7日、キリンチャレンジカップ2011がホームズスタジアム神戸で行われ、日本代表はベトナム代表と対戦した。日本は前半24分、FW藤本淳吾(名古屋)のアシストからFW李忠成(広島)がゴールを決めて先制する。だが、その後はゴールが遠い。途中出場で代表デビューしたMF原口元気(浦和)が積極的にドリブルから追加点を狙うものの、結局、試合は1−0で終了。11日のタジキスタン戦に向けて、弾みをつける勝利とはならなかった。

 後半、システム変更も機能せず(ホームズ)
日本代表 1−0 ベトナム代表
【得点】
[日] 李忠成(24分)
 主力を欠いた中での、代役にスポットが当たった一戦だった。
 本田圭佑(CSKA)、内田篤人(シャルケ)らがケガにより、代表を離れたこの試合、主力不在のマイナスを“誰が”“どのように”補填するのか。中でも9月のW杯予選(北朝鮮戦、ウズベキスタン戦)で見つけられなかった本田の代役に注目が集まった。

 スタメンはまず、右SBの内田の代役には駒野友一(磐田)が入った。そしてトップ下で攻撃の中心を担っていた本田の代わりには、1月のアジア杯決勝以来の代表復帰となった藤本が起用された。ただ、アルベルト・ザッケローニ監督が採用した布陣は3−4−3。これにより藤本は右のFW、駒野は右MFのポジションで試合に臨んだ。

 立ち上がりから日本はボールをキープするものの、ゴールに向かってスピードアップする際にパスミスを犯したり、ドリブルが相手に引っかかる場面が目立つ。3−4−3は6月のキリン杯以来のシステムで、今回も与えられた練習期間は4日間しかなかった。前半序盤はチーム全体に戸惑いが見られた。

 そんな中、存在感を見せたのは藤本だ。右FWとしてサイドに開いてボールを受け、相手の裏へ飛び出す李やFW香川真司(ドルトムント)にパスを供給する。前半18分には裏へ抜け出した香川に浮き球のパスを通し、決定的な場面をつくった。

 そして24分、藤本が結果を残す。PA右手前でボールをキープしていたMF長谷部誠(ヴォルフスブルク)からパスを受けると、マークについていた相手を抜き去り、右サイドのゴールライン際から折り返す。これに李が右足でゴールに流し込んだ。アジア杯決勝以来の出場となった藤本が、同じくその決勝以来となる李の代表ゴールを演出した。

 藤本はその後も積極的にシュートを放つなど、本田不在の攻撃陣を牽引する。しかし、日本は追加点を奪うことはできず、1−0で前半を折り返した。

 後半に入ると、日本は大幅にメンバーを入れ替えてきた。さらにシステムもこれまで軸にしてきた4−2−3−1に変更する。本来の布陣に戻ったことでトップ下のポジションができたが、そこには藤本は入らず、昨年10月以来の代表戦となるMF中村憲剛(川崎F)が収まった。中村は9月のW杯予選は右足親指の骨にひびが入っていたため出られなかった。離脱前は本田の代役として考えられていただけに、周囲との連携はひとつのチェックポイントになった。

 パスの供給源となり得る中村が入って以降、右MFの位置に下がった藤本は自ら抜け出して、ゴールに向かう動きを見せる。後半12分にはシュートには至らなかったものの、MF原口からのパスをPA内で受け、チャンスをつくる。9月の2試合では長谷部、柏木陽介(浦和)が本田の代役を務めたが、どちらも前線の拠り所としては機能しなかった。その点で藤本は、パスの出し手にも受け手にもなり、攻撃のリズムをつくっていた。

 ただ、藤本がよく目立つほど、周りの選手が精彩を欠いて見えたのも事実だ。
 後半の日本は慣れ親しんだ4−2−3−1に変更したものの、大幅に選手を代えた影響か、簡単なパスミスやオフサイドラインに引っ掛かるなど、連係の悪さが目についた。原口が積極的に相手に仕掛け、チャンスをつくりだす時間帯もあったが、フィニッシュの精度は低く、追加点を奪えないまま90分が過ぎ去った。

「同じような選手は2人といない。ベトナム戦で(本田や内田が欠場することの)影響をチェックして、タジキスタン戦に活かす」
 先日のメンバー発表会見で、ザッケローニ監督はこの試合のテーマをこう述べていた。その結果は、圧倒的にボールを支配しながらもゴールを奪えず、課題の残る試合内容になった。それでも、本田の代役に選んだ藤本がチームにフィットし、1試合を通してプレーできたことは明るい材料といえる。指揮官は試合後「チャレンジする」とタジキスタン戦への意気込みを語った。チーム状況を確認したザックジャパンが、対戦経験がない未知の相手からの勝ち点3獲得に挑む。

<日本代表出場メンバー>

GK
西川周作
DF
伊野波雅彦
→阿部勇樹(45分)
今野泰幸
槙野智章
→吉田麻也(68分)
MF
駒野友一
細貝萌
長谷部誠
→中村憲剛(45分)
長友佑都
→栗原勇蔵(45分)
FW
藤本淳吾
李忠成
香川真司
→原口元気(45分)