは右目の下をカットしており、ラウンドを追うごとに腫れていった。主導権を握っていたのは三浦だった。

 

 8ラウンドには三浦の左ストレートが、またしても挑戦者の顔面をとらえた。足がふらつくバルガス。勝負を決めに三浦がラッシュをかけたが、ここでもゴングが鳴り、挑戦者を仕留めきれない。とはいえ王者のKO防衛は目前のところまで来ているかに思われた。

 

 しかし、結果は違った。9ラウンド、バルガスは後がないと見たのか、距離を詰めて積極的に打って出る。バルガスの左アッパー、左フック、右ストレートと続く連打を三浦はまともに受けてしまう。完全に足が止まった王者をバルガスが猛ラッシュ。ついに三浦はダウンを喫する。

 

 三浦の足元がおぼつかない中、当然、バルガスは手を休めない。クリンチで逃げようとするも、その間にも何発かもらう。少しずつ時間を稼ぎながら、回復に努めていたが、ダメだった。バルガスのパンチが次々と三浦の顔面をヒットする。1分31秒、レフェリーが2人の間を割って入り、両手を大きく交差する。

 

 この瞬間、新チャンピオンの誕生、三浦の王座陥落が決まった。強打の左は威力を発揮しつつも、空振りする場面も目立ち、爆発し切れなかった。一方で相手が雨のように降らしたパンチの数々にことごとく被弾した。ファイターである以上、打ち合いの形になるのは仕方がないにせよ、ディフェンス面での粗さが目立った。

 

 三浦は勝てば、米国でのビッグマッチやWBA王者・内山高志(ワタナベ)との統一戦も実現したかもしれなかった。だが今回はバルガスを引き立てる脇役を演じる羽目となった。31歳のハードパンチャーは主役の座を奪い返しにいくのか、それともリングを降りるのか。

 

(文/杉浦泰介)