大阪近鉄、北海道日本ハムと指揮を執った2球団をいずれもリーグ優勝に導いている。指揮官としての実績はダテではない。

 東北楽天の新監督に梨田昌孝が就任した。2年連続最下位のチームを建て直すには、うってつけの人物と言えよう。

 

 

 梨田野球を一言で言えば「現実対応型」である。投手がよければ守りのチーム、好打者が揃っていれば打撃のチームといった具合に、長所をいかすチームづくりを得意とする。

 

 それが証拠に01年、近鉄では“いてまえ打線”を前面に出して近鉄をリーグ優勝に導き、09年の日本ハムではエース・ダルビッシュ有を中心とした守りの野球でペナントレースを制した。

 

 01年、近鉄でのことだ。開幕から「21試合連続盗塁ゼロ」という不名誉な記録をつくった。まるで昔の野球盤である。

 

「監督、盗塁のサインが全然、出ていないようですが?」

 担当記者の鋭い質問に、梨田は何食わぬ顔で答えた。

「じゃあ、盗塁を出させたら勝率がよくなるの?」

 

 このエピソードが物語るように、梨田は徹底したリアリストである。換言すれば勝負師だ。口さがない者は「情に薄い」と陰口を叩くが、プロ野球は“勝ってナンボ”の世界である。就任にあたり、「(本来は)今年のような大きな負け越しはしない。とりあえず勝率的には最低でも5割を目指す」と手堅い目標を口にしたのも、他球団との戦力格差を冷静に分析しているが故だろう。

 

 そう言えば近鉄でも日本ハムでも、優勝したのは就任2年目だった。楽天の場合、もっと時間がかかるかもしれない。

 

「僕の考え方としては、野球は1点でも相手より多く点数を取れれば勝てるスポーツ。1対0で勝っても勝ちは勝ち、その代わり0対20で負けても、負けは負けなんです」

 以前、本人から、こんな野球観を耳にしたことがある。

 

 楽天でも優勝を果たし、3球団制覇となれば、三原脩、西本幸雄、星野仙一に続いて、史上4人目である。

 

<この原稿は『週刊大衆』2015年11月2日号に掲載された原稿を一部再構成したものです>


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